ムード・インディゴ うたかたの日々

ムード・インディゴ うたかたの日々 “L'écume des jours”

監督:ミシェル・ゴンドリー

出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、ガド・エルマレ、
   オマール・シー、アイサ・マイガ、シャルロット・ルボン、
   サッシャ・ブルド、フィリップ・トレトン、
   ヴァンサン・ロティエ、ロラン・ラフィット、ナターシャ・レニエ、
   ジルディーヌ・スアレム、アラン・シャバ

評価:★★




 ボリス・ビアンの小説を基にしたという『ムード・インディゴ うたかたの日々』は、そもそものプロットが風変わりだ。肺に睡蓮の花が咲くという奇病に侵されたニコラと、彼女を心から愛し抜くコランの物語。これまでの作品を思い出せば、ミシェル・ゴンドリーが手掛けるのに、これほど相応しい題材もないだろう。

 斯くして創りに創り込まれた世界。コランが住むアパルトマンのキッチンだけでも、ユニーク雑貨のテーマパークのよう。未来のような過去のような不思議空間。テーブルがローラースケートを履き、蛇口からはウナギがこんにちは。電子レンジがあるべきところに小さな小さな野菜畑があり、ケーキの中には香水と手紙が紛れ込む。ピアノを弾けばカクテルが出来上がり、ゴキブリはキッチンタイマー。射し込む光はギターの弦になり、部屋の隅では着ぐるみのネズミがダンスする。

 目指したのは、おもちゃの国だろうか。出てくるアイテムの全てが可愛らしくまとめられ、思いがけないところからからくりが飛び出してくる。生活感は見事に排除され、匂いは一切なく、終いには物語すらどうでも良くなってくる。全部がオシャレアイテムとして完成された徹底ぶり。

 でもだから何なのサ。アナログの味を残したものが大半であるところに救いを見るものの、全部が全部おもちゃなので(アニメーションで表現されるところも多い)、それに慣れてしまい、急激に刺激が目減りしていくのだ。緩急の「緩」が見当たらない不幸よ。

 それに気づかないゴンドリーは、街に出かけても同じことを続ける。パリの街がそのままテーマパークになる。工事現場のクレーンに吊られてメリーゴーランド風にデート。教会でミニカー競争。踊ってみれば、下半身が操り人形風にぐにゃぐにゃになる。やればやるほど自己満足にしか見えないのは、人間がなおざりになっているからだ。登場人物はこの世界観を輝かせるため、そして次第に褪せさせるために存在する。

 とは言え、目に残るショットもないではない。ニコラの病気の進行に伴って、画面から色が奪われていくところは奇妙な美しさがある。段々狂気が浮上するのも(かえって)楽しいところ。男が夜のパリを自分の巨大な影と妖しく追いかけっこする場面のおかしみと哀しみには、詩情が感じられた。

 作り物が意識される中、ニコラを演じるオドレイ・トトゥの目尻のシワにホッとする。隅々まで完璧に計算された世界の中で、加齢という人間が避けては通れないものが、思いがけない光を放つ。今のトトゥに「アメリ」(01年)の頃の若さはない。けれど、顔に刻まれた時間の経過こそが、本物の温もりへと導く。ゴンドリーの想像力が人間の肉体に敗北する。策士策に溺れる。





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