パッション

パッション “Passion”

監督:ブライアン・デ・パルマ

出演:レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘンフルト、
   ポール・アンダーソン、ライナー・ボック、ベンヤミン・サドラー、
   ミヒャエル・ロチョフ、マックス・ウルラヒャー、ドミニク・ラーケ

評価:★★★




 ブライアン・デ・パルマへの興味が戻りつつある。映画という芸術は、想像以上に作り手の生理や感性と密接に結びついた何がくっきり焼きつけられる。デ・パルマで言えば、テクニックに溺れているだけにしか見えないところや煽情主義に走りがちなところが、一時は鼻について仕方がなかった。けれどこのところ、むしろそれが憎めなくて面白い。下衆さを決して隠せないポール・ヴァーホーヴェンあたりも同じような理由で興味深い映画人だ。

 『パッション』はまだ新しいフランス映画「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」(10年)のリメイクだ。オリジナルをどのように改変しているのかを探ると、デ・パルマという人が鮮明に見えてくる。分かりやすい人なのだ。いちばん大きな変更は、主役である広告代理店の上司と部下の他に、部下のアシスタントの存在が大きくなっているところだ。

 上司はブロンド、部下はブルネット、アシスタントは赤毛とはっきり分けられているのに笑う。デ・パルマが遊びながら見せるのは、女たちの心理的駆け引きだ。ここで描かれる闘争の原料は、女でも普通に持っている上昇志向に密着した欲望であり、女たちは勝つために「悪い女」になることを恐れない。気に喰わない相手は躊躇いなく罠に嵌める。デ・パルマは彼女たちに拍手する。

 けれどそれは、オリジナルにも描かれていたこと。注目すべきは、そうして繰り広げられる争いの数々が、実に下品であることだ。オリジナルはこれだけ陰湿にやり合ったとしてもどこかに上品さを湛えていたのに対し、デ・パルマが創り出す画面には、そんなお行儀の良いものは見当たらない。女たちは美しい仮面をあっさり崩す。あくどく塗りたくった真っ赤な唇を武器に、獣となって相手を狩る。男に目もくれず、同じ女を狩る。もちろん褒めている。と言うか、デ・パルマと一緒に笑っている。

 そう、下品ではあっても、同時に可笑しくもあるのがデ・パルマの特徴だ。野性が解き放たれると言うか、本能にあまりに忠実と言うか、いくら着飾ってもそこには美貌よりも獰猛さが前面に出る。そしてデ・パルマは叫ぶ。俺はこういう女たちが好きなんだ。悪辣の花が咲き乱れる。

 そう考えると、ほとんど色気が感じられないレイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスが主演に選ばれたのも腑に落ちる。顔の半分を占める額と縦じわにしか見えないえくぼから放たれるマクアダムスの我の強さと、モアイ像を思わせる鼻と一瞬にして冷酷になる目を持つラパスのしたたかさが、愉快に衝突を繰り返す。どちらもケバい。ケバいけれど、しかし、セックスアピールは思いがけず低めだ。キスまで交わすのに…。ロボットみたいで愉快。

 デ・パルマは愛するものを華やかに飾り立てる。撮影や編集、音楽の技を次々繰り出す。テクニック至上主義に見えても扇情的に走っているように見えても、気にしない。デ・パルマには無意味な意見だ。己に正直にカメラを回すのみ。そのとき彼は、間違いなく王国の王だ。自分好みの女たちを遊ばせられれば、それで良い。『パッション』はそういう映画だ。





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