瞳の奥の秘密

瞳の奥の秘密 “El secreto de sus ojos”

監督:フアン・ホセ・カンパネラ

出演:リカルド・ダリン、ソレダ・ヴィジャミル、パブロ・ラゴ、
   ハヴィエル・ゴディーノ、カルラ・ケヴェド、ギレルモ・フランセーヤ

評価:★★★




 『瞳の奥の秘密』とタイトルにあるように、目がモノを言う映画だ。もっと分かりやすく言うなら、眼差しが強く心に残る映画だ。運命的な事件に遭遇する刑事も、彼が想い続ける女も、アルコールから離れられない同僚も、無惨に殺害された被害者の夫も、その卑劣な犯人も…皆、言葉よりも、その眼差しがその心情を雄弁に語り掛ける。しかもそれが濃厚だ。ひょっとするとアルゼンチンの空気が関係しているのかもしれない。粘り気があって、でも底には落ち着いたコクが敷かれている。

 話はほとんどメロドラマ的なムードを湛えている。でも陳腐さとは無縁だ。登場人物の内面が一人ひとり、焦らず、じっくり、念入りに描き出されていくからだ。刑事が女にさほど積極的に向かい合えない事情、結婚を控えながら気になる男ができてしまった女の分別、周りに迷惑をかけることが度々ある同僚の誠実さ、死刑反対を唱える被害者の夫の執念、どこまでも陰湿に付け回る犯人の狡猾さ…。一見事件とは関係のなさそうな描写が出てきても、いつしかそれが前面にせり出してきて、その人物像をますます立体的に固めていくのだ。ドラマは人が創り出すものだという当たり前のことを突きつける。

 特に被害者の夫の内面の動きは大きな見どころになっている。幸せな日常が突然崩壊。なかなか捕まらない被害者を駅に探しに出る毎日。遂に逮捕された犯人の不条理な釈放。妻への想いが強く、人格的にも完成されていて、その彼が一体全体どこへ向かうのか。そこに溢れる情念が終幕急激にせり上がる、不思議な快感!それに重なっていく刑事の静かな恋模様も、節度ある味わい深いものだ。大人ゆえの壁が事件と奇妙な調和を魅せる。1974年当時のアルゼンチンの社会・政治情勢(司法の限界)がアクセントになっていくのも面白い(やや分かり難い部分あり)。

 視覚的にも優れていて、印象的な場面が多い。とりわけサッカーに熱狂するスタジアムで犯人を追跡する場面は強烈なインパクト。スタジアム上空からの空撮から始まり、人が溢れかえる客席に降りていく。そこから犯人を捕らえるまでが、長回しを使って躍動感と緊張感たっぷりに演出されていく。追う側も逃げる側も、その懸命さに人生が浮かぶ。犯人を尋問する場面も面白い。詰問する側の阿吽の呼吸とそれに感情を刺激される犯人との駆け引きが、狭い空間の中でスリリングな悲鳴を上げる。本来苦手な俳優たちのクローズアップが多用されるのも、鮮やかな味わい。深いシワや毛穴から、まるでその人物の真情がこぼれ落ちてくるようで…。

 俳優の演技も皆素晴らしい。中でもソレダ・ヴィジャミルの佇まいにはグイグイ魅せられる。パッと見た感じは伊藤かずえ風、或いはキアラ・マストロヤンニ風。しかし、醸し出す情感には捻りが利いている。驚くのは若き日も歳を重ねてからも、全く違和感のない美しさを見せていることで、これこそ内面の輝きあればこそだろう。大人の男と並んでも、決して軽くは見えない存在感を具えながら、彼女は秘めた想いを静かに重ねていく。シンプルに、美しい。





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