オン・ザ・ロード

オン・ザ・ロード “On the Road”

監督:ウォルター・サレス

出演:サム・ライリー、ギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュワート、
   トム・スターリッジ、ダニー・モーガン、アリス・ブラガ、
   エリザベス・モス、キルスティン・ダンスト、エイミー・アダムス、
   ヴィゴ・モーテンセン、テレンス・ハワード、スティーヴ・ブシェーミ

評価:★★★




 主人公は目撃・体験する出来事をメモ帳に書き留めている。短くて書き辛そうな鉛筆を使って。筆圧が強いこと、色が濃いことが容易に想像できる。ウォルター・サレス監督はメモを剥がしては画面にぺたぺたと貼り付けていく。ざっくばらんに。細かいことを気にすることなく。

 登場人物は後々文学の分野で、ビートジェネレーションを盛り上げた人々の分身だ。ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・S・バロウズはもちろん、その家族や恋人、友人が名前を変えて顔を見せ、その息遣いを立体的に見せていく。ニール・キャサディもいる。そう、原作はケルアックによる、あの「路上」だ。

 …となると映像化は難しいと考えるのが普通だ。物語を貫くような小説らしいストーリーはない。ものすごく乱暴に言ってしまうと、ニューヨーク在住の若い作家が、破天荒な友人と出会い、彼に刺激を受けてアメリカ大陸を点々とする話。エピソードとエピソードは強力には密着せず、その場面場面の出来事を観察したような構造で、しかもその躍動感は文字の力によるところが非常に大きいからだ。

 サレスは変に映画的な脚色はしない。原作同様、物語を無理に捻り出すことはせず、ケルアックやキャサディの、疾走する姿を切り取ることに専念している。語りを放棄していると取られかねない、危険な賭けに出ている。実際、画面が停滞する箇所は幾度となく訪れる。

 けれど、その分細部の観察は念入りだ。横にダナミックに広がった山々。しとしとと降り体温を下げる雨。煙たい砂漠の茶色。汗臭い車内。絡みつく煙草やマリファナの煙。哀しげな夕暮れ。草臥れた衣服。とりわけ、真っ直ぐに伸びていく「道」の佇まいには惚れ惚れする。そこをとぼとぼと人が歩いていたりすると…もう!それだけでギュッと胸が締めつけられる思いがする。

 旅の記録から見えてくるのは、自由という名の楽園を求めて彷徨う人々の姿だ。熱烈に自由を求め、自由の後姿を追いかけ、遂に自由に追いつき、しかしその途端に自由とは何なのかを問い掛ける穴に落ちていく。迷宮に入り込んでしまう感じが良く出ている。そこに切なさを見る。

 キャシディの突飛な行動には、一貫して目を奪われる。誰よりも大胆に、誰よりも素早く、誰よりも自由を求める男。勝手気ままに見えて、ふと「知識を失うのが怖いんだ」と呟くのが狡い。どうしたって気になってしまう。ギャレット・ヘドランドは少々繊細さに欠けるのだけど…。ケルアックに扮したサム・ライリーは翳りが役柄にぴったりだ。

 『オン・ザ・ロード』は無性に旅に出たくなる映画だ。そして道を探りたくなる。手を触れたら、道がどこかに連れて行ってくれそうで…。そう言えば、道が真っ直ぐ伸びていく画面では、道が水平線を突き抜けて空に向かって伸びているようにも見えた。あの向こうに何があるのか知りたくなる。人はそういう生き物だ。





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