スター・トレック イントゥ・ダークネス

スター・トレック イントゥ・ダークネス “Star Trek Into Darkness”

監督:J・J・エイブラムス

出演:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ベネディクト・カンバーバッチ、
   アリス・イヴ、ゾーイ・サルダナ、ジョン・チョウ、サイモン・ペッグ、
   カール・アーバン、アントン・イェルチン、ブルース・グリーンウッド、
   ピーター・ウェラー、ノエル・クラーク、ナズニーン・コントラクター、
   アマンダ・フォアマン、レナード・ニモイ、クリス・ヘムズワース

評価:★★★★




 聞いた話では、J・J・エイブラムスは監督を手掛けるまで、特別「スター・トレック」のファンというわけではなかったらしい。それが功を奏したのだろうか、その世界観が大変分かりやすく描写される。もちろんコアなファンに向けたトリヴィアルな仕込みもふんだんに盛り込まれているに違いないけれど、それよりも何よりも、誰もが楽しめるSF空間を創り上げたのがお手柄だ。前作(09年)でキャラクターの紹介は終わっている。続く『スター・トレック イントゥ・ダークネス』は、宇宙を駆け巡るエンタープライズ号の乗組員たちの冒険がたっぷり描かれる。

 まず、エンタープライズ号の創り込みが愉快だ。前作ではさほどフックしなかったそのヴィジュアル面で大きな勝利を挙げている。割れた海の中や雲の下から宇宙船が浮上する画。破損して落下を余儀なくされる画。独特の外観もさることながら、内部の未来的なデザインが楽しい。ちょっと作り物めいているのは狙い通りなのだろう。ガジェット的な軽さが、良い意味で振り撒かれている。この船の隅々をカークやスポックが走り回るとき、どういうわけだか、船が生きているような感覚を抱く。

 しかし、エイブラムスが今回最も力を入れて描写するのは、ヴィランとして新登場となるジョン・ハリソンという名の男だ。元々は宇宙艦隊士官だったらしい。単独行動を採りながら、残忍無慈悲な振る舞いでカークたちを翻弄する。テロ行為から始まったそれが、次第に翳りを帯びていくのがポイントだ。科学の進歩や人間の傲慢さが生み出した怪物が画面に電流を走らせる。

 得体の知れない佇まいで独自路線を走るベネディクト・カンバーバッチが役柄に命を与える。爬虫類やサメを思わせる顔立ち。筋肉質の身体。優雅な身のこなし。ハリソンは通常よりも頭脳が明晰で運動能力に優れているという設定が活かされる。特に顔の筋肉の動かし方と走る姿に感心する。どこに向かうのか、何をやるのか分からない危うさを湛えながら、その表情がどんどん変わる。生きる哀しみが立ち上がる瞬間など、思わず彼に肩入れしてしまうほどだ。

 話の軸にジョン・ハリソンの復讐が置かれていて、クリス・パイン(横顔は余り奇麗ではないものの、野暮ったさはもはや武器になった)演じるカークを中心にそれに対抗する話になっている。けれど、カークだけの物語ではない。エンタープライズ号にはたくさんの個性的な乗組員がいて、名の知れた俳優が演じる役柄には見せ場が与えられる。彼らを捌く処理能力に感心する。彼らの息遣いを物語上で機能させ、それぞれの喜怒哀楽を表現。その積み重ねが目的に向かって団結するという快感を呼び、それが大きく膨らんでいくところには感動も見える。健全で効率的な冒険の輝きに包まれる。良いところがなかったチェコフが思いがけないところで顔を見せる件など、思わずニヤリ。小さな三角関係が至るところに仕掛けられていて、それがくすぐりになっている点も注目だ。

 しかしやはり、ザッカリー・クイント演じるスポックの創り込みが冴え渡る。感情を表に出さないバルカン人の血を引くという設定が、ドラマにもコメディにもサスペンスにも利用される。ギャグだけに終わらせることなく、物語を転がす燃料にしているあたり、巧い。スポックが怒りを爆発させる場面には、ついホロリ。

 「スター・トレック」の世界観はますます広がりを見せるだろう。新しいキャラクターが投入される余地はたっぷりあるし、カークとスポックの関係もまだまだ発展するはずだ。3Dを意識した構図が多いのが気になるものの、エイブラムスにはエンタープライズ号が秘める可能性への、更なる調査を期待する。





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