タイピスト!

タイピスト! “Populaire”

監督:レジス・ロワンサル

出演:デボラ・フランソワ、ロマン・デュリス、ベレニス・ベジョ、
   ショーン・ベンソン、ミュウ=ミュウ、メラニー・ベルニエ、
   ニコラ・ブドス、エディ・ミッチェル、フレデリック・ピエロ

評価:★★★




 ファッションやインテリアが最も優雅に映る時代はいつか。アメリカが1920~30年代だとするなら、フランスは1950~60年代ではないか。『タイピスト!』の時代は50年代後半、ドンピシャだ。テーブルやソファー、カーテンにライト、ベッドや壁紙といった家具や内装。淡い色をふんだんに用いてリボンやフリル、ストライプや花柄等を飛ばした衣服。編み込みやポニーテイル等の凝った髪型。あぁ、どの場面もおフランスの底力が炸裂する。

 中でも主役はタイプライターだ。50年代フランスにおいて女子の憧れの職業No.1は秘書で、タイプライターの早打ちができることはステイタスだったらしい。ヒロインは秘書を目指したことをきっかけに、タイプライターの魅力にとり憑かれる。タイプライターにも色々デザインがあって可愛いのなんの。パソコンのキーボードにはない温か味もたっぷり。

 そしてこのタイプライター、実は映画との相性が抜群なのだ。タイプする度に真っ白な紙に印字されるそのリズムが、画面にスピード感を定着させる。突風を吹かせる。活気も創り出す。スポーツに似た興奮が溢れていく。タイプするのが可愛らしい女だとなお良い。タイプの音が時代の鼓動となる。

 タイプライターが魔法の道具として置かれた物語は、往年の名作からの引用がたっぷり。特にオードリー・ヘップバーン映画の匂いが濃い。とりわけ「マイ・フェア・レディ」(64年)的。田舎者の女子が憧れの上司にコーチングされ、一流の女へと変身を遂げていく。ドジでもとろくても、女だって根性見せるわよ!時々、挫けそうになるけどね。…ってむしろ「スチュワーデス物語」だと突っ込みつつ、ついつい乗せられる王道ストーリー。少女漫画とも言う。

 ただし、鬼コーチの造形は不満だ。最初から優しいのだ。一見厳しそうで、しかし常に女の心地良さを優先させられる紳士的な人物。おフランスだからこうなる?もっとビシバシしごいてくれないと、こちらは風間杜夫気分になれないではないか。演じるロマン・デュリスがスーツがあまり似合わないのもどうか。

 コーチの不満はそのまま、トレーニング内容の不満へと繋がる。マニキュアに色をつけて使う指を覚えさせたり、ピアノを使って指を慣らしたり…というのが目を引くぐらいで、全く無関係に思えるランニング場面はギャグにしかなっていない。まあ、タイプライターの早打ちそのものが地味な競技ではあるけれど、もう少し愉快な訓練法があっても良かった。

 ヒロインはヘップバーン風に撮られている。ただし、デボラ・フランソワとヘップバーンでは女優としての資質がまるで違う。ヘップバーンのような妖精的な要素はフランソワにはないし、ヘップバーンが小鹿風の愛らしさだとすればフランソワは子ダヌキ風の愛敬で勝負。でもそれで良いのだろう。フランソワもちゃんと洗練を身につけていく。顔立ちはミア・ワシコウスカに似ていると思う。

 山場はいつも、早打ち大会場面だ。5分間勝負、どれだけ文字を間違えることなく多く打てるかを競う。たかが早打ちだと侮れない。どの女も真剣な表情を崩さない。敗れ去った者は放心したり涙に咽んだり…。紙の端までタイプした後、先頭に打ち込み位置を移動させるアクションがたまらなく可笑しい。気合いで小さな竜巻でも起こりそうだ。ヒロインのライヴァルたちはもっと個性的にするべきだった。クライマックスなど国別対抗になるのだから、各国の特色を押し出しても面白かっただろう。





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