エンド・オブ・ウォッチ

エンド・オブ・ウォッチ “End of Watch”

監督:デヴィッド・エアー

出演:ジェイク・ギレンホール、マイケル・ペーニャ、アンナ・ケンドリック、
   アメリカ・フェレーラ、ナタリー・マルティネス、フランク・グリロ、
   デヴィッド・ハーバー、ハイメ・フィッツシモンズ、モーリス・コンプト、
   コディ・ホーン、ショドレラ・エイヴリー

評価:★★★




 さすがにちょっと揺れ過ぎではないか。昨今の映画は「臨場感」という言葉を名目にして、カメラを上下左右に激しく動かす。その大半は画面に何が映っているのか分からない、酔いを誘う結果しか生まないというのに…。『エンド・オブ・ウォッチ』でもカメラは揺れに揺れる。カメラの内、二台は主人公ふたりに括りつけられている。あぁ、揺れない方が難しい。

 …と最初からやや呆れ気味だったのだけど、これがぐんぐん面白くなるから分からない。揺れるカメラが捉えるのは、ロサンゼルス市警で働く警官の生々しい日常だ。映画に出てくる警官は大きな正義を心に掲げていたり、腐敗にどっぷり浸かっていたり、両極端に走りがちだけれど、ここに取り上げられるふたりは、どこまでも人間臭い。そして、それを見せるためには、彼らにできる限り寄り添うことが必要不可欠だったのだろう。次第に腑に落ちる。

 そうして出来上がった画には、「警察密着24時!」みたいなタイトルをつけられそうだ。物語を引っ張るような事件は起こらない。警官が日常で出くわす「小さな事件」が積み重ねられる。けれど、小さくても、そこにはアメリカの重大な今が見える。危険とも密着する。人種差別。貧困。ドラッグ。宗教。人身売買。次々浮上する社会問題から滲み出す毒が、ふたりの警官の毛穴にじわじわ入り込む。

 そう、ふたりは肉体的に過酷な状況に置かれると同時に、精神的にも辛い仕打ちに耐えなければならない。毒は少しずつ、しかし着実にふたりの身体の隅々に行き渡る。無意識の抵抗を見せながら、緊張で張り詰めた空気は、優しい表情を見せることをあっさり拒否する。知らず知らずの内に、追い詰められる感じが肌に来る。

 ふたりはそれを、コンビネーションで乗り切ろうとする。くだらない会話が、ふざけた切り返しが、一転愛の語らい合いが、ふたりの凍りついた顔を柔らかくする。それこそが、それだけが命の水となる。演じるジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャのケミストリーが素晴らしい。ギレンホールはかつての内向的なイメージを完全に吹き飛ばし、ペーニャは嫌味のない温か味を惜しみなく放出する。

 昨今、ブロマンスなんて言葉をよく耳にするけれど、そんなものとは全く異なる結びつき。それが信じられるところが急所だ。精神的双子状態に置かれた彼らゆえの熱さが頼もしい。それはもちろん、実際に日夜活動を続ける警官たちへの敬意へと繋がっていく。ただし、結末は買わない。

 火事場から子どもを救い出す場面がある。煙に巻かれながら、炎に焼かれながら、何とか小さな命を救い出すふたり。上からは表彰を受ける。なのに、その顔は冴えないままだ。「英雄の気分」はない。それまでの軽い振る舞いからすると、意外だ。彼らの心象風景は記号化できない、複雑な構造なのだろう。ハッとする。それを誠実に描き出した意義は大きい。





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