欲望のバージニア

欲望のバージニア “Lawless”

監督:ジョン・ヒルコート

出演:シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン、
   ミア・ワシコウスカ、ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、
   ガイ・ピアース、デイン・デハーン、クリス・マクギャリー、
   リュー・テンプル、ノア・テイラー

評価:★★★




 禁酒法時代。ヴァージニア州。三兄弟。足の悪い友人。密造酒。腐敗した権力。刑事。取締官。帽子。犯罪。トラック。ギャング。銃。薬莢。美しい女。ダンス。煙草。教会。ドレス。伝説。この時代のセンスは本当に素晴らしい。時代の象徴として登場するアイテムのいちいちが、実に大人っぽく優雅で、危険だ。『欲望のバージニア』はこの時代の危うさを平然と切り取る。ただし、どこかコミカルだ。

 合図は悪徳取締官を演じるガイ・ピアースの登場だ。眉毛がなく、髪が脂でべっとり。センターの分け目に一センチほどの剃り込みが入っているのが、異様な雰囲気だ。ピアースはこの男の変態性を前面に押し出す。オーヴァーアクトでありながら、しかし浮き上がらない技を見せ付け、映画の漫画的な側面を明らかにする。ピアースが投入されることで世界観が明瞭になる。代わりにジョン・ヒルコート映画特有の詩情が放棄されるのは大いに残念だけれど、それをしてまでも選ばれた世界の風景は、確かに魅力的だ。本能的な部分が分かりやすく刺激される。

 セリフがビシバシ、キマッていく快感がある。三兄弟は死なないという伝説に呼応するかのような「俺たちはボンデュラント兄弟だ。絶対に屈しない」という言葉から始まり、一度は使ってみたいフレーズが次々登場。「男を強くするのは腕っ節じゃない。何にも怯まない強い意志だ」なんてそれこそ少年漫画に出てきそうな言葉も綺麗にハマる。緑が美しい森。密造酒工場。埃っぽい酒場。静かに落ちてくる雪。その場所場所も「よしきた!」とばかりに、それに相応しい気合いの入った佇まいだ。

 「やられたらやり返せ」を繰り返す物語は、対称的な次男と三男の姿を意識して描かれる。密造酒作りのリーダーで、兄弟をまとめ上げる頼もしさを具えた次男をトム・ハーディが、まだまだひよっこで危なっかしく、けれど早く一人前に認められたい三男をシャイア・ラブーフが演じる。どちらも柄に合ったパフォーマンスだ。重心の低いハーディと身軽なラブーフが、振り子を思わせる奇妙なバランスを創り上げる。ハーディはラブーフよりも多く血を流し、ラブーフはハーディよりも多く涙を流す。長男役のジェイソン・クラークが後ろで吠えているのが可笑しい。

 男臭い世界の中で、ハーディとラブーフが愛する女たちは、その中に決して埋もれない。ジェシカ・チャステインがファムファタールの雰囲気たっぷりに登場すれば、ミア・ワシコウスカが牧師の娘の透明感を鮮明にする。「仕事」では完全にハーディの方がデキるのに、女絡みとなるとラブーフの方が断然積極的なのに笑う。ラブーフが実力の伴わない自信を持ってぐいぐい攻めるのに対し(当然大抵は空回り)、ハーディは会話をするのもたどたどしい。ハーディは愛する女の部屋をこっそり覗きながら、しかし決して自分からは求めない。中学生か!

 分かりやすい風景が広がる中、痛みを伴う暴力が溢れかえる。銃弾に重みがあり、傷口から溢れ出る血に熱がこもっている。クライマックスはもちろん、三兄弟と悪徳取締官の激突だ。暴力の温度が一気に沸点へと到達する。そしてそこからなかなか下がらない。それを笑い飛ばすかのようなエピローグが楽しい。兄弟の伝説を証明する、すっ呆けた味わいがある。涼しい風が吹き抜ける。





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