愛情は深い海の如く

愛情は深い海の如く “The Deep Blue Sea”

監督:テレンス・デイヴィス

出演:レイチェル・ワイズ、トム・ヒドルストン、サイモン・ラッセル・ビール、
   アン・ミッチェル、ジョリョン・コイ、カール・ジョンソン

評価:★★




 どうやらテレンス・デイヴィス監督はレイチェル・ワイズの横顔を気に入ったらしく、思い詰めた表情で窓から外を眺めるワイズの横顔をじっくり撮っている。確かに美しい。ガウンを着て、煙草を吹かし、その目はしかし、景色や道行く人などには興味がないようだ。何しろ女は、未遂に終わりはしたものの、自殺を図ったばかりだ。女の心の宇宙には何が広がっているのだろうか。

 話自体に目新しいところはない。テレンス・ラティガンによる1952年の戯曲を基にしている『愛情は深い海の如く』は、身も蓋もない言い方をするなら、不倫が不幸な結末を導くというだけのもの。戦後のロンドンを舞台にしていて、不倫相手の若い元パイロットが戦争の影を引きずっているものの、さほど物語上に奥行きをもたらすわけではない。それでも観るべきところは残っている。

 デイヴィスは文芸色を大切にしている。特に撮り方には気を遣っている。紗がかかっていてソフトポルノすれすれ、チープに見える危険を冒しながら、ほとんどが室内劇である画面の光と陰を丁寧に掬い上げている。陰の主張が大きいのはヒロインの心を映しているのだろう。それでも彼女を取り囲む壁紙、蝋燭、ライト、カーテン、花瓶、椅子…インテリアの数々が美しい。

 冒頭でワイズとトム・ヒドルストンが身体を重ねる画には想像力を刺激される。生まれたままのふたりがベッドの上で向かい合う。近づく顔と顔。カメラが下に這っていくと、美しい脚と脚が絡み合い、手は互いの尻をがっちり掴んでいる。このときの身体の接着部分がミソだ。合体したあの部分には何があるのだろう。きっとこのふたりの真実が隠れている。

 この描写も含め、いきなりの美しい場面の連続には仕掛けがある。運良く一命を取り留めたワイズは現実に突き当たる。裕福でも息苦しい夫との生活と同じように、実はヒドルストンとの暮らしもまた、辛く厳しいところが多いのだ。つまりワイズが窓越しに見ているのは、自分に都合の良い夢でしかない。浮上するのは人生の無常、溢れる苦悩、愛の終わりだ。

 それを表現するため、時間軸が弄られている。終わってみればその方法を選んだ理由は理解できるものの、とっつき難さが前面に出てしまった感は否めない。それから戯曲がベースということもあり、会話劇中心・室内劇中心になったのは退屈だ。美しい画は連続しても、肉体の動きの乏しさは映像から快感を奪うものだということにも注意を向けるべきだった。





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