終戦のエンペラー

終戦のエンペラー “Emperor”

監督:ピーター・ウェバー

出演:マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、初音映莉子、
   西田敏行、羽田昌義、火野正平、中村雅俊、夏八木勲、
   桃井かおり、伊武雅刀、片岡孝太郎、コリン・モイ

評価:★★




 昭和天皇とダグラス・マッカーサーが並んで収まった写真は、初めて見たときから忘れられない。マッカーサーの足の長さと言うか、腰の高さと言うか、下半身の立派さと言うか、とにかくその大きさにギョッとしたのだ。ふたりの間に微妙な距離があるのも色々な想像を巡らせることになった。何か庶民には理解し難い事情があるのではないかと、高尚なものから下衆なものまで想像は果てしなく広がる。『終戦のエンペラー』の作り手も、この一枚の写真を大切にして物語を創り上げたと察する。

 ただし、マッカーサーの活躍は限られている。GHQの元帥が直々に彼方此方動くはずもないから当然ではある。昭和天皇の戦争責任に関する調査を部下である日本文化の専門家に任せ、その報告を待ってのんびりしている。そのくせちゃっかり最後は美味しいところを持っていく。マッカーサーを演じるトミー・リー・ジョーンズ、ちょっと楽をし過ぎではあるまいか。代わりに動くのはボナー・フェラーズを演じるマシュー・フォックス。こちらは終始、硬い顔。日本人ばかりで緊張でもしているのか。

 フェラーズの調査は天皇の周辺人物への聞き込みと物証の確保だ。この過程で彼が日本独特の精神性に触れていくところが見どころになるはずなのに、見事に失敗する。何しろ彼は日本文化の専門家。最初から日本的価値観を受け入れている存在なのだ。本音と建前やら、忠義と服従やら、今じゃ聞き慣れぬ言葉にもアッという間に適応する。アメリカの観客向けのガイドか。ミステリアス・ジャパンはどこ。トドメは居酒屋での喧嘩場面だ。フェラーズのちゃぶ台返しが戦闘開始の合図になる。キマッタ!星一徹が先を越されてしまった!

 こうした調査の過程で天皇の人物像が次第に見えてくる…ということがない。フェラーズは何人もの関係者に面会するものの、全然真実に近づかない。じれったい。もう少し情報を小出しにして欲しい。終幕、ようやく天皇の相談役だった木戸幸一が現れて動き出す。木戸、サマサマだ。演じる伊武雅刀が僅かな時間で場をさらって儲け役。

 大変堅苦しい内容なので、それだけでは集客は見込めないと思ったのか、無意味なロマンス要素が放り込まれている。フェラーズは大学時代に知り合った日本人女性を忘れられないんだとさ。話をぶつ切りにする効果しか上げない回想でのデート場面が可笑しい。竹林での追いかけっこ。芝生の上でのダンス。道端での強引なキス。中学生みたいなふたり。オチにはびっくり。そのまんまか。

 クライマックスはマッカーサーと天皇の対面だ。ここで面白いのは、事前にあれこれ注意・注文を受けていたマッカーサーがそれを無視して、天皇を自分の側に引っ張り込むところだ。そして天皇がそれにジタバタすることなく、自らを差し出すところだ。映画的脚色なのかどうか。でもこういう意表を突いた反応こそが映画の命となる。中学生の恋愛を差し挟む暇があるのなら、もっと想像力を膨らませられるポイントはあったはずだ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ