バーニー みんなが愛した殺人者

バーニー みんなが愛した殺人者 “Bernie”

監督:リチャード・リンクレイター

出演:ジャック・ブラック、シャーリー・マクレーン、マシュー・マコノヒー、
   ブラディ・コールマン、リチャード・ロビショー、リック・ダイアル、
   ブランドン・スミス、ラリー・ジャック・ドットソン

評価:★★★★




 結局ジャック・ブラックの個性を最大限に引き出せるのは、リチャード・リンクレイター監督なのかもしれない。『バーニー みんなが愛した殺人者』はブラックの魅力がぎっしり詰まった映画。ブラックの魅力により支えられていると言い換えることも可能だ。暑苦しくて、でも奇妙に愛敬たっぷりで、時に鬱陶しくて、でも友達にもなりたくて…。ただしこの映画、「スクール・オブ・ロック」(03年)のような明朗さとは異なる面白さで勝負する。

 ブラックが演じるのはテキサスの田舎にやって来た葬儀屋だ。名前をバーニー・ティーダと言う。オープニングではバーニーの優秀なところが講義という形で紹介される。ムダ毛の処理。肌の艶出し。見映えする化粧。器用さを隠せないブラックの手つきに唸る。美しい所作だ。でもちょっと待て。確かに鮮やかな立ち振る舞いだけれど、どこか胡散臭くもないか?

 これは重要なポイントだ。物語はバーニーをどう捉えるのか、それを探ることに捧げられているからだ。バーニーは優しさと気遣いの人で、町に現れてからアッという間に人々の心を掴む。仕事は葬儀屋だけに留まらず、税金コンサルタント、カーテンの取替え、演劇指導、美術展の開催までやってのける。つまりほとんど町のマスコット、町のアイドルと化す。しかし、その彼が殺人を犯す。

 リンクレイターはブラックにシャーリー・マクレーンをぶつける。マクレーン演じるマージョリーばあさんは、バーニーと違って町の嫌われ者。自己中心的で礼儀知らず。心のない鬼婆として敬遠される。なのにバーニーは鬼婆にまで優しかった。それどころか鬼婆もまた彼を気に入ってしまうのが可笑しい。

 結局バーニーは、数年の我慢の後、堪えることができず鬼婆を銃で撃ち殺してしまうのだけど、それでも町の住人は彼を支持し続ける。ある者など「たった四発よ。五発じゃないのよ」なんて言ってのける。冷静に考えれば単純な殺人事件なのに、本当に彼に終身刑を与えてしまって良いのかという迷いがどんどん膨れ上がる。それを後押しするかのように、ブラックの歌声が何度も響き渡る。そしてそれが、誰もが持っている心の穴を埋めてしまう。

 事実、バーニーの行動には矛盾が多い。逃げる時間はたっぷりあった。死体を捨てることも可能だった。事故に見せかけることもできただろう。そうしないのは何故。その一方で、彼は自首しなかった。死体の保管は安易だ。鬼婆の金も自由に使っていた。嘘で町の住人を欺いていたとも言える。したがって観客は、落ち着かない気分になる。住人と同じように、この男を愛してしまった。でもそれで良いのか。このバランスへの導き方に大胆不敵なリンクレイターの技が見える。リンクレイターが目指すのは灰色の楽園だ。すっきりしないのが良い。

 バーニーはますます掴み所がなくなる。ブラックの胡散臭さが効いている。腹が出ていて、ベルトはヘソの上で留め、ヒゲはいんちきマジシャンのようで、でも人の心を掴んで離さないチャームにも包まれている。ブラックなくしては成り立たない人物像だ。

 エンドクレジットに驚く。「誘う女」(95年)のように、関係者・町の住人へのインタヴューによりバーニーという人間が語られる構成になっているのだけど、ここに秘められたある事実にギョッとするのだ。これだから人生は面白い。これだから映画は面白いとも思う。





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