ペーパーボーイ 真夏の引力

ペーパーボーイ 真夏の引力 “The Paperboy”

監督:リー・ダニエルス

出演:ザック・エフロン、マシュー・マコノヒー、ニコール・キッドマン、
   ジョン・キューザック、メイシー・グレイ、デヴィッド・オイェロウォ、
   スコット・グレン、ネッド・ベラミー、ニーラ・ゴードン

評価:★★★




 1969年のフロリダ、モート郡で起こった保安官殺人事件を巡る謎が話の軸に置かれる。大手新聞社に務めるジャーナリストとペーパーボーイであるその弟が、死刑囚の婚約者の依頼を受けて調査すればするほどに、黒い霧が深まる。ただし、その謎解きが主役でないことは明白だ。

 別に話に魅力がないわけではない。いつもならジャーナリスト役を演じるだろうジョン・キューザックが死刑囚に扮していて、いかがわしさを全開にさせる。アリバイが出てきて無実の可能性を浮上させながら、しかし、死刑囚への疑惑は晴れることがない。そこから放たれる磁力が話を牽引する。終幕にはキューザックの怪演が前面に押し出される。狡猾さが画面を支配する。

 …とここで思い浮かべるのは、「腐臭」という言葉だ。果物は腐りかけがいちばん甘いと言うけれど、『ペーパーボーイ 真夏の引力』もまた、腐りかけの魅力で押し切ったような作りだからだ。しかも、腐っているのは死刑囚だけではない。

 舞台は1969年。社会にはまだ人種差別が色濃く残っている。多くの白人は息をするのと同じように、黒人を侮辱する。捜査の過程にも、それは平然と表れる。躊躇いはない。ワニの身体からはみ出した内臓と一緒に、差別的言動が強烈な腐臭を放つ。

 南部の高温多湿の空気感もまた、腐臭と密着する。ジッとしていても汗が滲み出てくる、まとわりつくような暑さが充満している。誰もが正気を保つことに懸命で、少しでも気を抜くと、指の先から生きながらにして腐り始めそうだ。毛穴から滴り落ちる汗と一緒に正気が奪われていく。

 しかし何と言っても、人間から放たれる腐臭の主張が凄まじい。裏の顔を持ったジャーナリストや野心家の同僚、無神経で傲慢な父親らもそれぞれが独特の匂いだけれど、やはり死刑囚の婚約者のそれに心奪われる。ニコール・キッドマンが演じるのは言わば、天然ビッチという名の生き物で、肉体的にも精神的にも腐り落ちる寸前の匂いを漂わせる。大胆にして繊細。邪悪でありながら善良さを失わない。けばけばしい化粧で闊歩。その通った道には甘く危険な匂いがこびりつく。

 当然ペーパーボーイは彼女の虜になる。年齢差は関係ない。彼は腐臭が立ち込める町の中で、唯一肉体的・精神的成長過程にある。時に吐き気を誘う、時に甘くて酔いを誘う腐臭に塗れながら、彼は大人に近づく。この物語は終わってみれば、ペーパーボーイの成長ストーリーの側面が強い。ザック・エフロンはペーパーボーイ役にピッタリだ。

 リー・ダニエルスの演出はあざとさが目につく。時折オリヴァー・ストーン映画を思わせるところもある。けれど、「プレシャス」(09年)のような作為は見え難くなっている。殺人事件がクッション的役割を果たしたのが功を奏した感じだ。それに青年がもがくあくどくもある世界の中では、これくらいの演出的主張が必要かもしれない。闇が深くなるほどに、若い心ももがき甲斐があるというものだ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ