ラブ・トライアングル

ラブ・トライアングル “Your Sister's Sister”

監督:リン・シェルトン

出演:エミリー・ブラント、ローズマリー・デウィット、
   マーク・デュプラス、マイク・バービグリア

評価:★★★




 ある青年の一周忌を偲ぶ会が開かれる。その席で青年の知人が、一緒に「ホテル・ルワンダ」(04年)を観たと語る。そして翌日から彼はボランティア活動を始めたと…。嫌な話だ。故人を悪く言うのも嫌だけれど、美化が過ぎるのもまた敬意に欠ける行為だ。そう思った直後に青年の兄が、弟が本当に影響を受けた映画は「ナーズの復讐」(84年)だと言い、その打算的な部分を指摘する。弟は聖人君子ではなかった。いじめっ子だったとも言ってのける。場は凍りつくけれど、思わず膝を打ったのは言うまでもない。

 このオープニングだけでも『ラブ・トライアングル』が繊細な映画だと分かる。人間を崇めたり美しく見せようとしたりすることには興味がない。むしろ人間だからこそ過ちを犯す部分を丁寧に掬い取る。フェリーを使わなければならないとある島の冬の数日を舞台に、故人の兄(マーク・デュプラス)、故人の別れた恋人(エミリー・ブラント)、そのレズビアンの姉(ローズマリー・デウィット)、この三人の心の小波を、落ち着いた映像の中に封じ込める。

 物語が重要な映画ではない。ただし、可愛らしくも大胆なエピソードは多い。例えば、思いがけず出会った初対面のデュプラスとデウィットが夜の別荘で、その境遇を話す場面。長年の恋人と別れて落ち込んでいるデウィットをデュプラスが慰める。デュプラスは別れた女をアホだと言う。なぜなら「君の尻は最高じゃないか。柔らかそうだよ」。一見下品な男の下品な言葉でしかないものの、この男の心根の優しさをアッという間に悟らせる。デュプラスのクマ顔も良い味わいだ。

 この後、ふたりが酔っ払ってベッドを共にするのは安易にも思える。けれど、安っぽくは映らない。ふたりの息遣いや喘ぎ声からその心の寂しさが滲み出るし、全く鍛えられていないデュプラスの腹からは人間的な温か味と生々しさが浮上する。ブランケットでふたりの裸が見えないのは不自然だけれど、コンドームが見つからなかったり、アッという間に「行為」が終わったりするところも含めて、生活感や現実感が大切にされる。

 セリフを使わずにそれぞれの心情を示すさりげなさが良い。ブラントが突然別荘にやってくる場面では、関係を持ったことを隠すふたりへのブラントのハイテンションな態度から、ブラントがデュプラスを愛していること、姉のこともまた強く信頼していることが雄弁に語られる。ふたりを会わせたかったと無邪気に語るブラントを中心にステージは次の段階へと移る。

 他人からすれば他愛ない話でしかないし、狭い範囲内で繰り広げられるすったもんだだと言われる危険もある。それが軽やかに切り抜けられているのは結局、それぞれへの思いやりが三人の関係の底に敷かれているからだろう。人は愛する人のことを知らず知らずの内に気にかけている。支えようとする。気がつけばそれが、支え合いになっている。意識的にしては途端に臭くなるそれが、嫌味なく感じられる意味は大きい。

 終幕の一悶着に向けて、コンドームが重要アイテムとなる。突然下ネタに走るのかと見せかけて、触媒としてこれが意外な意味を持つのが可笑しいやら感心するやら。三人の関係が一気に崩れていく。そしてここからが素晴らしい。最終的には結局収まるべきところに収まることは容易に想像がつくのだけれど、その見せ方が巧みなのだ。セリフを最小限に抑え、寒い外と暖かな部屋の対比や、日々の生活に潜む何気ない気遣い、自転車による島の放浪等をじっくり映し出す。三人が大きなハートで包まれていく。何とかなる。希望は消えていない。人間で良かった。小さな明かりが灯り、そのささやかな温かさが胸に沁みる。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ