ヤギと男と男と壁と

ヤギと男と男と壁と “The Men Who Stare at Goats”

監督:グラント・ヘスロフ

出演:ジョージ・クルーニー、ユアン・マクレガー、ジェフ・ブリッジス、
   ケヴィン・スペイシー、スティーヴン・ラング、ニック・オファーマン、
   ティム・グリフィン、ワリード・F・ズエイター、ロバート・パトリック

評価:★★




 「米軍が超能力に秀でた者を集めて訓練、スーパー兵士として組織まで作っていた」という、人を喰った設定。「ジェダイ計画」という言葉まで飛び出してくるあたり、実にバカバカしい。しかし最もバカバカしいのは、これが事実をベースにしているということである。『ヤギと男と男と壁と』はジョン・ロンソンによるノンフィクションの映画化なのだ。

 真実に基づいている。これが面白いところであり、つまらないところでもある。物語に入る前に実話であることをテロップで入れるくらいで、作り手もこれを当然のようにアピールしている。つまり観る側は実話であることを頭に入れることを強いられた状態で物語に触れることになり、作り手もそれを承知の上で、真実であることに頼った笑いばかりを投下していくのだ。

 俄かには信じ難いエピソードの連発。とても真面目に受け取れない。でも、あれもこれもきっと本当のことなんだろう。少なくともあれにもこれにも似た事実があったのだろう。もう笑うしかないじゃないか!という流れ。大変貧しいパターンの繰り返し。確かに現実に起こったことだとしたら、あまりにも強烈なそれだ。でも、そこにあるマヌケさばかりにこだわるというのは、映画作りにおいて豊かなことなのかどうか。実話ベースじゃないことを知らなくても笑えたジョークはどれだけあったか。

 つまりここには、人と人がぶつかり合うことで生じる歪みは、ほとんどない。社会風刺やブラックユーモアもない。バカバカしくて、でも真実で、それゆえに笑ってしまう、ただそれだけの小話の羅列である。だから当然、「命懸けで信じるものがある」ことの大切さなど、セリフでしか伝わってこない。

 役者は豪華だ。ジョージ・クルーニーがインチキヒゲを蓄えて奇怪な長髪になり、ジェフ・ブリッジスが奇妙なダンスやヨガをのんびりこなし、ケヴィン・スペイシーが白目になる。目隠しで車を運転したり、焼け石の上を裸足で歩いたりもする。ヤギを一睨みして殺すこともある。スターたちは皆、楽しそうに演技をしているけれど、何かの余興でも見せられているよう(ちょっとヘンテコな宗教っぽくもある)。忘年会じゃないんだから、それはないだろう。ナンセンス版「オーシャンズ」シリーズ(01年、04年、07年)の匂いもうっすら。まあ、実力派の迷走が貴重と言えば貴重か。

 ところで、超能力者ではない、ただの記者役のユアン・マクレガーがやっぱりイイ。彼の目を通して物語を見ることになる、いちばん普通で、でもいちばん難しい役柄だ。若い頃にはたっぷり入っていた力が大分抜けて、引く演技に味わいが出てきたのだと思う。目をくるくる回しながら、出来事に唖然とするサマを、優しい温か味を忘れることなくこなしていた。ちょっと小動物みたいだった。





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