偽りの人生

偽りの人生 “Todos tenemos un plan”

監督:アナ・ピーターバーグ

出演:ヴィゴ・モーテンセン、ソレダ・ヴィシャミル、
   ダニエル・ファネゴ、ハヴィエル・ゴディーノ、
   ソフィア・ガラ・カスティリオーネ、オスカル・アレグレ

評価:★★




 ヴィゴ・モーテンセンがアルゼンチンの風景に無理なく馴染んでいる。何でもモーテンセンは幼少期をアルゼンチンで過ごしたらしい。湿度が高いデルタ地帯。移動にはカヌーやボートが使われる田舎。スペイン語を流暢に操りながら、モーテンセンがその息遣いを生々しく画面に定着させる。ズバリ、絵になる男。

 しかし、だからと言って映画まで面白くなるわけではない。アイデンティティーを盗む物語は、古今東西頻繁に見かける。最近だとフランスから「ビッグ・ピクチャー」(10年)という映画が発表された。『偽りの人生』ではモーテンセンが兄の、それも双子の兄のアイデンティティーを盗む。一卵性双生児だから、人生を乗っ取るのにも都合が良い?そうしてモーテンセンはあろうことか、兄の知り合いだらけである湿地帯に乗り込んでいく。強引。とんでもなく強引。

 案の定モーテンセンは苦労する。自分に話しかけてくる者は多いものの、誰が誰だかさっぱり分からぬ。その度にドギマギ。モーテンセンは相槌を打ったり、当たり障りなく切り換えしたり、綱渡りで場を乗り切る場面の連続。そしてこれが…、これが何と…、この映画のサスペンスのベースなのだ。

 これはもうアプローチを間違えているとしか思えない。モーテンセンは到着直後から蜂に刺されるわ、タコ殴りにされるわ、逮捕されちまうわ…と受難続き。覚悟の上でのアイデンティティー乗っ取りだったのだろうけれど、それにしてもマヌケだ。喜劇として見せた方がよっぽど違和感なく見られたのではないか。

 おそらくこの物語は、邦題にヒントが隠されている。都会で医師として暮らすモーテンセンが、田舎で養蜂と犯罪ビジネスで喰っている兄の人生を自分のものにする。普通に考えれば乗っ取った人生こそが偽りのそれということになる。けれど、それは正しいのか。無気力で流されるままの今までの人生こそが偽りなのではないか。ここに生きる苦しみだとか切なさだとかを見ているのだろうけれど、うーん、そういう余白に気を向けさせることのない展開だ。

 手掛けたのが「瞳の奥の秘密」(09年)チームというのに驚く。残念な事実だ。人という生き物の抱える執念やら情念やらを濃厚に描き出したあの技は、この映画のどこにも見当たらない。上手く扱えば同じようにそれらを浮上させることのできる題材のはずなのに…。モーテンセン鑑賞映画にしてしまうのは、惜しいというものだ。





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