詩人、愛の告白

詩人、愛の告白 “Confession d'un enfant du siècle”

監督:シルヴィ・ヴェレイド

出演:シャルロット・ゲンズブール、ピート・ドハーティ、
   リリー・コール、アウグスト・ディール、フォルカー・ブルッフ、
   ギョーム・ガリエンヌ、カロル・ロシェ、ジョゼフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム

評価:★★




 フランスの詩人アルフレッド・ド・ミュッセが年上の作家ジョルジュ・サンドとの関係を下敷きに書いた私小説「世紀児の告白」の映画化というと、「年下のひと」(98年)が記憶に新しいところ。『詩人、愛の告白』はしかし、それとはまるで趣を異にする。ミュッセとサンドとの恋愛関係を深く掘り下げようという気配は感じられない。

 そうなったのはおそらく、プロジェクトの最初からあったに違いないアイデアに原因があるのではないか。真っ先に目につくのは、ミュッセを音楽界の問題児ピート・ドハーティが演じていることで、これはもう絶対ドハーティありきの企画だったはずだ。ドハーティがミュッセだったらどうだろう。どうやら一部の人は、「問題児でありながら死ぬほどにロマンティック」というイメージをドハーティに抱いているらしい。

 斯くして物語の中で動き回る主人公は、オクターヴという名の青年なんかではなく、ピート・ドハーティそのものだ。貴族の家系に生まれ、金があるのをいいことに酒や女にのめり込む自堕落な毎日を送るドハーティが、父親を亡くした頃に出会った年上の未亡人ブリジットに恋をする。ドハーティの猛烈なアプローチによりブリジットが遂に陥落。けれど、どうしてもふたりの仲は上手く行かない。画面のイメージは大切にされても、一応のストーリーはほとんど意味をなしていない。ドハーティがドハーティのまま動き回ればそれで良いという解釈に見える。未亡人は物語が始まって30分経ち、ようやく姿を見せる。

 青年の女への執拗な追いかけ方はストーカーそのもの。拳銃で自殺したふりをして彼女をおびき寄せるという罠も仕掛ける。そんな手に女はまんまと引っ掛かる。けれど、些細な嫉妬がふたりの仲を狂わせる。くっついては離れ、離れてはまたくっついて…。子ども騙しな駆け引きだったり、取るに足らない衝突だったり、ここに見える恋愛は別に、ミュッセとサンドである必要など、どこにもないのだ。やはりドハーティありきと見るのが妥当だ。

 ところが困ったことに、ドハーティが思ったよりも冴えない。デカダンスな世界において、不健康なムード、甘ったれた態度は役柄にピッタリだけれど、青年が無意識に具えているべき毒々しさや妖しさがちっとも感じられない。丸顔と眠そうな目が良くなかったのだろうか(場面によっては中川礼二と区別がつかない)。自己陶酔が激しいナレーションを畳み掛けるばかりで、一向に面白い人物像が立ち上がらない。魔性こそ青年の人格の核にあるべきものだ。そもそもどうしてこのふたりは惹かれ合ったのか、互いでなければダメだと思ったのか、それすら見えてこない。

 男と女が出会う場面は心に残る。冬、真っ白な景色の中で、黒い服を着たふたりが目と目を合わせる。このときふたりの顔の色までもが真っ白なのが印象的だ。ベッドシーンを含め、白が象徴的に使われる場面が何度かある。それがどう染まっていくのか、染まらざるを得なくなるのか、そのサスペンスをもっと大切にして欲しかった。





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