アンコール!!

アンコール!! “Unfinished Song”

監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムス

出演:テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、
   ジェマ・アータートン、クリストファー・エクルストン、
   オーラ・ヒル、アン・リード、ジャメイン・ハンター、
   カリータ・レインフォード、ラム・ジョン・ホルダー

評価:★★★




 これは狡いだろう。思わず口に出てしまうのは、テレンス・スタンプとヴァネッサ・レッドグレーヴが歌を披露するからだ。レッドグレーヴはともかく、歌なんか軟弱だとでも言いそうな強面のスタンプが、その通りのキャラクターで歌い上げる。ただそれだけで、涙腺ど真ん中直撃だ。歌う楽曲が、例えば「たんたんたぬきの」だった場合でも泣ける気がする。

 この『アンコール!!』、実のところ、その上作りがまたベタ。合唱コンクール出場を目指す年金暮らしの老人たちの姿を通して、生きる素晴らしさを謳い上げる。「何のために歌うのか」なんて問い掛けも、「皆の表情に答えがあるわ」というセリフまで用意して抜かりがない。「glee/グリー」(09年~)の影響か、楽曲がヒット曲ばかりというのもポイントを押さえている。そして、さあ、後はあなたが感動するだけですよ、涙を流すだけですよ、と語り掛ける。こういう泣かせ映画は敬遠したくなるものだ。

 それでも、そういう透け透けの計算にまんまと乗せられてしまうのは、まず、老人たちのヴァイタリティを示す描写に嫌味がないからだ。最近の老人賛歌映画の多くとは違って、老いを前面に押し出して笑いや涙を捻り出そうという破廉恥さはほとんど感じられない。もちろんギャグになっている場面はあるけれど、多くは老人たちの、豊かな人生経験に裏打ちされた逞しさに賭けている。好もしいことだ。

 その中にいるのが、スタンプとレッドグレーヴなのだ。これ以上のパワーが望めようか。見せ場はふたりのソロパフォーマンスになる。レッドグレーヴが「True Colours」を、スタンプが「Lullaby (Goodnight My Angel)」を歌う。それも大切な人を想って歌う。誰もが口を揃えて言うことだけれど、どんな一流歌手も相手のことを想って歌う素人の歌には敵わない。スタンプとレッドグレーヴがそれを証明する。

 もうひとつ愉快な気分を誘うのは、スタンプのアイドル映画になっているという点だ。素のスタンプを思わせるイメージが続くのだ。スタンプが演じるのは、世間に睨みを利かす頑固ジジイだ。辛辣な言葉と深く刻まれた顔のしわにより周りを威嚇。半径数メートル以内に他人を入れないと決めているかのようだ。その彼はしかし、妻には甘かった。他人には決して見せない笑顔を見せる。「もう目覚めないかも」と妻に言われれば、そっとキスをする。

 スタンプのレッドグレーヴを見つめる目が、なんともまあ優しいもので、あぁ、人はこんな風に人を愛せるのかと一瞬で悟らせる。普段素っ気無い分、ふたりきりになったときの落差が強烈。要するに、他人から離れて生きる硬派で孤独な部分と大切な人には惜しみない愛を注ぐ甘い部分が交互に表れるわけで、これがまあスタンプファンには辛抱たまらんものだと推測される。真っ白な髪も、禿げ上がり露になった頭皮も、瞳の永遠のブルーも、心がこもった歌声も、丸ごとスタンプの魅力全開だ。

 泣かせ映画には違いないものの、決定的泣かせポイントは外されているのも認めて良い。扉の向こうで泣かせたり、写真や留守番電話といったアイテムを通じて愛情を見せたり…。気持ち良く泣かせるという案外難しいところを、軽やかに切り抜けている。





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