コン・ティキ

コン・ティキ “Kon-Tiki”

監督:ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ

出演:ポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲン、
  アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、ヤーコプ・オフテブロ、
  トビアス・ザンテルマン、オッド=マグヌス・ウィリアムソン、
  グスタフ・スカルスガルド、アグネス・キッテルセン

評価:★★★★




 空の青と海の青が溶け合う大海原に、これぞ筏(いかだ)だと叫びたくなるそれがぽつんと浮かんでいる画に惚れる。麻で縛り上げられた丸太。大きく広がる白い帆。後方部には雨除けにも寝座にもなる小屋が見える。信念を抱きながら大自然に挑む男たち。トロピカルカラーのオウムや、こっそり乗り込んでいる小さなカニも可愛らしい。

 ペルーからポリネシアへ。8,000キロを筏で渡るという大冒険は、どうしても「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(12年)を連想するのだけれど、『コン・ティキ』にはファンタジーが入り込む余地はない。何しろノルウェーの人類学者であるトール・ヘイエルダールの実話を基にしている。知恵と体力と精神力だけを武器に、男たちがロマンを運ぶ。

 そう、原動力になっているのはロマンだ。ポリネシア人の祖先は南アメリカから渡ったのではないか…という仮説を証明するべく、1500年前の南米人と同じ条件で筏を創り上げ、危険を承知で海に挑む。無謀だし、愚かだ。けれど、ロマンはしかし、抗うことのできない夢に繋がっている。海は障壁ではなく道だったことを証明するためには、俺たちが身体を投げ出さなくては…。おそらく分からない人には一生分からないだろう。大体、冒険のリーダーがノルウェー人というのがイイじゃないか。

 コン・ティキ号という名の筏の上での生活描写が見どころになるのは言うまでもない。嵐との遭遇。クジラの往来。サメの急襲。仲間同士の衝突。焦燥と恐怖による混乱。クライマックスは環礁をいかにして乗り越えるか、だ。羅針盤や無線、海図、気球を使った無線といったアイテムも楽しいし、日誌が出てくるのも嬉しい気分。

 男たちの肌が焼けていくのに見入る。最初はスーツ姿だったのが、次第に露出が増えていき、肌が赤くなり、黒くなる。主人公など、金髪碧眼といういかにも北欧人の容姿で、体型はひょろひょろ。白肌が痛そうで痛そうで、全然海が似合わないのに、終幕には立派な海男だ。他の者たちも含め、ひげもじゃ毛むくじゃらになっていく。何と言うか、身体が痛めつけられていくというより、原始に還っていく感じがある。生きることについて考えさせられる変化だ。

 ヘイエルダールの人物像も面白い。自信はあっても、それが確かなる根拠に裏づけされているようには見えない。皆をまとめ上げるリーダーとしては、やや頼りなくも思える。けれど不思議なことに、楽天的になその性格が、いつしか男たちの輪を頑丈に結び上げる。修復不能に見える状況下でも、なんとか持ち堪える。とは言え、仲間の命が危険に晒されたとき、人知れず震えもする。実は泳げないという致命的な弱点が微笑ましい。

 新機軸を見せる映画ではない。正攻法の冒険を正攻法の描き方で魅せる映画だ。芸がないと笑うべきだろうか。笑いたければ笑うがいい。しかし、コン・ティキ号の男たちの逞しさは、頭でっかちな見方なんて相手にしない。本物のロマンが大らかに輝いている。





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