パパの木

パパの木 “The Tree”

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ

出演:シャルロット・ゲンズブール、マートン・ソーカス、
   モルガナ・デイヴィス、クリスチャン・ベイヤース、トム・ラッセル、
   ゲイブリエル・ゴッティング、エイデン・ヤング

評価:★★




 その大木はオーストラリア・ゴムの木だという。隣に人間が移り住むよりも遥か昔から生きてきただろうその木は、佇まいだけで観る者の心を掴むダイナミズムを湛えている。大地に力強く張る根っこ。複雑に伸び、絡まり合う枝。そこに生い茂る鮮やかな緑…。

 『パパの木』の主人公家族は、一家の大黒柱である父を突然亡くして途方に暮れる。とりわけ母の哀しみは深く、生活は荒れ果てる。家具も食器も散乱し、日々の食事でさえまともではない。そんなとき彼らは大木の中に、父の魂を見る。7歳の長女は木と会話し、それに誘われて母も木に安らぎを見出す。オーストラリアならではの空と続いた広大な土地が、説得力を与えている。本当に精霊が降りてきそうな懐の深さを感じさせる。

 大木が見せる包容力が素晴らしい。夫の魂に導かれるように木に登った母が、星が降り注ぐ夜、緑に囲まれながら、身体を幹に預ける画!それはまるで冒頭、ハンモックの上でじゃれ合う夫と妻のようではないか。愛する男の腕の中で眠る女がそこにはいる。目を瞑り、これ以上の幸せはないと…。

 ただし、この木に対する眼差しにはもう少々厳しさが欲しいところだ。大木を人生や父親のメタファーとして見ていることは理解できる。けれど、それに寄り掛かっていては、新しい道が開けないのも事実だろう。せっかく大木が遺された者の人生を侵食していく気配を漂わせているのに、結局彼らはそれを手放せない。

 そんなわけでクライマックスでは大木との別れが用意されるのだけれど、この見せ方がとても甘ったるい。家族は結局、自分たちから別れを告げることはない。自ら歩き出すことはない。あくまで自然の悪戯により、そうならざるを得ない状況に追い込まれるのみ。自分たちから大木から離れることにこそ意味があるのではないか。それをしないで覚悟を決めた表情を見せても、甘えが過ぎるというものだ。

 母を演じるシャルロット・ゲンズブールよりもハッとさせる存在感を見せるのは、長女を演じるモルガナ・デイヴィスだ。赤い頬っぺと全てを見透かすような目のアンバランスが、デキる。風に吹かれながら、大木と会話する画に嫌味がない。他の兄弟たちとのケミストリーも良い。

 そうそう、母に「今、幸せ?」と聞かれた長男(クリスチャン・ベイヤースがすっかり大きくなった!)が、「幸せな人生なんて退屈じゃないか」と返すやりとりが妙に胸に残る。





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