ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて

ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて “Crime d'amour”

監督:アラン・コルノー

出演:リュディヴィーヌ・サニエ、クリスティン・スコット=トーマス、
   パトリック・ミル、ギョーム・マルケ、ジェラール・ラロシュ、
   ジュリアン・ロシュフォール、オリヴィエ・ラブルダン、マリー・ギラール

評価:★★★




 女の人間関係がさらりと描かれることは稀だ。単純な男たちとは違い、女たちは笑顔の裏に別の表情を隠している。『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』のフランス女ふたりは、上司と部下という間柄だ。上司は仕事のできる部下を可愛がり、部下は上司を信頼してプロジェクトを次々成功に導く。一見理想の人間関係。しかし、事件は平然と起こる。

 部下が上司の男とベッドを共にしたことで、上司が部下に陰湿な嫌がらせを始めるのだ。仕事の上でも恋愛の上でも…。表面上は何も変わらない。しかし、その笑みの裏側では部下への複雑な想いが渦巻いている。部下は気にしないふりをしながら、それでも悔しさにむせび泣く。ここに見えるのは嫉妬やプライドであり、女が男と同じように持っている上昇志向だ。女の思考や生態を観察していくところに、面白さがある。

 こういう関係が出てくると、力の強い上司の圧力により、従順で脆い部下が一方的に悶え苦しむことになるのが常だけれど、意外にその気配は薄い。実際、部下は上司の仕打ちに打ちのめされるものの、案外部下も最初からしたたかさを漂わせている。とりわけセックス場面にそれが如実に表れる。上司の男をあんなに堂々、激しく、身体を捩じらせながら求めるだなんて、純情を気取るのは難しい。

 序盤は上司を演じるクリスティン・スコット=トーマスが引っ張る。笑顔と冷静さを失うことなく、冷酷に、悪辣に、部下を甚振る様が怖い。トドメを刺す手前で僅かな自由を与え、その必死の形相を笑っている。全く悪びれない立ち振る舞いに、どこかユーモアまで感じさせるのが、素晴らしい。ビッチの鑑だ。

 後半になると、部下役のリュディヴィーヌ・サニエがスコット=トーマスに復讐を始める。彼女が仕掛ける罠というのが大変回りくどく、じれったい。わざわざ自分が犯人であるという証拠をちりばめる。逮捕される。素直に自供する。もちろん考えがあってのことなのだけれど、あまり手際良く見せられていない。

 ただし、結局退屈からは免れる。いよいよ蒔かれていた伏線が回収されていくとき、すなわち部下が社会的に圧倒的優位に立つとき、サニエが目に見えて美しくなっていくからだ。それはサニエが完全なるビッチに生まれ変わる瞬間でもある。化粧や服装が変化する。歩き方や喋り方も同様だ。自信を取り戻したサニエの表情がゾクゾクする。これぞ、女だ。

 惜しむらくはクライマックスで、スコット=トーマスとサニエの更なる対決が見たかった。スコット=トーマスの出番を前半で終わらせてしまうのは、あまりに勿体無い。それと官能という要素をもっと掘り下げても良かった。せっかく冒頭で、ふたりの間に同性愛的な匂いを妖しく仄めかしているのだから。





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