マイ・ライフ・メモリー

マイ・ライフ・メモリー “Sunlight Jr.”

監督:ローリー・コルヤー

出演:ナオミ・ワッツ、マット・ディロン、ノーマン・リーダス、
   テス・ハーパー、アントニー・コローネ

評価:★★




 こんなことを言うと失礼になるのかもしれないけれど、ナオミ・ワッツとマット・ディロンは貧乏が似合う。どちらも容姿に恵まれ、高級ブランド服に身を包めば、スタイリッシュに着こなす。けれど、どれだけ着飾っても幸薄い匂いが漂う。どちらもまとう空気に生活感がたっぷりあり、どういうわけだかそれが貧乏と密着しやすいらしい。

 そんなわけで『マイ・ライフ・メモリー』でカップルを演じるふたりが、貧乏を極めた生活をしているというのはあまりにも似合っている。ディロンは半身不随の車椅子生活。国から支援金を貰ってもすぐさま酒代に消える。ワッツはパワハラ上司がいるコンビニで働くも、生活は楽にならない。モーテルで暮らし、ガソリン代に困り、さりとてそこから抜け出す術もない。

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追憶と、踊りながら

追憶と、踊りながら “Lilting”

監督:ホン・カウ

出演:ベン・ウィショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン、
   モーヴェン・クリスティ、ナオミ・クリスティ、ピーター・ボウルズ

評価:★★★




 喪失感を描く映画は珍しくない。愛する者を亡くしたときの、心の一部分が欠けてしまったような感覚は、いつの時代も共通のものだ。では、『追憶と、踊りながら』の何が面白いのか。故人が生きていたときはほとんど面識がなかったふたりが(片方は一方的に敬遠)、間に横たわる溝を揺さぶるところだ。醜悪の汚水を避け、美しい水を掬い上げる。

 ふたりとは死んだ青年の母、そして青年の恋人だ。恋人は男だ。青年はゲイで、けれどそれを母には打ち明けていなかったことが事情をややこししくする。物語に平然と青年が出てくる。「母」も「恋人」も青年の死を乗り越えられず、彼の幻影を見ている。幻影場面は少ない。けれど、目に焼きつく。

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サンドラの週末

サンドラの週末 “Deux jours, une nuit”

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ

出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ、
   クリステル・コルニル、オリヴィエ・グルメ、カトリーヌ・サレ

評価:★★★




 ダルデンヌ兄弟は大抵の場合、登場人物を極めて現実的で過酷な状況に追い込む。そのやり口が生々しくて、ヒリヒリ痛くて、ズキズキ沁みる。ある種のサディスティックな思考の表れなのではないかと思うことすらある。それが『サンドラの週末』では少々感覚が違う。ヒロインの魂に寄り添いやすい。マリオン・コティヤールの起用が大きいのではないか。

 ここに出てくるコティヤールにはいつものカリスマ性は感じられない。月曜までに二十人に満たない同僚の過半数を味方につけないと解雇が決まる。天秤にかけられるのは、同僚が受け取るボーナスというから、何ともまあ世知辛い。しかも、これに立ち向かうのは後ろ向き女だ。現実に打ちのめされ、本当に膝から崩れ落ち、さらにはふて寝を決め込むとは!当然めそめそ泣くことも多く、こういうヒロインは観客の気を滅入らせる(実際ダルデンヌ兄弟映画の主人公はこの要素が強く、リアリティを言い訳に“過剰”に走る)。

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ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男

ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男 “Get on Up”

監督:テイト・テイラー

出演:チャドウィック・ボウズマン、ネルサン・エリス、
   ヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー、ダン・エイクロイド、
   レニー・ジェームズ、フレッド・メラメッド、クレイグ・ロビンソン、
   ジル・スコット、ジョシュ・ホプキンス

評価:★★★




 2014年末から2015年春にかけてラジオで鳴りっぱなしだったマーク・ロンソンの「Uptown Funk」を聴く度に感じるのは、全盛期のマイケル・ジャクソンと、そしてジェームス・ブラウンの鼓動だ。ゲストヴォーカルとして参加しているのはブルーノ・マーズで、つまり「JB→MJ→BM」という音楽界に生きる類稀なる才能の完璧な流れを封じ込めた楽曲だったわけだ。ファンキーを極めた強力なアップビートの正体を見る。

 それほどまでに偉大なJBに関するキーワードはたっぷりあり、やはり外せないのは「soul」だろう。それは彼のパフォーマンスに鮮明に表れる。テイト・テイラーはそれを承知し、何度もステージ場面を挿入する。キング牧師殺害翌日に開かれるボストン公演。一流ミュージシャンの証であるアポロシアター公演。映画のクライマックスを飾るJBキャリアの後期公演。ターニングポイントにはいつもライヴがあり、否応なしに盛り上がる。

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June 19-21 2015, Weekend

◆6月第3週公開映画BUZZ


インサイド・ヘッド “Inside Out”
 配給:ディズニー
 監督:ピート・ドクター
 Budget:$175,000,000
 Weekend Box Office:$90,440,272(3946) Great!
 OSCAR PLANET Score:95.1 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           編集賞、視覚効果賞、録音賞音響効果賞作曲賞主題歌賞
           アニメーション映画賞

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トップ・ファイブ

トップ・ファイブ “Top Five”

監督・出演:クリス・ロック

出演:ロザリオ・ドーソン、ガブリエル・ユニオン、アンダーズ・ホーム、
   J・B・スムーヴ、ロマニー・マルコ、ヘイリー・マリー・ノーマン、
   ルイス・ガスマン、ケヴィン・ハート、タラジ・P・ヘンソン、DMX、
   ガボーレイ・シディベ、ウーピー・ゴールドバーグ、アダム・サンドラー

評価:★★★




 クリス・ロックが自ら監督も手掛ける『トップ・ファイブ』で演じるのはコメディ俳優だ。己を笑い飛ばすパロディ映画なのだろうかと単純に思う。実際、映画業界を笑い飛ばすギャグは多い。いきなり「アクターズ・スタジオ・インタビュー」のパロディから始まるし、その後も映画業界ネタが次々登場。映画ファンはそれだけで脇腹をくすぐられる。しかもこの映画、さらに捻りを加えてくるから侮れない。

 ロック演じる主人公は人気スタンダップコメディアンだ。しかし、今日封切られる新作映画はシリアスな内容。演技力を認められたいと、ドラマティックな方向にキャリアをシフトさせようとしているのだ。その一方で間もなく結婚する相手はリアリティスターで、そこに愛情があるのかどうかは不透明だ。業界の裏側を覗きながら、風刺と皮肉の爆弾を次々投下する。

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犬と私とダンナのカンケイ

犬と私とダンナのカンケイ “Darling Companion”

監督:ローレンス・カスダン

出演:ダイアン・キートン、ケヴィン・クライン、マーク・デュプラス、
   リチャード・ジェンキンス、エリザベス・モス、サム・シェパード、
   ダイアン・ウィースト、アイェレット・ゾラー

評価:★★




 「dog-tired」という言葉がある。「へとへとに疲れた」という意味だ。今後はこの言葉を聞く度に『犬と私とダンナのカンケイ』を思い出すかもしれない。高速道路で怪我をしているところを保護して以来飼っている愛犬(コリーのミックス)が行方不明になったことをきっかけに、家族はその関係を見つめ直す。その見つめ直し方に芸が感じられなくて…。

 外科医の夫とその妻は愛犬フリーウェイの失踪をきっかけにぎくしゃくし始める。どうやら妻が夫に不満を抱いていたらしい。そうして吐き出すものが「仕事と家族とどちらが大切なの?」という陳腐を極めるものだから、落胆も仕方ない。夫ケヴィン・クライン、妻ダイアン・キートン。つまりは60代カップル。彼らが問い掛けなければならないテーマだろうか。

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ピッチ・パーフェクト

ピッチ・パーフェクト “Pitch Perfect”

監督:ジェイソン・ムーア

出演:アンナ・ケンドリック、レベル・ウィルソン、スカイラー・アスティン、
   アダム・ディヴァイン、アンナ・キャンプ、ブリタニー・スノウ、
   アレクシス・ナップ、エスター・ディーン、ベン・プラット、
   ジョン・マイケル・ヒギンス、エリザベス・バンクス、

評価:★★




 10名ほどのその音楽チームは全米一を目指す。有名楽曲をカヴァーする。マッシュアップがなされる。ソロがある。コーラスがある。振り付けがある。ダンスがある。衣装をキメる。チーム内の統率は難しい。ライヴァルチームは性格が悪く、かつ手強い。忙しい最中、けれど異性を意識することも忘れない。何回かの大会を経て、遂に彼らは決勝に辿り着く。これは「glee/グリー」(09~15年)の説明ではない。

 そう、『ピッチ・パーフェクト』に目新しいストーリーはない。作り手も端から「glee」の真似だと言われるのは承知だったのではないか。だから単に歌って踊るだけではなく、パフォーマンスに「アカペラ」という要素を注ぎ込む。そして、バックの演奏がヴォーカルパーカッションで補われる。人間の技とは恐ろしいもの、楽器で演奏しているとしか思えない音が次々登場。「ハモネプ」という言葉を連想してはいけない。多分。

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リピーテッド

リピーテッド “Before I Go to Sleep”

監督:ローワン・ジョフィ

出演:ニコール・キッドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、
   アンヌ=マリー・ダフ、ベン・クロンプトン、アダム・レヴィ

評価:★★




 ニコール・キッドマンが演じる四十路の女は記憶障害がある。交通事故が原因で、一晩寝ると前日までの記憶を全て失ってしまう。これは「50回目のファースト・キス」(04年)のドリュー・バリモアと全く同じ設定だ。あちらはコメディだったけれど、こちらはスリラー。まあ、現実的に考えて、この状態になったら恐怖の方が断然多いだろう。だがしかし、『リピーテッド』が提示するものを恐怖と密着したサスペンスと呼んで良いのか。

 序盤はキッドマンの日常がスケッチされる。理解ある夫に与えられた情報を基に、キッドマンは失われた記憶の謎を解き明かす。その度に多くない登場人物の表情が変わる。当然観る側はキッドマンと一緒に、それを整理しなければならない。不穏な音楽が流れるものの、ここにあるのはサスペンスではなく、混乱、或いは困惑だ。

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チャッピー

チャッピー “Chappie”

監督:ニール・ブロムカンプ

出演:シャールト・コプリー、デヴ・パテル、ヒュー・ジャックマン、
   シガーニー・ウィーヴァー、ニンジャ、ヨ=ランディ・ヴィッサー、
   ホセ・パブロ・カンティージョ、ブランドン・オーレット

評価:★★★




 人工知能(AI)が取り上げられると、その暴走が描かれることが圧倒的に多い。無理もない。既に今は、コンピュータに翻弄される社会だ。ところが、ニール・ブロムカンプはむしろ、人工知能に寄り添う。それも徹底的に。教えられたことを見たまま聞いたままに受け入れるそのロボット、名前を『チャッピー』と言う。あら、可愛い。

 名前は可愛いものの、見た目は可愛くない。何しろ元々はロボット警官隊の一員だったボディ。そこにAIがインストールされるのだ。ガスマスクのような顔。丸みが排除された細部。特徴のない黒。緊急時に変身するわけでも、特殊能力が隠されているわけでもない。ただし、耳(?)がある。ウサギみたい。さてはこれがチャームポイントか。

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June 12-14 2015, Weekend

◆6月第2週公開映画BUZZ


ジュラシック・ワールド “Jurassic World”
 配給:ユニヴァーサル
 監督:コリン・トレヴォロウ
 Budget:$190,000,000
 Weekend Box Office:$208,806,270(4274) Great!
 OSCAR PLANET Score:65.9
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚色賞
           主演男優賞:クリス・プラット
           主演女優賞:ブライス・ダラス・ハワード
           撮影賞、編集賞、美術賞、視覚効果賞録音賞音響効果賞、作曲賞

“Me and Earl and the Dying Girl”
 配給:フォックス・サーチライト
 監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン
 Budget:-
 Weekend Box Office:$196,496(15) Good!
 OSCAR PLANET Score:80.6 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           主演男優賞:トーマス・マン
           主演女優賞:オリヴィア・クック
           助演男優賞:RJ・サイラー
           助演男優賞:ニック・オファーマン

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赤と黒の誘惑

赤と黒の誘惑 “My Mistress”

監督:スティーヴン・ランス

出演:エマニュエル・ベアール、ハリソン・ギルバートソン、
   レイチェル・ブレイク、ソクラティス・オットー、リア・パーセル

評価:★★




 少年が年増女に憧れを抱き、そればかりか性的な手解きを受ける映画は少なくない。この場合、女が娼婦という設定は珍しくないものの、SMの女王様というのは聞いたことがない。しかも、女王様はエマニュエル・ベアールなのだ。ベアール様が少年を男たちを調教する。ひゃっほう!

 …というところから企画が始まったはずの『赤と黒の誘惑』は、全体を見渡してみれば、不敵さに欠けた筆下ろし映画だ。イメージを膨らませやすいベアールを真ん中に置きながら、大胆な逸脱はないに等しく、少年が女と精神的にも肉体的にも心を通わせることで成長するという定番を頑なに守る。ベアールがSMの女王様である必然性も全くないのに、何故小さくまとめているんだか。

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メイズ・ランナー

メイズ・ランナー “The Maze Runner”

監督:ウェス・ボール

出演:ディラン・オブライエン、トーマス・サングスター、アムル・アミーン、
   カヤ・スコデラーリオ、キー・ホン・リー、ウィル・ポールター、
   ブレイク・クーパー、ジェイコブ・ラティモア、
   クリス・シェフィールド、ジョー・アドラー、デクスター・ダーデン、
   カール・グリーン、ランドール・D・カニンガム、
   アレクサンダー・フローレス、パトリシア・クラークソン

評価:★★




 目が覚めると、高速の貨物エレヴェーターに乗せられている。記憶は消し去られ、自分の名前も憶えていない。辿り着く先にいるのは、自分と同じように運ばれてきた者たち。そしてそこは360度全方位、巨大な壁に囲まれている。しかも壁の向こうにはさらに巨大な迷路が広がる。果たして脱出できるだろうか。不条理な出足は、もはや懐かしくさえ思えるカナダ映画「CUBE」(97年)のようだけれど、どうやら『メイズ・ランナー』、目指すところは違うらしい。

 そこでは十代の少年たちがコミュニティを作っている。迷路にはトラップが仕掛けられ、下手に近づこうものなら命を落としてしまう。生き延びるためには「社会」を作らねばならない、ということだ。前半はコミュニティの様子が描かれ、ウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」を思わせる。少年俳優たちは「若造」という言葉がぴったりで、子どもだけしかいない風景が落ち着かない。それぞれの役割も大変大雑把に説明される。

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ラン・オールナイト

ラン・オールナイト “Run All Night”

監督:ジャウマ・コレット=セラ

出演:リーアム・ニーソン、エド・ハリス、ジョエル・キナマン、
   ヴィンセント・ドノフリオ、ニック・ノルティ、ブルース・マッギル、
   ジェネシス・ロドリゲス、ボイド・ホルブルック、コモン

評価:★★★




 困ったときのリーアム・ニーソン頼み。アイデアがないときは、とにかくニーソン(或いは同じような年齢の俳優)を暴れさせれば良い。そういう短絡的思考から企画が始まったとしか思えない作品が多い昨今。それに決着をつけるのは己しかいない。ニーソンがそう覚悟を決めたのか、『ラン・オールナイト』は暴走ニーソン映画の決定版のような映画だ。ニーソンと相性の良いジャウマ・コレット=セラが監督を手掛けるのが心強い。

 コレット=セラはまるで、「96時間」(08年)を俺ならこう撮るとばかりに挑戦的な設定に挑む。ニーソンが演じるのは落ちぶれたマフィアの殺し屋で、その彼が守るのは折り合いの悪い真面目な息子だ。娘を思うあまりに暴走機関車と化すだけで持たせる単純さを良しとせず、普通の家庭であっても複雑になりやすい父と息子の関係から目を逸らさない。

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ゼロの未来

ゼロの未来 “The Zero Theorem”

監督:テリー・ギリアム

出演:クリストフ・ヴァルツ、デヴィッド・シューリス、メラニー・ティエリー、
   ルーカス・ヘッジズ、マット・デイモン、ベン・ウィショー、
   ティルダ・スウィントン、グウェンドリン・クリスティー、
   ルパート・フレンド、レイ・クーパー、リリー・コール、
   サンジーヴ・パスカー、ピーター・ストーメア

評価:★★




 覚悟はしていたものの、物語がさっぱり分からない。クリストフ・ヴァルツ演じるひきこもりのプログラマーがゼロの定理なるものを解き明かそうとするところからして拒否反応が出るというのに、どこに向かっているのか話が一向に分からない。しかもコレ、明らかに意図的だ。

 そう言えばテリー・ギリアムはモンティ・パイソン出身なのだった。それを思うと『ゼロの未来』はこれまでで最もギリアムらしい作品と言えるのかもしれない。「未来世紀ブラジル」(85年)のアップ・トゥ・デイト エディションとして、ナンセンスを極める。もちろん話に入り込んでも良いのだろうけれど(そういう人もいるはずだ)、それよりも目の前に広がるカオスをそのまま体感することに専念するべきなのではないか。

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シグナル

シグナル “The Signal”

監督:ウィリアム・ユーバンク

出演:ブレントン・スウェイツ、オリヴィア・クック、
   ボー・ナップ、ローレンス・フィッシュバーン

評価:★★




 何よりもまず気になるのは、ブレントン・スウェイツのボーズ頭だ。いわゆるツルッパゲではない。ボーズの状態から一センチほど伸びたところで、一応「ヘアスタイル」の完成形のようなのだけど、どう優しい目で見ても中途半端だ。「ボーズは伸びかけがいちばん難しい」を実証する。スウェイツ、顔が良いのだから(若き日のイーサン・ホーク+ジョシュ・ハートネット÷2)、一分刈りでも十分似合うだろうに、あぁ、残念無念。

 そのスウェイツ、『シグナル』で大変な目に遭う。いきなり松葉杖を使わなければならない状態から始まり(おそらく一生)、遠くへ引っ越す恋人とぎくしゃくし、ハッカーにからかわれ、何者かに拉致され、そして…。物語の転調の具合が実に激しい。ふと思い出したのは、ブレイク前のクリス・ヘムズワースが出ていた「キャビン」(12年)だ。世間では傑作扱いされているのが不思議でならないアレ。

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June 5-7 2015, Weekend

◆6月第1週公開映画BUZZ


“Spy”
 配給:20世紀フォックス
 監督:ポール・フェイグ
 Budget:$65,000,000
 Weekend Box Office:$29,085,719(3711) Good!
 OSCAR PLANET Score:82.8 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本
           主演女優賞:メリッサ・マッカーシー
           助演女優賞:ローズ・バーン

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フランキー&アリス

フランキー&アリス “Frankie & Alice”

監督:ジェフリー・サックス

出演:ハル・ベリー、ステラン・スカルスガルド、フィリシア・ラシャド、
   チャンドラ・ウィルソン、ジェームズ・カーク、エイドリアン・ホームズ、
   ブライアン・マーキンソン、アレックス・ディアカン

評価:★★




 映画で多重人格が描かれるとき、大抵の場合、スリラーかコメディになる。人格が切り替わる際の謎に注目すればサスペンスが生まれるし、極端な変化に滑稽味を見出すことも(不謹慎ではあったとしても)可能だろう。『フランキー&アリス』はどちらも選ばない。実話を基にしていることが関係しているのか、解離性同一性障害に侵されたアフリカ系ストリッパーの過去を真面目に探る。

 けれど、真面目が良いとは限らない。多重人格に苦しむ女の物語と見せかけて、これは症例のひとつを紹介した映画だ。三十代半ばの女に多重人格の症状が表れ、精神病院に入院する。そこで出会った医師の力を借りて、その原因(と思われるもの)を追究する。ここにドラマが生まれない。症状を自覚した女が過去と向き合う、そこに行き着くまでの心の旅を描くならまだしも、大凡見当のつく方法で医師がそれに迫る様をスロウに見せることに終始する。それはそう、医療研修プログラムVTRの趣だ。

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ザ・トライブ

ザ・トライブ “Plemya”

監督:ミロスラヴ・スラボシュピツキー

出演:ヤナ・ノヴィコヴァ、グリゴリー・フェセンコ

評価:★★★




 セリフが出てこない映画は、ひっくり返るほどに珍しいものではない。キム・ギドクの「メビウス」(13年)やミシェル・アザナヴィシウスの「アーティスト」(11年)のような例があるし、喋ることができない人々が出てくる映画は少なくない。そもそも映画が生まれた直後はセリフどころか、音もなかったのだ。だから聾唖者の寄宿学校が舞台となるウクライナ映画『ザ・トライブ』にセリフが出てこないのは、まあ、当然の成り行きだろう。騒ぎ立てることではない。

 ただし、見せ方は秀でている。セリフがなければ表情で見せようというのが自然な流れだろうに、ここではそれがあっさり拒否される。カメラは積極的に顔を撮りに行くことがない。表情に音楽が被さることもない。生け捕りにされるのは、肉体そのものだ。役者の身体の動きを、僅かな揺れを逃すまいとほとんど固定されたカメラで凝視する。

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ブラックハット

ブラックハット “Blackhat”

監督:マイケル・マン
パソコンの壁紙を新しくする
出演:クリス・ヘムズワース、ワン・リーホン、タン・ウェイ、
   ヴィオラ・デイヴィス、リッチー・コスター、
   ホルト・マッキャラニー、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
シャツ ジョギング スニーカーとネクタイ 贈りたい
評価:★★★




 クリス・ヘムズワースが天才ハッカーに見えないのは欠点ではない。むしろ面白ポイントだ。マイケル・マンはヘムズワースをコンピュータ知識を具えた人間として見せることに、端から興味を寄せていない。ヘムズワース起用の理由は男臭いマンの世界にハマること、そして物語を支えるスケール持っていることに尽きる。それをクリアしたヘムズワースは、ヘムズワースのままでいれば良い。だってヘムズワースは目を覚ます度に半裸になりピカピカの身体をアピールするのだ。通常時もシャツの前を肌蹴ているのだ。刑務所でも壁を利用して難易度の高い腕立て伏せをキメるのだ。

 『ブラックハット』はマン映画らしく男たちの汗の匂いが濃い。電脳世界を大々的に取り上げながらしかし、それでもマンが信じるのは人間の肉体だ。男たちは身体を酷使することを厭わず、任務に身を捧げる。物言わぬやりとりには男だけにしか通じない言語が飛び交う。作中、最も熱い抱擁場面に女はいない。ヘムズワースとワン・リーホンの再会場面こそ、最も熱っぽい(同性愛の匂いは全くない)。

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Mommy マミー

Mommy マミー “Mommy”

監督:グザヴィエ・ドラン

出演:アンヌ・ドルヴァル、アントワーヌ=オリヴィエ・ピロン
   スザンヌ・クレマン、パトリック・ユアール、アレクサンドル・ゴイエット

評価:★★★




 「私たちにはそれしかない」と言う。私たちとは母と息子だ。それとは愛だ。『Mommy マミー』に出てくる母息子は、世間で言うところの「普通」とはちょっと違う。父の死後、息子は多動性障害(ADHD)と診断され、暴力を含む突拍子もない言動を繰り返す。奇しくもカナダではある法律が成立する。発達障害の子を持つ親が経済的困窮、身体的・精神的危機に陥った場合は、養育を放棄し施設に入院させる権利を保障するのだという。

 母は辛抱強く愛を示し続け、息子はそれを少しずつ感じることで穏やかになっていく…などという安全な気配は全くない。バラバラに砕けた硝子の破片が彼方此方に飛び、けれどそれを避ける隙間もなく、母と息子は傷を増やし続ける。ふたりの距離が遠いのではない。近いのだ。

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パロアルト・ストーリー

パロアルト・ストーリー “Palo Alto”

監督:ジア・コッポラ

出演:エマ・ロバーツ、ジャック・キルマー、ナット・ウルフ、
   ゾーイ・レヴィン、ジェームズ・フランコ、ヴァル・キルマー、
   クリス・メッシーナ、キーガン・アレン、クラウディア・レヴィ、
   タリア・シャイア、オリヴィア・クロシッチア

声の出演:フランシス・フォード・コッポラ

評価:★★★




 ジア・コッポラは名前から分かる通り、名門コッポラ一族のひとり。フランシス・フォード・コッポラは祖父、ソフィア・コッポラは叔母に当たるのだという。コッポラの血を感じさせるショットは少なくない。監督自身も意識しているのだろうか。『パロアルト・ストーリー』からはとりわけ、叔母の映画の細胞を捻出できそうだ。特に画面作りに顕著だ。

 光の切り取り方に独特の味がある。今時の高校生の日常風景を切り取った物語。それを映し出す風景の光そのものに、匂いがある。眩しい昼間の光だけではない。寂しげな夕暮れの光や、後ろめたさのある真夜中の光。人工的で悶々とした室内の光も、清らかさを漂わせる明け方の光もある。ただ、単純明快で明朗なだけの光は、どこにも見当たらない。

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May 29-31 2015, Weekend

◆5月第5週公開映画BUZZ


“Aloha”
 配給:コロンビア(ソニー)
 監督:キャメロン・クロウ
 Budget:$37,000,000
 Weekend Box Office:$9,670,235(2815) zzz...
 OSCAR PLANET Score:34.2 BIG BOMB!
 Razzie Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           主演男優賞:ブラッドリー・クーパー
           主演女優賞:エマ・ストーン
           助演男優賞:アレック・ボールドウィン
           助演男優賞:ビル・マーレイ
           助演女優賞:レイチェル・マクアダムス

カリフォルニア・ダウン “San Andreas”
 配給:ニューライン・シネマ
 監督:ブラッド・ペイトン
 Budget:$100,000,000
 Weekend Box Office:$54,588,173(3777) Great!
 OSCAR PLANET Score:49.1
 Oscar Potential:メイキャップ&ヘアスタイリング賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞

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クレイジー・ドライブ

クレイジー・ドライブ “Stretch”

監督:ジョー・カーナハン

出演:パトリック・ウィルソン、エド・ヘルムズ、ジェームズ・バッジ・デイル、
   クリス・パイン、ジェシカ・アルバ、ブルックリン・デッカー、
   デヴィッド・ハッセルホフ、レイ・リオッタ、ノーマン・リーダス

評価:★★★




 導入部、酒とコカインとギャンブルに塗れる主人公が紹介される。交通事故で車の外に放り出されても無傷。それをきっかけに美女と結婚。一年楽しくやるも、女が金持ち男に走ってお別れ。やけくそで俳優になろうとハリウッドを目指し、けれど今はリムジンの運転手。簡単に言えば、ハチャメチャな人生、ハチャメチャな人物だ。名をストレッチと言う。

 『クレイジー・ドライブ』は借金6,000ドルを返さなければならないストレッチの一夜を描く。ストレッチに見合ったとんでもない出来事が次々起こる。ギャングもチンピラも警察もFBIも奇人も怪人も入り乱れる。この夜はマイケル・マンが描くようには色っぽくない。けれど、悪夢という言葉の枠に収まらない愉快な混沌が溢れている。ジョー・カーナハンはそれを炙り出すことに全てを捧げている。

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インフェクション 感染

インフェクション 感染 “Parts Per Billion”

監督:ブライアン・ホリウチ

出演:フランク・ランジェラ、ジーナ・ローランズ、ロザリオ・ドーソン、
   ベン・バッジリー、テリーサ・パーマー、ジョシュ・ハートネット、
   アレクシス・ブレデル、ヒル・ハーパー

評価:★




 戦争時における生物兵器の使用がきっかけで世界中で感染症が蔓延、人類が死に絶えていくとき、世代の異なる三組のカップルが描かれる。スティーヴン・ソダーバーグ監督の「コンテイジョン」(11年)を連想するような設定だけれど、より近いのはラース・フォン・トリアー監督の「メランコリア」(11年)だろう。死が忍び寄る中、人々は何を思うのか。『インフェクション 感染』を覆い尽くすのは、憂鬱の気配だ。

 感染により人々が命を落としていく傍らにあるサスペンスは、ほとんど無視される。病院内の混乱や人々の病変、生き延びたいがゆえの略奪や暴動の描写はさらりと済まされる。代わりにスケッチされるのは、三組のカップルの、この期に及んでうだうだと人生を語る煮え切れない態度。憂鬱に魅力がなく、そこが「メランコリア」とは決定的に違う。

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フォーカス

フォーカス “Focus”

監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア

出演:ウィル・スミス、マーゴット・ロビー、ロドリゴ・サントロ、
   ジェラルド・マクレイニー、B・D・ウォン、アドリアン・マルティネス、
   ロバート・テイラー、ブレナン・ブラウン

評価:★★




 詐欺師を主人公にした映画は大変だ。詐欺師が騙すのは獲物だけではない。映画の観客も騙さなければならない。物語の見方をひっくり返してしまう大仕掛けが予め求められる。つまりはハードルは最初から高い。意地悪な観客は騙されまいと目を凝らし、そのからくりを見破ることに全力を注ぐ。健全な見方だとは思わないものの、まあ仕方ない。ウィル・スミスが天才詐欺師を演じる『フォーカス』はその点、どうもすっきりしない。

 いや、面白い場面がないわけではない。例えば、アメフトの祭典に沸くニューオーリンズを舞台に展開する前半は快調だ。スリの手口を皮切りに、視線の誘導や色仕掛け等、獲物を軽やかに騙す技が次々キマる。個人戦ではなく団体戦、それも二、三人どころではない、何十人もの詐欺師が一斉に動く作戦が展開され、それはもうひとつの「スパイ大作戦」の様相。明るい太陽の下、大勢の通行人が道行く中、悪びれることのない詐欺の花の狂乱の画。

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