良いお年を

 2014年、事件は起こりました。

 2000年にFILM PLANETを正式開設して以来、初めて更新がストップしました。それもFILM PLANET blogは2か月、OSCAR PLANETは5か月も…。そうすることについては自分なりに悩みましたが、正直なところ、無理に続けても良い方には転ばないと判断、思い切りました。この決断は良かったと思っています。精神的にとても楽になりました。このままフェイドアウトもありかもなぁ、なんて思いも頭を過ぎりましたが、ただ、しばらくするとやはりアレコレ言いたくなるようで、遂に再開。その後は今まで以上にマイペースに更新しています。

 多分、FILM PLANET blogもOSCAR PLANETもこれまでのような大量更新は難しいでしょう。例えば、毎年、前年のBEST&WORSTを選んでちょこちょこ文章を書いていましたが、それをやってのけるパワーと時間がなさそうなので、簡素に触れるだけに終わると思われます(選ぶことは選びます)。映画以外のバカ話を書く暇はないかもしれません。OSCAR PLANETの予想も簡単になるかもしれません。何より怖いのは、実は毎年既に終わっていた次シーズンのアカデミー賞予想(今年なら第88回アカデミー賞)がまだ一切始められていない点です。どう考えても例年のスケジュールには間に合いそうにありません。どうなるのでしょうか。

 2014年は個人的に色々なことがありました。夏からは謎の体調不良に見舞われ、今も実は万全ではなかったりします。でもまあ、何とか生きています。映画も観ています。音楽も聴いています。どう考えても良いとは思えない松た●子(女優としては絶好調)による「ありのままで」が絶賛されていたり、米●涼子が女優扱いされていたり、選挙結果に如実に表れる日本人のバランス感覚の悪さを周りが全然気にしている風でなかったり、犬の糞を100年ぶりに踏んでしまったり、眩暈を起こすことも世の中にはいっぱいありますが、でもまあ、何とか生きています。

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テーマ : ひとりごと
ジャンル : ライフ

パワー・ゲーム

パワー・ゲーム “Paranoia”

監督:ロバート・ルケティック

出演:リアム・ヘムズワース、ハリソン・フォード、ゲイリー・オールドマン、
   アンバー・ハード、ルーカス・ティル、エンベス・デヴィッツ、
   ジュリアン・マクマホン、ジョシュ・ホロウェイ、リチャード・ドレイファス

評価:★★




 「硝子の塔」(93年)のシャロン・ストーンは高級マンションの隠しカメラにより私生活を覗き見されていた。あれから20年、『パワー・ゲーム』のリアム・ヘムズワースはマンションどころか何時何処にいても、その言動をチェックされる。携帯電話・スマートフォンの進化がそれを実現する。本当にここまでできるのか否か、それを考えさせないままに物語は走る。この走りがどん臭いの何の。

 実は監視社会云々はさほど重要ではない。それを意識したサスペンスが散りばめられるものの、それはメインに置かれた題材からドラマを引き出せなかったため、安易な方向に逃げた結果だと考えるのが妥当だろう。実はこの映画、ふたつの大会社を舞台に企業スパイの実態を炙り出そうとした作品なのだ。多分。おそらく。きっと。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

デビルズ・ノット

デビルズ・ノット “Devil's Knot”

監督:アトム・エゴヤン

出演:リース・ウィザースプーン、コリン・ファース、デイン・デハーン、
   ミレイユ・イーノス、ブルース・グリーンウッド、イライアス・コティーズ、
   スティーヴン・モイヤー、アレッサンドロ・ニヴォラ、エイミー・ライアン

出演:★★




 1993年、とある田舎で起こった殺人事件が未だ語られ続ける。少年三人が森の中、全裸で縛られた状態で沼の中から発見されるという猟奇性もさることながら、真の解決がなされていないと考える人が多いからだろう。アトム・エゴヤンもそのひとりだ。

 エゴヤンはどんな解釈をするのだろうか。いちばんの興味はそこにあって当然なのだけど、残念、謎を散りばめるだけ散りばめて、放り投げてしまった。この映画からはエゴヤンの事件への思いが見えてこない。既に世に出ている情報を映像として見せることに終始する。思うに、実話であることに気を遣って(批判を恐れて)己の意見を封じるのであれば、最初から実話に手を出すべきではない。これでは再現ドラマ。エゴヤンが何故。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

December 19-21 2014, Weekend

◆12月第3週公開映画BUZZ


ホビット 決戦のゆくえ “The Hobbit: The Battle of the Five Armies”
 配給:ニューライン・シネマ
 監督:ピーター・ジャクソン
 Budget:$250,000,000
 Weekend Box Office:$54,724,334(3875) Good!
 OSCAR PLANET Score:60.0
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚色賞
           主演男優賞:マーティン・フリーマン
           撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞
           視覚効果賞、録音賞、音響効果賞、作曲賞、主題歌賞

ANNIE アニー “Annie”
 配給:コロンビア
 監督:ウィル・グラック
 Budget:$65,000,000
 Weekend Box Office:$15,861,939(3116)
 OSCAR PLANET Score:33.8 BIG BOMB!
 Oscar & Razzie Potential:作品賞、監督賞、脚色賞
           主演女優賞:クヮヴェンジャネ・ウォレス
           助演男優賞:ジェイミー・フォックス
           助演女優賞:キャメロン・ディアス
           録音賞、音響効果賞、主題歌賞

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

天才スピヴェット

天才スピヴェット “L'Extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet”

監督:ジャン=ピエール・ジュネ

出演:カイル・キャトレット、カラム・キース・レニー、
   ヘレナ・ボナム=カーター、ニーアム・ウィルソン、
   ジェイコブ・デイヴィーズ、ジュディ・デイヴィス、ドミニク・ピノン

評価:★★




 相変わらずジャン=ピエール・ジュネは凝り性だ。主人公の少年が暮らすモンタナの田舎の眺めからして、創り込んでいる。黄色と茶色をベースにした景色。赤茶色の壁とモスグリーンの屋根。そして白い窓枠の家。並べられる家具や食器、雑貨がいちいち可愛い。もちろん構図も独特だ。

 けれど『天才スピヴェット』、いつもに較べたらジュネ色は抑えられている方かもしれない。ひとつはアメリカを舞台にしているため(大半はカナダで撮影)。もうひとつは原作が存在するためだ。とりわけ後者の影響は大きいと見る。己の趣味・嗜好より原作を優先させたところが多かったのでは?

 少年は科学の天才で、スミソニアン博物館が絡んだ権威ある賞を受賞する。そのスピーチのためモンタナからワシントンDCへ大陸横断の旅に出る。それが中盤の見せ場だ。大きなスーツケースと母親の日記を抱えての一人旅。色々な人との出会いを機転を利かせながら乗り越えていくのが楽しい。大人たちが少年を変に子ども扱いして甘く見ないのが良い。特にヒッチハイクで乗せてくれた大型トラックのオッサンとの掛け合いが良い。オッサンがヒッチハイカーたちと写真を撮ることにしているのにニヤリ。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

6才のボクが、大人になるまで。

6才のボクが、大人になるまで。 “Boyhood”

監督:リチャード・リンクレイター

出演:エラー・コルトレーン、パトリシア・アークェット、
   イーサン・ホーク、ローレライ・リンクレイター

評価:★★★★




 キャスト全員が健康のまま出演できなくなる可能性があった。主役の少年がグレてしまうことが考えられた。資金問題が浮上する危険もあった。話の軌道修正は容易ではない。何より撮り直しを願っても、作品の性質上、それは不可能だ。それでもリチャード・リンクレイターは同じ俳優・スタッフと、12年間を生きることを選んだ。その年毎に作品を完成させる単発シリーズとは事情が違う。これは賭けだ。

 『6才のボクが、大人になるまで。』は舞台裏だけでドキュメンタリー映画が成立しそうだけれど、そこにこだわるのは面白くない。リンクレイターが提示する物語を感じることに専念するのが礼儀だろう。いや、意識などしなくてもそうさせてしまうのが非凡なところで、所謂映画的展開はほぼないに等しいのに、一瞬たりとも目が離せない場面の連続。胸を捉えて離さない、この何か。

 その正体は結局、「時間」という概念に尽きる。この世の中で数少ない誰にでも平等に手にできるもの、それこそが時間で、リンクレイターはその姿を3時間弱の中に切り取る。かけがえのないものであることは誰もが口にする。けれどそれを、「ドラゴンボール」や「ハリー・ポッター」、レディー・ガガ、イラク戦争、大統領選挙等ポップカルチャーや歴史的事件を散りばめ、一人の少年の成長を通して、しかも12年をかけて、映像として浮かび上がらせたフィルムメイカーはリンクレイターが初めてだろう。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの

グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの “Greetings from Tim Buckley”

監督:ダニエル・アルグラント

出演:ペン・バッジリー、イモジェン・プーツ、ベン・ローゼンフィールド、
   ノーバート・レオ・バッツ、フランク・ウッド、ジェシカ・ストーン、
   ウィリアム・サドラー、フランク・ベロ

評価:★★★




 TVシリーズ「ゴシップガール」(07~12年)の中でペン・バッジリーはフツーの高校生役だった。それもそのはずチェイス・クロフォードほどの美貌は持たず、エド・ウェストウィックほどに変態的でもない。強いて言うなら、額が広く、生え際がデンジャラスな童顔ボーイ、それがバッジリーだった。その彼がジェフ・バックリィを演じる。なるほど唯一のアルバム「Grace」(94年)のジャケット写真、右斜め下から見たとき、似ていなくもないか。

 バッジリーが類稀なる歌声とギターの才能を持つ伝説のシンガーに扮すると言っても、『グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの』は伝記映画ではない。1991年、若くして死んだティム・バックリィのトリビュート・コンサートがニューヨークの教会で開かれることになり、出演をオファーされた息子のジェフがほとんど会ったことのない父と向き合う様が描かれる。父と息子の関係は、ただでさえ難しい。それがティムとジェフ、天才親子となればさらに難しい。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

嗤う分身

嗤う分身 “The Double”

監督:リチャード・アイオアディ

出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、
   ヤスミン・ペイジ、ノア・テイラー、ジェームズ・フォックス、
   フィリス・サマーヴィル、ジョン・コークス、スーザン・ブロンマート、
   クリス・オダウド、パディ・コンシダイン

評価:★★★★




 原作はヒョードル・ドストエフスキーの「分身」。しかし匂いとしては、フランツ・カフカ的世界観が濃いと思う人が多いのではないか。主人公は7年も務めているのに存在感ゼロの会社員。顔も名前も覚えてもらえず、想いを寄せる女にも奥手を極める。その彼の前に自分と正反対の性格の、双子以上に似た容姿の青年が現れる。

 その正体を探る必要はない。筋を追いかけることに執着するべきでもない。ただ、奇怪な状況に置かれた主人公を眺め、その不条理に怒り、滑稽味を笑い、哀愁を感じさえすれば、それで良い。『嗤う分身』はそういう映画だ。

 繰り広げられる不可思議な出来事は主人公を動揺させるものの、演出はそれを無視して、速度を緩めない。リズムを作る編集と撮影の呼吸が面白いの何の。おそらく光はほとんどが人工照明。暗がりを照らすような画面が続く。それを独特のペースで切り貼りし、しかもそこに被さるのは日本の60年代歌謡だ。ナニソレ。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

ザ・ゲスト

ザ・ゲスト “The Guest”

監督:アダム・ウィンガード

出演:ダン・スティーヴンス、マイカ・モンロー、リーランド・オーサー、
   シーラ・ケリー、ブレンダン・マイヤー、チェイス・ウィリアムソン、
   ランス・レディック、ジョエル・デヴィッド・ムーア

評価:★★★




 ハロウィン・シーズンの田舎町、兵士の長男をイラク戦争で亡くして悲しみに暮れる家族を、長男の友人で同僚だった青年が訪ねる。紳士的で優しい物腰の男はしかし、ある秘密を抱えている。

 好青年が実は…という設定はよくあるパターンでも、『ザ・ゲスト』は退屈とは無縁、一定の緊張感に貫かれる。監督が「サプライズ」(11年)のアダム・ウィンガードと聞けば、納得できる。ウィンガードの演出には楽しいアイデアが詰まっているけれど、結局のところ、最も物を言うのは、その根底に敷かれたB級精神だ。

 ウィンガードは金をかけた装飾の代わりに、的確な映像と意表を突いた展開を用意する。アクション場面における生々しい音響や、漫画になる一歩手前にまで踏み込んだスローモーションと構図。バックに心音のように流れる電子音。青年が不埒者を懲らしめる話に見えて、突如軍云々が出てきて話を豪快に回転させる度胸もある。

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テーマ : 映画感想
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December 12-14 2014, Weekend

◆12月第2週公開映画BUZZ


“The Captive”
 配給:A24
 監督:アトム・エゴヤン
 Budget:-
 Weekend Box Office:-
 OSCAR PLANET Score:30.4 BIG BOMB!
 Razzie Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           主演男優賞:ライアン・レイノルズ

エクソダス:神と王 “Exodus: Gods and Kings”
 配給:20世紀フォックス
 監督:リドリー・スコット
 Budget:$140,000,000
 Weekend Box Office:$24,115,934(3503)
 OSCAR PLANET Score:40.4
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           主演男優賞:クリスチャン・ベール
           助演男優賞:ジョエル・エドガートン
           撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞
           メイキャップ&ヘアスタイリング賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞、作曲賞

“Inherent Vice”
 配給:ワーナー・ブラザース
 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
 Budget:$20,000,000
 Weekend Box Office:$328,184(5) Great!
 OSCAR PLANET Score:75.9
 Oscar Potential:作品賞監督賞脚色賞
           主演男優賞:ホアキン・フェニックス
           助演男優賞:ジョシュ・ブローリン
           助演男優賞:ベニチオ・デル・トロ
           助演男優賞:マーティン・ショート
           助演男優賞:オーウェン・ウィルソン
           助演女優賞:キャサリン・ウォーターストン
           助演女優賞:リース・ウィザースプーン
           撮影賞、編集賞、美術賞衣装デザイン賞
           録音賞、音響効果賞、作曲賞

“Top Five”
 配給:パラマウント
 監督:クリス・ロック
 Budget:$10,000,000
 Weekend Box Office:$6,894,814(979)
 OSCAR PLANET Score:83.8 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           主演男優賞:クリス・ロック
           主演女優賞:ロザリオ・ドーソン


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テーマ : 映画情報
ジャンル : 映画

サボタージュ

サボタージュ “Sabotage”

監督:デヴィッド・エアー

出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、サム・ワーシントン、
   オリヴィア・ウィリアムス、テレンス・ハワード、ジョー・マンガニエロ、
   ハロルド・ペリノー、マーティン・ドノヴァン、マックス・マーティーニ、
   ジョシュ・ホロウェイ、ミレイユ・イーノス、ケヴィン・ヴァンス、
   マーク・シュレーゲル、モーリス・コンプト、マイケル・モンクス

評価:★★




 アガサ・クリスティの推理小説の中でも人気の高い「そして誰もいなくなった」を下敷きにしているのだという、『サボタージュ』は。登場人物が一人また一人と消えていくところからそう謳ったのだろうけれど、あまりにも無理がある。アーノルド・シュワルツェネッガー、身体が動かないなら頭を動かそう。それを狙って失敗した映画にしか見えない。

 政治家から復帰したシュワルツェネッガーは足腰が弱ったことがあからさまで痛々しい。髪に白いものが多くなったことは関係ない。引きのショットで全身を映したときの老人特有の腰回りのだぶつきと下に伸びた足の貧弱さが問題だ。いくらジムで身体を鍛えている場面を入れようと、上半身の厚みを強調しようと、あぁ、人は誰しも老いには勝てないのだと思い知らされる。クリント・イーストウッドはそれを受け入れた上での佇まいで役柄に挑むから未だに格好良いのだけど…。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

ガンズ&ゴールド

ガンズ&ゴールド “Son of a Gun”

監督:ジュリアス・エイヴァリー

出演:ユアン・マクレガー、ブレントン・スウェイツ、
   アリシア・ヴィキャンデル、ジャセック・コーマン、
   マット・ネイブル、トム・バッジ、デイモン・ヘリマン、
   エディ・バルー、ナッシュ・エドガートン

評価:★★★




 ここ10年ほど注目の金相場と、ここに描かれる犯罪が金塊強盗であることは全くの無関係ではないだろう。強盗一味はしかも、精錬所を襲う。案外映画では取り上げられてこなかったのは、金が採れる場所が限られるからだろうか。『ガンズ&ゴールド』はオーストラリアが舞台だ。

 華麗なる犯罪計画を期待してはいけない。綿密な計画性というものは、最初から放棄されている。手口の紹介は最小限で済まされ、それどころか雑に見える部分が多い。金の重さや溶ける性質等を絡めたトリックが出てきても良さそうなものなのに。

 とは言え、別に見ものとなるものは用意されている。第一にユアン・マクレガー。元々笑顔に狂気を秘めていたマクレガーが、頭の切れる犯罪者を演じる。もうすっかり中年に入っているマクレガーはしかし、未だに洗練とは程遠い佇まい。革ジャンやジーンズ、スニーカーのシーンが多い。髭を生やせばキーファー・サザーランド風だし、引きのショットになるとスタイルの悪さが目につく。それにも関わらず、思い浮かぶ言葉は「カリスマ」というやつだ。

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ニンフォマニアック Vol.2

ニンフォマニアック Vol.2 “Nymphomaniac: Vol. II”

監督:ラース・フォン・トリアー

出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、
   ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、ジェイミー・ベル、
   クリスチャン・スレーター、ウィレム・デフォー、ミア・ゴス、
   ソフィ・ケネディ・クラーク、ジャン=マルク・バール、ウド・キアー

評価:★★




 『ニンフォマニアック Vol.2』の一発目の見せ場は、12歳の少女だった頃のヒロインが、遠足で出かけた丘でオーガズムを経験するところだ。身体が宙に浮かび、ふたりの女神に見守られるサーヴィス付きだ。…と書けば明白だろう。「Vol.1」に引き続きヒロインはヤッてヤッてヤリまくる。

 「Vol.1」との最大の違いはヒロインが大人になってからの描写が大半を占めることで、すなわち脱ぐのはステイシー・マーティンに代わってシャルロット・ゲンズブールだ。若い娘には負けないわよと気合いを入れたゲンズブールが潔く脱ぐ、脱ぐ、脱ぐ!

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マダム・マロリーと魔法のスパイス

マダム・マロリーと魔法のスパイス “The Hundred-Foot Journey”

監督:ラッセ・ハルストレム

出演:ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニシュ・ダヤル、
   シャルロット・ルボン、ミシェル・ブラン

評価:★★★




 車の故障をきっかけに立ち寄った南フランスで、インド人一家が衝動的に家を購入する。「トスカーナの休日」(03年)のダイアン・レインと同じタイプの思い切り方。物語の構造も、どっこい似ている。故国を離れた者が新しい土地で新しい自分に出会うのだ。フィールグッド・ムービーの王道パターン。

 序盤は一家がレストランの経営が軌道に乗るまで、その過程の楽しさで魅せる。何もないところに新しい何かが作られる。それを眺めるのは愉快なものだ。思い込んだら一直線オヤジのオム・プリを中心に、インドパワーがおフランスのお上品な空気を突破する。

 それに待ったをかけるのが、向かいにある一つ星フレンチレストランを経営するヘレン・ミレンで、この二店の対立が中盤の見所になる。インドはプリ、フランスはミレンがボスだ。両者のやり合いが、買収だとか食材の買い占めだとか盗撮と言った幼稚なものなのにがっくり来る。ラッセ・ハルストレムよ、どうしたんだ。騒がしいインドレストランを結婚式と勘違いした客にミレンは言う。「お葬式です。この町の品格が死んだのです」。このウィットを大切にして欲しかった。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

美女と野獣

美女と野獣 “La belle et la bête”

監督:クリストフ・ガンズ

出演:ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥー、アンドレ・デュソリエ、
   エドゥアルド・ノリエガ、ミリアム・シャルラン、オドレイ・ラミー、
   サラ・ジロドー、ジョナサン・ドマルジェ、ニコラ・ゴブ、
   ルーカス・メリアーヴァ、イヴォンヌ・カッターフェルト

評価:★★




 『美女と野獣』の物語は何と言っても、ディズニー・アニメーション(91年)が有名だけれど、実は原作はフランスの民話なのだという。ディズニー版からもう20年以上経つ(声量自慢に走る前のセリーヌ・ディオンのあの楽曲からも20年。早い)。ならば本家の力を見せてくれよう。そうしてこの映画は出来上がった。指揮を執るのはクリストフ・ガンズだ。

 野獣に扮するのがヴァンサン・カッセルという点にまず、突っ込みを入れる。大半を特殊メイクの毛むくじゃらで登場するカッセルは、何とフツーの人間でいるときの方が野獣っぽいのだ。一度見たら忘れられぬ野獣性が、デビュー時から際立っていたカッセル。メイクをしたときの方が人形みたいで可愛らしい。そのまま売り出せそうじゃないか?

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

December 5-7 2014, Weekend

◆12月第1週公開映画BUZZ


“Wild”
 配給:フォックス・サーチライト
 監督:ジャン=マルク・ヴァレー
 Budget:-
 Weekend Box Office:$654,058(21) Great!
 OSCAR PLANET Score:84.6 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞監督賞脚色賞
           主演女優賞:リース・ウィザースプーン
           助演女優賞:ローラ・ダーン
           撮影賞、編集賞、録音賞、音響効果賞、作曲賞

“Dying of the Light”
 配給:ライオンズゲイト
 監督:ポール・シュレイダー
 Budget:-
 Weekend Box Office:-
 OSCAR PLANET Score:23.6 BIG BOMB!
 Razzie Potential:主演男優賞:ニコラス・ケイジ
           助演男優賞:アントン・イェルチン

“Comet”
 配給:IFCフィルムズ
 監督:サム・エスメイル
 Budget:-
 Weekend Box Office:-
 OSCAR PLANET Score:44.4
 Oscar Potential:None

“Life Partners”
 配給:マグノリア
 監督:スザンナ・フォーゲル
 Budget:-
 Weekend Box Office:$2,665(8) zzz...
 OSCAR PLANET Score:62.2
 Oscar Potential:None

“Miss Julie”
 配給:リーキンヒル・エンターテイメント
 監督:リヴ・ウルマン
 Budget:-
 Weekend Box Office:-
 OSCAR PLANET Score:48.1
 Oscar Potential:主演男優賞:コリン・ファレル
           主演女優賞:ジェシカ・チャステイン
           助演女優賞:サマンサ・モートン
           美術賞衣装デザイン賞

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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション “The Expendables 3”

監督:パトリック・ヒューズ

出演:シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、
   アントニオ・バンデラス、ジェット・リー、ウェズリー・スナイプス、
   ドルフ・ラングレン、ケルシー・グラマー、テリー・クルーズ、
   ランディ・クートゥア、ケラン・ラッツ、ロンダ・ラウジー、
   グレン・パウエル、ヴィクター・オルティス、ロバート・ダヴィ、
   メル・ギブソン、ハリソン・フォード、アーノルド・シュワルツェネッガー

評価:★★




 シルヴェスター・スタローンを中心にしたアクション・スター同窓会プロジェクトの三作目は、ウェズリー・スナイプスの救済から始まる。脱税によりホンマモンの刑務所に入っていたスナイプスを護送列車から救い出すという茶目っ気。なんちゅーか、ここまで来ると、物語の退屈さを指摘するのはナンセンスのように思えてくるから不思議。

 「お前がムショに入っても助けに行く」というセリフがある。要するに「俺は決して仲間を見捨てはしない。共に苦難を乗り越えよう」ということだ。スタローンは青い少年のまま、今に至る。「バカにする奴はバカにすれば良い。でも、俺は一生このままで行くぜ」みたいな。何だかスタローンの人間の器が大きく見える。…のは気のせい。多分。

 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』にはスナイプスの救出以上に大きな救済が仕掛けられる。もちろんメル・ギブソンだ。私生活のトラブルによりハリウッドから(と言うかアメリカ・全世界から)孤立してしまったギブソンを悪役に設定し、存分に暴れさせる。善玉グループに入れるより気が利いている。観る方もすんなり受け入れられる。スタローン、ナイス・アイデア!

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テーマ : 映画感想
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ドラキュラZERO

ドラキュラZERO “Dracula Untold”

監督:ゲイリー・ショア

出演:ルーク・エヴァンス、ドミニク・クーパー、サラ・ガドン、
   ディアミッド・ミルタ、アート・パーキンソン、チャールズ・ダンス、
   ポール・ケイ、ウィリアム・ヒューストン、ノア・ハントリー、
   ロナン・ヴィバート、ザック・マッゴーワン

評価:★★




 ルーク・エヴァンスには時代物が良く似合う。ごつごつした戦闘服が馴染んでいるし、馬との相性も良い。壮大な美術には難なく溶け込み、階級がはっきりした社会に紛れ込んでも息苦しさを感じさせない。逆に言うなら、カジュアルな現代物にはフィットしない。フィルモグラフィに時代物が目立つのも当然のような気がする。『ドラキュラZERO』の主演も、なるほど納得だ。

 エヴァンスはドラキュラのモデルと言われる実在の男に扮する。オスマン帝国庇護下にあるトランシルヴァニアの君主で、家族や多くの民を守るため、山奥の洞窟に住む魔物の血を飲むことで、闇の力を手に入れる。エヴァンス特有の影がドラキュラに合っている。ただし、気品は足りない。エヴァンスのせいというより、演出の問題ではないか。ドラキュラの創り込みが弱い。

 闇の力を手にしたエヴァンスは、聴力や視力が研ぎ澄まされる。「スパイダーマン」(02年)にもこんなシーンがあったなぁと思い出していると、エヴァンスは突如、陸上選手のように山の中を駆け始める。そのとき姿が無数のコウモリへと変わる。肉体的パワーももちろん手に入れるものの、最も強力な力を見せるのはコウモリに変身したときで、アクションがその繰り返しになってしまったのがお粗末だ。

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ジャンル : 映画

イコライザー

イコライザー “The Equalizer”

監督:アントワン・フークワ

出演:デンゼル・ワシントン、クロエ・グレース・モレッツ、
   マートン・ソーカス、デヴィッド・ハーバー、ビル・プルマン、
   メリッサ・レオ、ヘイリー・ベネット、ジョニー・ソコーティス

評価:★★★




 序盤のデンゼル・ワシントンが可笑しい。口数は少ないが、穏やかな口調。バリカンにより自分で仕上げたボーズ頭。年齢相応に出始めた腹。シャツはきちんとズボンにイン。黙々とこなす皿洗い。電車通勤で、勤め先はホームセンター。ユニフォームはエプロン。つまりどこにでもいるフツーのオッサンなのだ。しかし、ワシントンがフツーのオッサンで終わるわけがない。その正体は…。

 そう、『イコライザー』のワシントンは結局強い。娼婦の少女を半殺しの目に遭わせたロシア系マフィアに怒りを爆発させたことを皮切りに、眠っていた血が暴れ出し、正義の鉄槌を次々下す。その様を「仕事人」と形容するのは簡単だけれど、そのスマートな物腰はワシントン特有のもので、並の俳優が真似できるものではない。フツーのオッサンにも最強の男にも瞬時になれる鮮やかさにワシントンの器の大きさを見る。

 最強の男は戦いにルールを課す。最初は紳士的な会話からスタート。武器は持たず、その場にあるに日用品や工具を的確に活用。腕時計をストップウォッチ代わりにして数秒で敵を仕留める。状況を分析するカットはTVシリーズ「シャーロック」(10年~)風に処理され、ストップウォッチが押されてからはまるでダンスでも踊るかのようなリズムで華麗に「仕事」をキメていく。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

第72回ゴールデン・グローブ賞 ノミネーション予想

※この文章は、アカデミー賞専門サイトOSCAR PLANETのために書いたものの転載になります[先行公開]。




 ゴールデン・グローブ賞がアカデミー賞に与える影響が年々薄まっている。近年よく聞かれることです。

 仕方ないことなのかもしれません。アカデミー賞授賞式の開催が2月になってからはノミネーションの発表が早まり、GG賞が発表されるときには既にオスカーのノミネーション投票が終わっています。以前はGG賞発表後もオスカーのノミネーション投票締め切りまで若干時間があったため、GG賞結果がオスカー・ノミネーションに与える影響は小さくありませんでした。とりわけコメディ作品はGG賞に救われることが多かったと思われます。

 GG賞以外にも映画賞の発表が増え続けているのもGG賞のパワー低下に繋がっています。90年代には各組合賞の授与が始まり、21世紀に入ってからはブロードキャスト映画批評家協会賞が大々的な授賞式を行うようになりました。批評家賞は毎年のように増え続けています。今シーズンはハリウッド映画祭から独立したハリウッド映画賞が初めて授賞式をTVでその模様を中継。今後、ますます大きな祭典になっていくことが考えられます。注目度の分散は避けられません。

 けれど、それでもゴールデン・グローブ賞なのです。一流レストランのシェフが用意した料理を楽しみながら行われる授賞式は、スター寄りの選考に加えて、ミュージカル/コメディ部門やTV部門も用意されていることからオスカー以上にヴァラエティに富んだスターたちが集まります。オスカーで見るのは難しいスターもGG賞なら大丈夫。酔っ払って壇上に上がり、思いがけない表情を見せるスターが多いのも特徴と言って良いかもしれません。そう、それでもゴールデン・グローブ賞はオスカーに続く大きな映画の祭典なのです。今後、どれだけ映画賞が増えても、GG賞がGGであり続ける限り、長く愛されていくことでしょう。

 今回はティナ・フェイ&エイミー・ポーラーがホストを務める最後の授賞式です。どんなジョークが飛び出すのか、今から楽しみです。そんなこんなで今年も全く深く考えず、主要9部門のノミネート予想をしてみました。



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テーマ : 映画関連ネタ
ジャンル : 映画

ヘラクレス

ヘラクレス “Hercules”

監督:ブレット・ラトナー

出演:ドウェイン・ジョンソン、イアン・マクシェーン、ルーファス・シーウェル、
   ジョセフ・ファインズ、ジョン・ハート、レベッカ・ファーガソン、
   アクセル・ヘニー、イングリッド・ボルゾ・ベルダル、リース・リッチー

評価:★★★




 ギリシャ神話で伝えられるヘラクレスと言えば、「12の難業」が有名。『ヘラクレス』はその内のいくつかをいきなり描き出す。9つの首を持つ大蛇や人食いイノシシ、そして巨大なライオン(獅子)との対決がそれだ。つまりここに描かれるのは、ヘラクレスの、知られざる物語だ。そして、ドウェイン・ジョンソンを通してヘラクレスを描くことが最も重要なポイントになる。

 ジョンソンのヘラクレスはハーフゴッドという設定ではあるものの、ほとんど人間に近い。しかも時代は紀元前という言葉が飛び出すほどに大昔。必然的にアクションはアナログになる。すなわちジョンソンの血管が浮き出るほどの筋肉隆々のボディが存分に生かされるわけだ。ただし、神話の世界でもあるから、アクション映画全盛の80年代、90年代的なケレンがたっぷり振りかけられる。どこか懐かしいのは気のせいではないだろう。

 ユーモアが忘れられない。脇のキャラクターも笑いを誘うものの、何と言っても、ジョンソンの愛敬がその源になっている。もう少しで落ち武者になりそうな長髪を意外にも馴染ませ(ニコラス・ケイジやジェイソン・ステイサムとはそこが違う)、戦いに対してシヴィアな姿勢を貫き、妻子を亡くす辛い過去に苦悩しても、それでもなお隠せないジョンソンのチャーム。獅子の頭をフード代わりにするスタイルが似合い過ぎる。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

November 28-30 2014, Weekend

◆11月第5週公開映画BUZZ


“Before I Disappear”
 配給:IFCフィルムズ
 監督:ショーン・クリステンセン
 Budget:-
 Weekend Box Office:-
 OSCAR PLANET Score:41.2
 Oscar Potential:None

“The Imitation Game”
 配給:ワインスタイン・カンパニー
 監督:モルテン・ティルドゥム
 Budget:$15,000,000
 Weekend Box Office:$479,352(4) Great!
 OSCAR PLANET Score:78.9
 Oscar Potential:作品賞監督賞脚色賞
            主演男優賞:ベネディクト・カンバーバッチ
            助演女優賞:キーラ・ナイトレイ
            撮影賞編集賞美術賞衣装デザイン賞
            メイキャップ&ヘアスタイリング賞、作曲賞

“Horrible Bosses 2”
 配給:ニューライン・シネマ
 監督:ショーン・アンダース
 Budget:$42,000,000
 Weekend Box Office:$15,457,418(3375)
 OSCAR PLANET Score:39.1
 Razzie Potential:作品賞監督賞脚本賞
            主演男優賞:ジェイソン・サダイキス
            助演男優賞:ケヴィン・スペイシー
            助演男優賞:クリストフ・ヴァルツ
            助演女優賞:ジェニファー・アニストン

“Penguins of Madagascar”
 配給:ドリームワークス
 監督:エリック・ダーネル、サイモン・スミス
 Budget:$132,000,000
 Weekend Box Office:$25,447,444(3764)
 OSCAR PLANET Score:61.4
 Oscar Potential:アニメーション映画賞


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テーマ : 映画情報
ジャンル : 映画

誰よりも狙われた男

誰よりも狙われた男 “A Most Wanted Man”

監督:アントン・コービン

出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、グレゴリー・ドブリギン、
   レイチェル・マクアダムス、ロビン・ライト、ウィレム・デフォー、
   ニーナ・ホス、ダニエル・ブリュール、ホマユン・エルシャディ

評価:★★★★




 「裏切りのサーカス」(11年)に続くジョン・ル・カレのスパイ小説の映画化になる。…そんなわけで『誰よりも狙われた男』は至極地味な作りだ。ジェームズ・ボンドもイーサン・ハントもジェイソン・ボーンも出てこない、現実のスパイワールド。挿入されるアクションは僅か。占めるのは頭脳を駆使しての、静かなる戦いだ。必要とされるのは知恵。そして忍耐力。

 舞台はドイツのハンブルク。チェチェンから密入国した青年を追うテロ対策チームの勝負。できるところをどんどん省いた物語は、その筋を辿ることに専念しては楽しめないかもしれない。これはその細部を味わう映画だからだ。

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テーマ : 映画感想
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グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 “Grace of Monaco”

監督:オリヴィエ・ダアン

出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、
   パス・ヴェガ、ジャンヌ・バリバール、マイロ・ヴィンティミリア、
   パーカー・ポージー、デレク・ジャコビ

評価:★★




 グレース・ケリー、何と美しく響く名前だろう。ケリーを眺める度に思うことだ。しかし、エレガンスを絵に描いたようなケリーについて、最も的を射た表現を残したのはアルフレッド・ヒッチコックだ。「雪に覆われた山だ。しかし、その山は活火山なのだ(a mountain covered with snow, but that mountain was a volcano)」。そのケリーをニコール・キッドマンが演じる。

 あまりに似ていない。キッドマンを活火山に例えることは可能でも、雪を被っているタイプの女優ではない。心配の方が断然大きい『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』はしかし、ケリーとキッドマンの容姿の違いはさほど重要ではない。化粧と髪型で何とか違和感がないくらいには似せてきているし、そもそも内容が伝記と呼べるものではないからだ。

 1961年から翌年にかけて、フランスと緊張感ある関係にあるモナコが、ケリーの機転により窮地を切り抜ける様を描く政治色の強い作りなのだ。ケリーがヒッチコックから「マーニー」(64年)出演のラヴコールを受けるエピソードを絡めながら、彼女がどんな映画よりも大きな役柄を演じのける様を見つめる。私生活でもある意味女優であり続けることを強いられたケリーの苦悩。それこそがドラマティック!…ということらしい。

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テーマ : 映画感想
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FRANK フランク

FRANK フランク “Frank”

監督:レニー・アブラハムソン

出演:ドーナル・グリーソン、マイケル・ファスベンダー、
   マギー・ギレンホール、スクート・マクネイリー、
   フランソワ・シヴィル、カーラ・アザール

評価:★★★




 そのバンドのリードヴォーカルの名はフランクと言う。ファミリーネームは不明。彼は張りぼてのお面を被っている。常に、だ。寝るときも食べるときも風呂に入るときも…つまり彼は四六時中お面を装着しての生活を選ぶ。これは…かなりデリケートな設定だ。

 どうしてお面を被り続けるのか。デリケートさが求められるのは、その謎ゆえではない。よほど繊細に処理しないと、彼のキワモノ的存在感に寄りかかることに甘えた、インテリを装ったニセモノに堕ちてしまう…という意味でのデリケートさの要求が漏れなくついてくるからだ。キワモノをエンジンにして物語を動かすことで、愚鈍に見える危険を抱えている。

 『FRANK フランク』がそれを切り抜けられたのは、フランクにぶつける人々もまた、どこかネジが緩んだりズレたりした感性で生きている設定にしたためだろう。フランクは外見のインパクトゆえに目を引く。けれど、一歩引いて見れば、彼の心の隙間に潜り込む田舎の青年ドーナル・グリーソンも、フランクに仲間以上のシンパシーを感じているマギー・ギレンホールも、突飛な行動に走るマネージャーのスクート・マクネイリーも、皆、フランクと同じくらい人生に足掻き、それぞれが奇異な空間の中で生きている。

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