ザ・ヘラクレス

ザ・ヘラクレス “The Legend of Hercules”

監督:レニー・ハーリン

出演:ケラン・ラッツ、スコット・アドキンス、リアム・マッキンタイア、
   リアム・ギャリガン、ジョナサン・シェック、ロクサンヌ・マッキー、
   ガイア・ワイス、ラデ・シェルベッジア、ルーク・ニューベリー

評価:★★




 ケラン・ラッツと言ったら「トワイライト」(08~12年)のヴァンパイア役が有名なのだろうか。けれど、映画の中で動く俳優としてより、その肉体のご立派さそのものの方が、人の目に焼きついているのではないかと思う。ファッション雑誌のグラビアで見せる、筋骨隆々のピカピカの身体。それこそがラッツの武器だ。だから、出演作の大半がアクションになるのも必然で、その肉体を自慢しなければ、ラッツだと気づかれないかもしれない。

 そうしてラッツが選んだのはヘラクレス役だ。昨今はギリシャ神話がもてはやされているし、「300<スリーハンドレッド>」(07年)以降マッチョ拝跪の傾向はますます強まっている。ミックスしてラッツの肉体美を拝もうではないか。『ザ・ヘラクレス』は簡単に言えば、そういう映画だ。

 実際、ラッツは身体を相当鍛えて役に臨んでいる。半裸場面が多いのはもちろん、戦闘服に身を包んでも露出が多め。あの二の腕に挟まれたい(何を?)ととち狂う女の方々も少なくないと思われる。この際思い切り大根演技なのも、泣き顔がジミー大西なのも大目に見ようじゃないか。

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October 24-26 2014, Weekend

◆10月第4週公開映画BUZZ


おやすみなさいを言いたくて “1,000 Times Goodnight”
 配給:フィルム・ムーヴメント
 監督:エリック・ポッペ
 Budget:-
 Weekend Box Office:$24,120(24) zzz...
 OSCAR PLANET Score:63.2
 Oscar Potential:主演女優賞:ジュリエット・ビノシュ

“Citizenfour”
 配給:ラディアス-TWC
 監督:ローラ・ポイトラス
 Budget:-
 Weekend Box Office:$125,000(5) Good!
 OSCAR PLANET Score:93.8 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞脚本賞ドキュメンタリー映画賞

“John Wick”
 配給:ライオンズゲイト
 監督:チャド・スタエルスキ
 Budget:-
 Weekend Box Office:$14,415,922(2589)
 OSCAR PLANET Score:73.2
 Oscar Potential:主演男優賞:キアヌ・リーヴス
           撮影賞、編集賞、録音賞、音響効果賞、作曲賞

“Laggies”
 配給:A24
 監督:リン・シェルトン
 Budget:-
 Weekend Box Office:$74,139(5)
 OSCAR PLANET Score:67.1
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞、
           主演女優賞:キーラ・ナイトレイ
           助演男優賞:サム・ロックウェル
           助演女優賞:クロエ・グレース・モレッツ

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アイ・フランケンシュタイン

アイ・フランケンシュタイン “I, Frankenstein”

監督:スチュアート・ビーティ

出演:アーロン・エッカート、ビル・ナイ、イヴォンヌ・ストラホフスキー、
   ミランダ・オットー、ソクラティス・オットー、
   ジェイ・コートニー、ケヴィン・グレイヴォー

評価:★★




 幼少期に刻まれたフンガーフンガーというフランケンシュタインのイメージが排除されたのはもちろん、ジェームズ・ホエール監督の「フランケンシュタイン」(31年)を観たときだ。そこには恐ろしくも哀しい怪物の姿があり、それこそがフランケンシュタイン(の怪物)だと認識するのは容易かった。『アイ・フランケンシュタイン』はその怪物が戦士として現代にもまだ生きていたという設定だ。名作への敬意はほぼないに等しい。

 アーロン・エッカートは確かに怪物役に相応しく見える。四角い顔の輪郭は、ふむ、怪物のイメージ通りだ。このベースがあるのなら、外見だけでいくらでも遊べそうだ。ところが、そうして現れたエッカートが、単に顔が傷だらけのオッサンだったからべっくらこく。アイデンティティに関する悩み云々がほのめかし程度に済まされているのも勿体ないけれど、とにかく外見の創り込みが弱いのが痛い。日本のヤクザでもこれぐらいの傷、持ってるのでは?

 200年以上も放浪の旅を続けてきた怪物が、天使と悪魔の抗争(実際は天使が人間を守っているという設定)に巻き込まれ、思いがけずヒーローになる。このとんでもシチュエーションを用意する余裕があるのに、怪物はトレーナーにジーンズ、フード付きコートで暴れ回るだけで、ちっともカッコ良くないのだ。こうすると顔の傷はチープなファッションに見えるし、動きが早いのもイメージの逸脱がかえってダサい。目周りを暗く塗る化粧はナルシスト臭を強調する。それこそフンガーフンガーの方がマシ。

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NO ノー

NO ノー “No”

監督:パブロ・ラライン

出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カステロ、
   アントニア・セヘルス、ルイス・ニェッコ、マルシアル・ダグレ、
   ネストル・カンティジャーナ、ハイメ・バデル、パスカル・モンテーロ

評価:★★★




 1988年、長らく続いていたチリの独裁政権が終わりを迎える。国際社会の圧力により、政権の信任を問う国民投票が行われた結果だ。出来レースに過ぎないと思われていたのに、何故。そのきっかけとなったのが、アウグスト・ピノチェト政権の反対派である「NO」陣営によるTVコマーシャルを使ったキャンペーンだったというのが面白い。NO派は血を流すことなく、国民の意思を示すことに成功した。『NO ノー』はその模様を綴る。

 一見公平な選挙に見えながら、社会には政権からの強大な圧力がかけられている。しかもCMは僅か15分、それも深夜放送に限られる。いかに効率的なCMを作ることができるかが鍵になる。当然興味はCMの内容に移るわけだけれど…。

 そうしたらこれが、案外フツーの内容で拍子抜けしてしまった。切々と現実の痛みを訴えるよりも、ユーモアを投入して選挙に目を向けさせる、意識を高める方法論で、確かに有効に見えるものの、斬新さからはかけ離れているのだ。これぐらいも許されなかった時代だったと読み取るべきだと承知しつつ、えっ、これで人を動かせるの?…と意地悪く思ってしまう。

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イヴ・サンローラン

イヴ・サンローラン “Yves Saint Laurent”

監督:ジャリル・レスペール

出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、
   ローラ・スメット、マリー・ドゥ・ヴィルパン、ニコライ・キンスキー、
   マリアンヌ・バスレール、グザヴィエ・ラフィット、
   アレクサンドル・スタイガー、ミシェル・ガルシア、オリヴィエ・パジョット

評価:★★




 呼び物は言うまでもなく、イヴ・サン・ローラン財団によって貸し出されたコレクションの数々だ。新作の発表の場がホテルの一室でしかなかった頃から、サン・ローランの才能は抜きん出ていた。次々登場するドレスが有無を言わせぬままに目を奪う。サン・ローランの作品は今も生き続けている。

 『イヴ・サンローラン』はブランドが公認した映画で、だからこそ貴重な作品の多くを拝めるわけだけれど、これは実は手放しで喜んではいられない部分でもある。イメージを大切にするがあまり、故人を美化した内容になりがちなのが伝記映画だからだ。けれど意外にも、この点は難なくクリアされている。サン・ローランを過剰に美しく見せようという気配は微塵もない。むしろ彼の弱さをたっぷり炙り出す。

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フルスロットル

フルスロットル “Brick Mansions”

監督:カミーユ・ドゥラマーレ

出演:ポール・ウォーカー、ダヴィッド・ベル、RZA、
   カタリーナ・ドゥニ、グーチー・ボーイ、アイーシャ・イッサ、
   カルロ・ロタ、リチャード・ジーマン、ロバート・メイレット、
   ブルース・ラムゼイ、フランク・フォンテイン

評価:★★★




 いきなりオープニング場面のアクションに釘付けになる。ダヴィッド・ベルという聞き慣れぬ俳優が繰り出すアクションが愉快痛快なのだ。生身の身体こそが最良の武器とばかりに、格闘技よりも曲芸に近い動きで、画面を素早く突っ切っていく。壁、階段、手摺、電線、マットレス…手の届くところにあるものをまるで自分の身体の一部であるかのように操るのが素晴らしい。コミカルな要素4割、ドラマティックでクールな要素6割…といったバランス。あぁ、映画というものは肉体を眺める芸術なのだと改めて思う。

 聞けばこのベル、『フルスロットル』のオリジナルであるフランス映画「アルティメット」(04年)でも同じ役を演じていたらしい。10年以上の前の映画になるけれど、ということはもしかしたら当時は今よりも動きがキレていたのかもしれない。ベルのアクションにはパルクールが取り入れられているのだという。パルクールは特別な道具を用いることなく、街中にある建物や壁などの障害物を乗り越えたり素早い動きを見せるスポーツ。そしてベルこそがパルクールの発展に大いに貢献した人物らしい。街中でこの動きをやられたら、むしろ迷惑な気もするけれど、でも確かにまあ、クールな見栄えだ。

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フライト・ゲーム

フライト・ゲーム “Non-Stop”

監督:ジャウマ・コレット=セラ

出演:リーアム・ニーソン、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ドッカリー、
   ルピタ・ニョンゴ、スクート・マクネイリー、ネイト・パーカー、
   ジェイソン・バトラー・ハーナー、アンソン・マウント、コリー・ストール、
   オマー・メトワリー、ライナス・ローチ、シェー・ウィガム

評価:★★★




 リーアム・ニーソンのアクション・スターぶりにはすっかり慣れた。もはやニーソン映画は、どこでニーソンがぶっ飛んだ行動に出るかがポイントであることが、暗黙の了解になってしまったくらいに。これはあまり歓迎すべきことではない。だから作り手は当然、設定を捻ることになる。『フライト・ゲーム』はニューヨークからロンドンへ向かう飛行機の中が舞台のアクション・スリラーだ。

 高度何千メートルかの空を行く飛行機の中は巨大な密室であり、そこには地上にはないルールが存在する。登場人物は限られ、従って推理物では犯人が絞られ、席が隣り合う関係で距離感は短くなり、銃の使用は制限され、狭い中でのアクションを余儀なくされ、地上とのやりとりは頼りない。その上に味つけがなされ、それが個性となる。

 航空保安官であるニーソンの元に犯人から「1億5,000万ドルを送金しなければ、20分毎に乗客を一人ずつ殺す」というメールが入る。犯人は誰だ?…という最も基本的な謎を軸に、時代を反映させたサスペンスが散りばめられる。インターネット、スマートフォン、YouTube、テロリズム、9.11…。今の映画を作ろうという意思がチラリ。

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October 17-19 2014, Weekend

◆10月第3週公開映画BUZZ


“The Best of Me”
 配給:リラティヴィティ・メディア
 監督:マイケル・ホフマン
 Budget:$26,000,000
 Weekend Box Office:$10,003,827(2936)
 OSCAR PLANET Score:22.4 BIG BOMB!
 Razzie Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
            主演男優賞:ジェームズ・マースデン
            主演女優賞:ミシェル・モナハン

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) “Birdman”
 配給:フォックス・サーチライト
 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
 Budget:-
 Weekend Box Office:$424,397(4) Great!
 OSCAR PLANET Score:88.7 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞監督賞脚本賞
           主演男優賞:マイケル・キートン
           助演男優賞:エドワード・ノートン
           助演女優賞:エマ・ストーン
           助演女優賞:ナオミ・ワッツ
           撮影賞編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞音響効果賞作曲賞

“The Book of Life”
 配給:20世紀フォックス
 監督:ホルヘ・R・グティエレス
 Budget:$50,000,000
 Weekend Box Office:$17,005,218(3071)
 OSCAR PLANET Score:75.7
 Oscar Potential:アニメーション映画賞

“Camp X-Ray”
 配給:IFCフィルムズ
 監督:ピーター・サトラー
 Budget:$1,000,000
 Weekend Box Office:$1,316(1) zzz...
 OSCAR PLANET Score:57.9
 Oscar Potential:主演女優賞:クリステン・スチュワート

フューリー “Fury”
 配給:コロンビア
 監督:デヴィッド・エアー
 Budget:$68,000,000
 Weekend Box Office:$23,702,421
 OSCAR PLANET Score:71.8
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞
           主演男優賞:ブラッド・ピット
           助演男優賞:シャイア・ラブーフ
           助演男優賞:ローガン・ラーマン
           撮影賞編集賞美術賞、メイキャップ&ヘアスタイリング賞、
           視覚効果賞、録音賞音響効果賞作曲賞

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カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇

カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇 “Camille Claudel 1915”

監督:ブリュノ・デュモン

出演:ジュリエット・ビノシュ、ジャック=リュック・ヴァンサン、
   ロベール・ルロワ、エマニュエル・カウフマン、マリオン・ケレール

評価:★★★




 フランスの女流彫刻家カミーユ・クローデルを描いた映画なら、サイボーグ化する前のイザベル・アジャーニが主演を務めた「カミーユ・クローデル」(88年)が有名。『カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇』ではジュリエット・ビノシュが同じクローデル役に挑む。アジャーニとビノシュ、まるで似ていないふたりが同じ役を演じる摩訶不思議。けれど、意外なほど違和感はない。同じ人物が主人公と言っても描く時代が異なっていて、こちらは精神病院に入れられてからのクローデルに焦点を当てる。入院後の彼女は容貌がすっかり変わってしまったという話もある。

 それに憑依型女優の代表であるビノシュが、今回は演技を抑えに抑えている。声を荒らげる場面もあるにはあるものの、演技の巧さを前面に押し出すことはなく、ほとんどないに等しい物語の中に沈み込んでいる。すっぴんを恐れず、髪はボサボサ、身体はブヨブヨで、頼んでみないのにヌードも披露、灰色の入院着が似合い過ぎる。最初こそ、世間はこういう思い切った役作りを女優魂だと讃えるのだろうかと憂鬱になるものの、その他の場面のビノシュは女優というより、「演技の巧い素人」の佇まいだ。悪くない。

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ケープタウン

ケープタウン “Zulu”

監督:ジェローム・サル

出演:オーランド・ブルーム、フォレスト・ウィテカー、
   コンラッド・ケンプ、ジョエル・カイエンベ、インゲ・ベックマン、
   ティナリー・ヴァン・ウィック・ルーツ、レガルト・ファンデン・ベルフ、
   パトリック・リスター、タニア・ヴァン・グラーン

評価:★★★




 南アフリカの中でも邦題にある『ケープタウン』が舞台になっている点がミソだ。南アと言うと、どうしてもアパルトヘイト政策のイメージが強い。撤廃されて20年経ってなお、悪しき政策が及ぼす影は消えてなくならない。だから南アという言葉を耳にしただけで反射的に身構える。ところが、ここに出てくるケープタウンは思う以上に表情が豊かだ。美しさに胸を打たれる画すら出てくる。

 南アを代表する都市であるケープタウンは立法府が置かれているほどに大都市であると同時に、さらに別の顔を多数隠し持っている。少し奥に行けば貧民街があるし、スラムも目立つ。彼方を向けば海が広がっているし、此方を眺めれば緑を湛えた森が佇んでいる。真っ白な砂漠は果てしなく続きそうに美しく、そして恐ろしくもある。街の多面性が画面にメリハリをつける。

 このユニークな都市を装飾するのが、前述のアパルトヘイトが残した闇であるわけだ。貧困に喘ぐ人々。それでも抜けない差別意識。明らかなる教育の不足。栄えるアンダーグラウンド。飛び交う暴力。メリハリある街の表情から翳りが取れることは、決してない。異様とも言える空間が広がるのも当然か。それを見逃さなかったこと、それこそがこの映画のいちばんの手柄だ。

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LUCY ルーシー

LUCY ルーシー “Lucy”

監督:リュック・ベッソン

出演:スカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン、チェ・ミンシク、
   アムール・ワケド、アナリー・ティプトン、ジュリアン・リンド=タット、
   ヨハン・フィリップ・アスベック、ピルー・アスベック

評価:★★




 今更ながら、スカーレット・ヨハンソンがアクション向きだと気づいたマーヴェルは偉い。「アベンジャーズ」(12年)ワールドのブラック・ウィドウ役のヨハンソンは、芸術映画のとき以上に美しく輝いている。リュック・ベッソンもそれに気づいたひとりだ。『LUCY ルーシー』はベッソンがヨハンソンに捧げたようなアクション映画で、彼女が綺麗でカッチョイイのだから、それで良しと開き直って大暴走。さすがヨハンソン、相変わらずオヤジを転がせたら世界一。

 ヨハンソンに捧げられた設定が、実にバカバカしくて良い。人間の脳は10%ほどしか動いておらず、しかし、ヨハンソンはあるドラッグを体内に注入されたことをきっかけに、そのパーセンテージをどんどん上昇させていく。それに従い、ヨハンソンは無敵のスーパーウーマンへと大変身。野暮ったいハスッパ姉ちゃんでしかなかった冒頭からどんどん洗練されていく過程が楽しい。ベッソンじゃなくても、強く美しい女は男たちの大好物なのだ。もちろんヨハンソンはそんなことを合点承知、クールな顔を崩さず飛ばす飛ばす。

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クローズド・サーキット

クローズド・サーキット “Closed Circuit”

監督:ジョン・クローリー

出演:エリック・バナ、レベッカ・ホール、シアラン・ハインズ、
   リズ・アーメッド、アンヌ=マリー・ダフ、ケネス・クラナム、
   デニス・モシットー、ジュリア・スタイルズ、ジム・ブロードベント

評価:★★★




 ロンドンの商業地区で大規模なテロが起こる。画面がどんどん分割されていき、遂に爆発が起こるまでの緊迫感が、大人っぽくて悪くない。『クローズド・サーキット』はこの緊迫感を味わう映画なのではないか。社会派の趣もあるし、娯楽的な要素も散りばめられる。しかし、意外なほど空気感そのものに魅力を具えている。

 物語のポイントになるのは、ふたりの弁護士だ。エリック・バナが直接の弁護人、レベッカ・ホールが特別後見人と呼ばれるポジションに置かれる。とりわけ後者が鍵だ。特別後見人は事件に関する全ての情報に触れられるものの、他人との一切の接触を禁じられる。事件が重要性を増せば増すほど、その立場が危険に晒されることは容易に想像できる。

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プロミスト・ランド

プロミスト・ランド “Promised Land”

監督:ガス・ヴァン・サント

出演:マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、
   ローズマリー・デウィット、ハル・ホルブルック、ベンジャミン・シーラー、
   テリー・キニー、タイタス・ウェリヴァー、ティム・ギニー、
   ルーカス・ブラック、スクート・マクネイリー

評価:★★




 マット・デイモン演じる主人公は巨大な天然ガス会社に勤める幹部候補だ。物語はその彼が農場以外に何もない田舎に狙いを定めて、貧困に喘ぐ地元民から土地を安く買収しようとする様を追いかける。これだけで何やら退屈そうな気配が漂う。主人公はそこで出会った人々との掛け合いにより、38歳にして価値観を揺さぶられてしまうわけだ。ガス・ヴァン・サントが手掛けるべき題材でもないだろう。

 『プロミスト・ランド』の脚本はデイモンとジョン・クラシンスキーによるもので、ヴァン・サントはそれをとにかく大切にして演出を心掛けたようだ。こういうときのヴァン・サント映画は拙い。雇われ監督と言わないまでも、題材への熱量が不足するのか、毒気を失うことに伴い尖がった味が薄くなり、無個性に近づくのだ。下手ではない。けれど、無難にまとめた匂いが濃くなる。

 田舎町は二つに割れる。巨大会社に土地を売って大金を獲得、楽な生活を手に入れようとする側と、環境破壊への懸念から土地の譲渡を頑なに拒む側だ。デイモンもクラシンスキーも、そしてもちろんヴァン・サントもバカではないから、どちらかに肩入れして捌くような真似はしない。理想と現実は簡単に溶け合うものではない。この姿勢は正解だろう。

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October 10-12 2014, Weekend

◆10月第2週公開映画BUZZ


“Addicted”
 配給:ライオンズゲイト
 監督:ビリー・ウッドラフ
 Budget:-
 Weekend Box Office:$7,485,346 GOOD!
 OSCAR PLANET Score:22.8 BIG BOMB!
 Oscar Potential:None

“Alexander and the Terrible, Horrible, No Good, Very Bad Day”
 配給:ディズニー
 監督:ミゲル・アテタ
 Budget:$28,000,000
 Weekend Box Office:$18,360,230
 OSCAR PLANET Score:63.4
 Golden Globe Potential:作品賞
                主演男優賞:スティーヴ・カレル

ドラキュラZERO “Dracula Untold”
 配給:ユニヴァーサル
 監督:ゲイリー・ショア
 Budget:$70,000,000
 Weekend Box Office:$23,514,615 GOOD!
 OSCAR PLANET Score:32.6 BIG BOMB!
 Oscar Potential:視覚効果賞

“The Judge”
 配給:ワーナー・ブラザース
 監督:デヴィッド・ドブキン
 Budget:$50,000,000
 Weekend Box Office:$13,116,226
 OSCAR PLANET Score:53.6
 Oscar Potential:作品賞、監督賞、脚本賞、
           主演男優賞:ロバート・ダウニー・ジュニア
           助演男優賞:ロバート・デュヴァル

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イントゥ・ザ・ストーム

イントゥ・ザ・ストーム “Into the Storm”

監督:スティーヴン・クォーレ

出演:リチャード・アーミテイジ、サラ・ウェイン・キャリーズ、
   マット・ウォルシュ、アリシア・デブナム=ケアリー、
   アーレン・エスカーペタ、マックス・ディーコン、
   ネイサン・クレス、ジェレミー・サンプター、リー・ウィテカー、
   カイル・デイヴィス、ジョン・リープ

評価:★★★




 アメリカには竜巻を追いかけて研究する仕事(ストーム・チェイサー)があるのだと知ったのはもちろん、「ツイスター」(96年)だ。今となってはヘレン・ハントが出演を後悔しているに違いない二流のディザスタームービーだけれど、同じ竜巻を取り上げているからと言って、『イントゥ・ザ・ストーム』を二番煎じ映画としてバカにしてかかるのは勿体ない。

 「ツイスター」など比べ物にならないほど巨大な竜巻が登場、それを映像として提示するのだから、当然その視覚効果には金がかかる。ありとあらゆるものを飲み込んでいく怪物を安っぽく見せては、その時点で観客の興味は失せるだろう。おそらく5,000万ドルらしい製作費の大半はその再現にかけられている。だからその他の部分は、金では補えない何かでカヴァーしなければならない。その何かを見つけるのはB級映画の宿命で、そう、この映画はB級映画として、なかなかのガッツを見せる。

 例えば、自ら進んで怪物に近づくストーム・チェイサーを愚か者として描かないガッツ。窮地に陥るのは自業自得だと斬り捨てるのではなく、ある種の高揚感に包まれた彼らの、その執着や維持こそが時代を繋いでいくことが見えてくる。竜巻対策が施された特別装甲車はその象徴だ。

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ラスト・ダイヤモンド 華麗なる罠

ラスト・ダイヤモンド 華麗なる罠 “Le dernier diamant”

監督:エリック・バルビエ

出演:イヴァン・アタル、ベレニス・ベジョ、ジャン=フランソワ・ステヴナン、
   アントワーヌ・バズラー、ジャック・スピエセル、アニー・コルディ、
   ミシェル・イスラエル、イサカ・サワドゴ

評価:★★




 冒頭の盗み場面が、いきなり捨身だ。ホテルの一室に入るために泥棒が、酔っ払って閉め出されたことを装い、素っ裸の状態で従業員に助けを求めるのだ。女の方ならば、主演がロバート・デ・ニーロ化著しいイヴァン・アタルであることを残念に思うだろう。もっと活きの良い若手を用意してくれ、と。何が哀しくてアタルの弛んだ尻なんか…。

 けれど、この場面を見れば『ラスト・ダイヤモンド 華麗なる罠』がどんな線を狙っているのかは、明白だ。「粋」というやつだ。おフランス映画らしい軽妙さを塗し、ロマンスを絡めたオシャレな犯罪劇。男が泥棒で、女が高額ダイヤモンドのオーナー。ファッション誌のグラビアのような画面。雨の中の掛け合い。ジャズが似合う照明。ゆったりとくねる紫煙。金持ちが集まるオークション会場。さあ、最後に笑うのは誰だ?

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ライフ

ライフ “Mary and Martha”

監督:フィリップ・ノイス

出演:ヒラリー・スワンク、ブレンダ・ブレッシン、サム・クラフリン、
   フランク・グリロ、ジェームズ・ウッズ、ラックス・ヘイニー=ジャーディン

評価:★★




 WHOの発表によると、年間3億~5億人がマラリアに感染し、その内150万~270万人が死んでいるとのこと。『ライフ』の製作目的はその事実を世間に知らしめるところにあるように見える。映画に何を求めるか、それは人によって違うだろうけれど、啓蒙的なものが前面に出てくる映画は息苦しい。それならドキュメンタリーにするか、他の媒体を使って学べば良い。

 ヒラリー・スワンクとブレンダ・ブレッシン演じるふたりの主人公は、どちらも愛する息子をマラリアで亡くす。アフリカで出会った彼女たちはその哀しみを乗り越え、マラリアから子どもたちを守るべく活動を始める。大変立派なことだけれど、担当議員に会いに行き、予算員会で発言し、それがメディアで報道されるまでの描写が実にあっさりしたもので、そこに映画的な面白さは皆無だ。

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バトルフロント

バトルフロント “Homefront”

監督:ゲイリー・フレダー

出演:ジェイソン・ステイサム、ジェームズ・フランコ、ウィノナ・ライダー、
   ケイト・ボスワース、レイチェル・レフィヴレ、クランク・グリロ、
   クランシー・ブラウン、イザベラ・ヴィドヴィッチ

評価:★★★




 どうやらジェイソン・ステイサムは最近、髪を伸ばすことに凝っているようで、『バトルフロント』でもオープニング場面は長髪スタイルだ。同じハゲ仲間のニコラス・ケイジを参考にしているのかもしれない。まあ、ステイサムの場合、ケイジとは違って全編を長髪で過ごすことがないのは有難い。そうじゃないと、気が散って仕方がないだろう。

 長髪は似合わないステイサムはしかし、子役と一緒の場面は意外なほど似合っている。俳優は子どもとの相性が良い者とそうでない者に分けられる。ステイサムは前者だ。悪漢を睨みつける眼差しとはまるで違う柔らかな眼差しが、子どもに優しく注がれる。ルイジアナの湿気交じりの光の中で、美しい温か味を感じさせる。新境地とは言わないまでも、ステイサムと子役が一緒に入る画にはホッとするものがある。

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ファイティング・タイガー

ファイティング・タイガー “Man of Tai Chi”

監督・出演:キアヌ・リーヴス

出演:タイガー・チェン、カレン・モク、ユエ・ハイ、
   イコ・ウワイス、サイモン・ヤム

評価:★★★




 誤解を恐れずに言うなら、キアヌ・リーヴスから知性のようなものを感じたことはない。常にどこかヌケていて、でもそれが彼の良いところだ。不器用さを隠せない直情型の人の好さこそが、彼の持ち味だ。でもその彼に監督なんて務まるのだろうか。ファンだからこそ不安は大きくなるばかり。そうして出来上がった『ファイティング・タイガー』は、そのまんまリーヴスという人間が反映されたような映画だ。全く巧くないものの、その素直さが魅力になっている。

 リーヴスが選んだのは格闘技のジャンルだ。主人公のタイガーは北京で太極拳を学んでいて、世話になる寺の保存のための資金を各地の格闘技大会で稼いでいる。リーヴスが「マトリックス」(99年)で華麗なるアクションを見せたことを思い出す。きっとその頃から、このプロジェクトに対する思いは漠然と募っていたのではないかと察する。リーヴスは主人公を自分で演じない賢さを見せる。本場の達人たちに敵うわけがないと気づいたのだろう。視覚効果や編集でごまかしくたくないという意思も感じる。

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October 3-5 2014, Weekend

◆10月第1週公開映画BUZZ


“Annabelle”
 配給:ニューライン・シネマ
 監督:ジョン・レオネッティ
 Budget:$650,000
 Weekend Box Office:$37,134,255 GREAT!
 OSCAR PLANET Score:39.5
 Oscar Potential:None

ゴーン・ガール “Gone Girl”
 配給:20世紀フォックス
 監督:デヴィッド・フィンチャー
 Budget:$61,000,000
 Weekend Box Office:$37,513,109 GREAT!
 OSCAR PLANET Score:83.4 BIG WAVE!
 Oscar Potential:作品賞監督賞
           主演男優賞:ベン・アフレック
           主演女優賞:ロザムンド・パイク
           脚色賞撮影賞編集賞録音賞音響効果賞作曲賞

“The Good Lie”
 配給:ワーナー・ブラザース
 監督:フィリップ・ファラルドー
 Budget:-
 Weekend Box Office:$841,422
 OSCAR PLANET Score:76.1
 Oscar Potential:作品賞、監督賞
           主演女優賞:リース・ウィザースプーン
           脚本賞

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テーマ : 映画情報
ジャンル : 映画

俺たちスーパーマジシャン

俺たちスーパーマジシャン “The Incredible Burt Wonderstone”

監督:ドン・スカーディノ

出演:スティーヴ・カレル、スティーヴ・ブシェーミ、ジム・キャリー、
   オリヴィア・ワイルド、アラン・アーキン、ジェームズ・ガンドルフィーニ、
   ジェイ・モア、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ、メイソン・クック、
   ルーク・ヴァネク、ザッカリー・ゴードン、デヴィッド・カッパーフィールド

評価:★★




 スティーヴ・カレルが本人に見えない。色黒にして目化粧を加え髪の毛の色を明るくしただけで、まるで別人。鼻のご立派感が強調され、目力も倍増、何だかアル・パチーノ風だ。言われなければカレルだと気づかない人もいるかもしれない。ただ、面白い顔なのは結局、スティーヴ・ブシェーミだ。最近はTVシリーズ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」(10年~)で軽妙にして濃厚な芝居を見せるブシェーミだけれど、映画に戻ればホレ、いつも通りきょろきょろおどおど。そのまま異星人役をイケそうな突き抜けたアーバン臭が可笑しいの何の。やはり天然が最強だ。主役でなくても良いからもっと映画で観たい人。

 『俺たちスーパーマジシャン』のブシェーミは主人公カレルの相棒役だ。子どものときに手品に魅せられ、今やラスヴェガスを代表するイリュージョニストであるふたりの友情がベースに敷かれた物語になっている。それにも関わらず、ブシェーミが巧く使われているとは言い難い。アレコレ手を出してブシェーミに割く時間が少なくなってしまったのが、いちばんの原因だ。特にライヴァル役にジム・キャリーを「抜擢できてしまった」ことが拙かった。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

トランスフォーマー ロストエイジ

トランスフォーマー ロストエイジ “Transformers: Age of Extinction”

監督:マイケル・ベイ

出演:マーク・ウォルバーグ、ニコラ・ペルツ、ジャック・レイナー、
   スタンリー・トゥッチ、リー・ビンビン、タイタス・ウェリヴァー、
   ソフィア・マイルズ、T・J・ミラー

声の出演:ピーター・カレン、フランク・ウェルカー、ジョン・グッドマン、
   渡辺謙、ロバート・フォックスワース、ジョン・ディマジオ

評価:★




 前三作からキャストが一新されていることから察するに、シリーズは仕切り直しということなのだろう。機械生命体には続投組もちらほらいるものの、人間は新参者で占められる。けれど、キャストを新しくしたからと言って、新しい映画ができるわけではない。マイケル・ベイはそれに気づかなかったらしい。『トランスフォーマー ロストエイジ』でこれまでと同じことを繰り返す。即ち、破壊だ。

 ベイに美学というものがあるとするなら、極めて単純明快だ。画面に出てくるものを片っ端から爆発するのだ。今回は恐竜を絶滅に追い込むことから始まり、ものの数分で家やロボット、道路やトウモロコシ畑が次々破壊されていく。今回の活躍メンバーのひとりかと思われたある人物が真っ黒焦げになって死ぬ場面で呆れは頂点に達する。破壊するだけではサスペンスは生まれない。

 金がかかっていることは分かる。ベイは出し惜しみなんて嫌いだから、抑揚を放棄して派手な画面作りに賭ける。破壊場面における視覚効果の大量投入こそ、ベイという監督を良く表している。ただ、基本が爆発にあるものだから、いくら炎が燃え上がっても画面から熱は感じない。アクションの主役は視覚効果であり、人間は添え物でしかない。

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我が家のおバカで愛しいアニキ

我が家のおバカで愛しいアニキ “Our Idiot Brother”

監督:ジェシー・ペレッツ

出演:ポール・ラッド、エリザベス・バンクス、ゾーイ・デシャネル、
   エミリー・モーティマー、スティーヴ・クーガン、ヒュー・ダンシー、
   キャスリーン・ハーン、ラシダ・ジョーンズ、シャーリー・ナイト、
   T・J・ミラー、アダム・スコット

評価:★★★




 子どもの心を持つ大人…という形容には警戒心を抱いた方が良い。特に映画の中では。単に非常識であること、愚かであること、下品であることを、そう言い包めようとする場合が大半だからだ。『我が家のおバカで愛しいアニキ』の主人公ネッドも際どいところだ。制服を着た警官に縋られ、あっさりマリファナを売り、逮捕されてしまう男。頭がよろしくないと斬り捨てられてもおかしくない。ポール・ラッドはしかし、その純真さを嘘臭く見せない。これは全く重要なことだ。

 何しろ物語はネッドと三人の妹たちの関係を描いたもので、彼の本質が頑丈でないと全く別の印象になってしまう。面白いのは家族の温かさよりも煩わしさに注意が向けられているところだ。全く別の境遇に置かれた妹たちは一見、兄に振り回されているだけのようだ。不倫が明らかになり、仕事はコケ、恋人との仲はぎくしゃくする。けれど実際は、彼を都合良く扱っている。利用している。逃げ場にしている。そのくせ窮地に陥ると、それを兄のせいにする。蔑みも隠さない。

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サンシャイン 歌声が響く街

サンシャイン 歌声が響く街 “Sunshine on Leith”

監督:デクスター・フレッチャー

出演:ピーター・ミュラン、ジェーン・ホロックス、
   ジョージ・マッケイ、アントニア・トーマス、フレイア・メイヴァー、
   ケヴィン・ガスリー、ジェイソン・フレミング

評価:★




 アフガニスタン、若い兵士たちを乗せた装甲車が砂漠の砂利道を行く。この車内でのパフォーマンスが最初のミュージカル・シークエンスだ。嫌な予感が過ぎる。悲劇的な出来事を羅列しながら、それを明るく溌剌とした歌で吹き飛ばそうとする映画ではないか。或いは敢えて明るく描くことで哀しみを殊更強調する映画ではないか。予感は外れるわけだけれど、まだその方がマシだったかもしれない。『サンシャイン 歌声が響く街』では、ほとんど何も起こらない。

 いや、もちろんストーリーはあるし、登場人物は思い悩む。けれど、浮上するそれらに、特別語るべき価値があるとは到底思えない。スコットランドの美しい田舎の日常を切り取り、そこに何がしかの真実を見つめようという気配はない。日常を大袈裟に騒ぎ立てただけとするのが正しい。

 騒ぎを大きくするのは女たちで、彼女たちが動く度にゲンナリさせられる。夫の大昔の過ちと25年間の結婚生活を天秤にかける妻。やることはやっているのにプロポーズまでした男に「友達」という言葉をあっさり投げ掛ける娘。行動の一場面だけを受け取って過剰に責め立てるその友人。その身勝手さに無視を決め込んで、むしろ常識的な考えだと言い包める手口に閉口する。男たちはあっさり言い負かされる。

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男と女 真夜中のパリ

男と女 真夜中のパリ “After”

監督:ジェラルディーヌ・マニエ

出演:ジュリー・ガイエ、ラファエル・ペルソナーズ、ブリサ・ローシェ、
   バカリー・サンガレ、マリー・ジリ・ピエール

評価:★★




 女が雨除けのために入った寿司屋で、男と女は出会う。このときの女の態度がとんでもない。魚が苦手で、生は特に駄目。ピザが食べたいから、デリバリーを頼もうかしら。魚臭さを消したいと、禁煙なのに煙草に火をつける。店を陰気な食堂と形容する。はっ倒したろか…と思わず前のめりになるものの、どうやら男はそんな女に惚れたらしい。彼女を一晩中口説き続けるのだ。

 出会ったばかりの男女が行動を共にするというのは、まるで「恋人までの距離」(95年)みたいだ。大きな違いはフランス映画『男と女 真夜中のパリ』のふたりは、ある程度の人生経験を積んでいるという点か。ガキには分からない大人の掛け合いが見られるかもしれないという期待はしかし、あっさり裏切られる。ヌーヴェルヴァーグへの無意味な敬意が単なる気取りとして表れる。

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スパイラル 危険な関係

スパイラル 危険な関係 “The Details”

監督:ヤコブ・アーロン・エステス

出演:トビー・マグワイア、エリザベス・バンクス、ローラ・リニー、
   ケリー・ワシントン、レイ・リオッタ、デニス・ヘイスバート

評価:★★★




 何ともまあ、恐ろしい話だ。コーエン兄弟やサム・ライミが嬉々として手掛けそうな不条理劇。妻との関係が倦怠期に突入している医師に次々降りかかる不幸。アリ地獄の巣にハマっていくのに例えることも可能だけれど、物語を考えれば、芝生を狙って荒らすアライグマの穴に堕ちていくと見るのが妥当だろう。穴がこれがまた、なかなかどす黒いのだ。アライグマも侮れない。

 『スパイラル 危険な関係』の主人公は悪人ではない。基本的に善人だ。けれど、どこで間違えたのか、人の道に外れた行動を繰り返してしまう。昔馴染みの女性との浮気。その夫との衝突。エキセントリックな隣人との妊娠騒動。アライグマ退治は明後日の方向にしか進まない。動けば動くほど穴の闇は深くなっていく。

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ジャンル : 映画

チェイス・ザ・ドリーム

チェイス・ザ・ドリーム “At Any Price”

監督:ラミン・バーラニ

出演:デニス・クエイド、ザック・エフロン、ヘザー・グラハム、
   キム・ディケンズ、マリカ・モンロー、レッド・ウエスト、
   クランシー・ブラウン、チェルシー・ロス

評価:★★




 ザック・エフロンが演じるのはプロのカーレーサーになることを夢見る青年だ。もちろんレースシーンがあるし、その際には白を基調にしたユニフォームで颯爽とキメる。…それにも関わらず、『チェイス・ザ・ドリーム』は青春映画ではない。因習に縛られたある家族の物語を紡ぎ出す。けれど、その選択は正しかったのか。

 そう首を傾げてしまうのは、物語の焦点がどんどんずれていくからで、これならばエフロンを中心に置いたアイドル映画にした方が気軽に楽しめたのではないかと思うのだ。アイオワの土地に広大なるトウモロコシ畑を所有する父親と家業を継ぎたくない次男の確執の物語が、青年の夢の挫折のそれへと転換。しかし、物語はそこに留まることをせず、気がつけば不正事件や殺人事件が絡んだサスペンスに転じている。

 強調すべきは、デニス・クエイド演じる父親がしがみつく農場経営の背後に、代々受け継いできた家業という名のしがらみが見える点だろう。祖父や父が守ってきた家業をさらに広げようとするクエイドはしかし、おそらくその野心の根拠を明確には自分でも理解していない。呪いにも似た何かに、家族が雁字搦めになっている点こそが話の重心に置かれるべきで、でもそれを作り手が見誤る。

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