GODZILLA ゴジラ

GODZILLA ゴジラ “Godzilla”

監督:ギャレス・エドワーズ

出演:アーロン・ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、
   ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、CJ・アダムス、
   カーソン・ボルデ、デヴィッド・ストラザーン、ブライアン・クランストン

評価:★★★




 初めてゴジラの名前を口にするのは、我らが渡辺謙だ。感慨深いのは部下役がサリー・ホーキンスという点ではない。発音が“ガッジーラ”ではなく、しっかり“ゴジラ”だという点だ。ギャレス・エドワーズ監督はゴジラが日本が生んだスーパースターであることを重々承知のようで、日本への敬意をそこかしこに散りばめている。ハリウッド版ゴジラと言うと、98年度版の悲劇を思い出さずにはいられないわけだけれど(あれはどう見ても恐竜でしかなかった)、今回はちゃんとゴジラが出てくる。

 想像以上に現代社会が反映されている。切り離して考えることが不可能な核エネルギー。隔離地域。それでも担ぎ出される原子力。頻発する地震。押し寄せる津波。日本人ならば思わずドキリとする設定や描写が次から次へ。そしてそれらがゴジラの存在意義へと結実していく。

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複製された男

複製された男 “Enemy”

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

監督:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、
   イザベラ・ロッセリーニ、ジョシュア・ピース、ティム・ポスト、
   ケダー・ブラウン、ダリル・ディン

評価:★★★




 俳優が一人二役を演じる映画はあまり好きではない。特に同じ画面に入るのが嫌だ。大抵の場合、設定は双子になるのだけど、どれだけ自然な特殊効果があっても、現実の双子にはない違和感がつきまとう。作り手の画作りへの自信が不信感を生むこともある。その点、『複製された男』は悪くない。そっくりの他人を登場させながら、トリッキーな画面作りで得意になることがない(実はそれもまたポイントになっている)。

 ドッペルゲンガー物をミステリー仕立てで描いてはいるものの、その真相がどこにあるのか、頭を使うことに集中するのは賢明ではないだろう。冒頭ハイヒールに踏みつけられそうになるクモを筆頭に、様々な解釈の余地が残されているけれど、細部が描き込まれているとは言い難い。

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プレーンズ2 ファイアー&レスキュー

プレーンズ2 ファイアー&レスキュー “Planes: Fire & Rescue”

監督:ボブス・ガナウェイ

声の出演:デイン・クック、ジュリー・ボーウェン、コリー・イングリッシュ、
   エド・ハリス、レジーナ・キング、ブライアン・カレン、
   ダニー・パルド、マット・ジョーンズ、ジェリー・スティラー、
   アン・メアラ、カーティス・アームストロング、ハル・ホルブルック、
   ウェス・ステューディ、デイル・ダイ

評価:★★★




 アメリカからは山火事のニュースが定期的に入ってくる。ハリウッドスターの豪邸にまで劫火が迫っている、いや実際に全焼してしまった…云々。日本ではほとんど聞かない山火事ゆえピンと来ないものの、いざ映像を見せられると、そのスケールの大きさに仰天する。それにも関わらずそれを取り上げた映画は見かけない。トルネードと並んで身近で作りやすい災害ジャンルだと思うのだけど、何故。そう言えば、消防士自体を映画の中でめっきり見かけない。

 ならば俺がと『プレーンズ2 ファイアー&レスキュー』チームは考えたのかもしれない。「カーズ」(06年)のスピンオフ「プレーンズ」(13年)で世界一周レースのチャンピオンになった飛行機のダスティが、ひょんなことから山の平和を守るレスキュー隊の訓練を受けることになる。その展開はディズニー映画らしく(ピクサーはノータッチ)お行儀良いもので、意外性は皆無。それでも物語を丁寧に伝えようという真心は、前回よりも確かなものとして感じられる。

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エスケイプ・フロム・トゥモロー

エスケイプ・フロム・トゥモロー “Escape from Tomorrow”

監督:ランディ・ムーア

出演:ロイ・エイブラムソン、エレナ・シューバー、カテリン・ロドリゲス、
   ジャック・ダルトン、アリソン・リーズ=テイラー

評価:★★




 愛を凝視すると裏側に憎しみがちらつく。愛らしいはずの人形の無表情が気になって仕方ない。夢を語ってもその大半は挫折に打ちのめされるものだ。天使のような子どもは時に何と残酷な言動をやってのけるのだろう。この世に完全なる楽園は決して存在しない。

 そんなわけで『エスケイプ・フロム・トゥモロー』はディズニーランドに狙いを定める。ミッキーマウスやティガー、プーさんが戯れるその空間は老若男女から愛されている…ということになっている。けれどその煌びやかな外観の裏側には大人の事情というやつが隠れているわけで、でもそれが当たり前だ。朝を迎えた直後、電話で解雇を告げられた主人公は、その表裏の裂け目に堕ちていく。

 売りは主人公の悪夢だ。なのに、これがありきたりだ。目に入る物が歪んで見えたり恐ろしい何かに化けたり、ショッキングなセリフを突きつけられたり、奇人変人に気に入られたり…。幻覚という言葉で簡単に済ませられそうな見せ方に終始する。デヴィッド・リンチ的世界観を目指している気配もあるというのに。

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ジゴロ・イン・ニューヨーク

ジゴロ・イン・ニューヨーク “Fading Gigolo”

監督・出演:ジョン・タトゥーロ

出演:ウッディ・アレン、ヴァネッサ・パラディ、リーヴ・シュライバー、
   シャロン・ストーン、ソフィア・ヴェルガラ、トーニャ・ピンキンス、
   ンバルカ・ベン・タレブ、ボブ・バラバン

評価:★★




 役者としてウッディ・アレンが出てくるものの、『ジゴロ・イン・ニューヨーク』の監督はアレンではない。手掛けたのはクセモノ俳優のジョン・タトゥーロだ。…にも関わらず、アレン映画の匂いが濃い。アレンがいつものように喋り続け、ユダヤ人社会がからかわれ、他愛ない人間模様が軽妙に描かれる。ただし、イミテーションの気配は拭えない。

 出だしは快調だ。祖父の代から続いてきた本屋を畳まざるを得ないアレンがポン引きになり、生活に苦しい花屋のタトゥーロを男娼として雇う。最初は断るタトゥーロが「I'm not a beautiful man.」と繰り返すのが可笑しい。確かにそうだ。でも女を悦ばせるものは、顔だけじゃないからな。

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デッドフォール 極寒地帯

デッドフォール 極寒地帯 “Deadfall”

監督:ステファン・ルツォヴィツキー

出演:エリック・バナ、オリヴィア・ワイルド、
   チャーリー・ハナム、ケイト・マーラ、トリート・ウィリアムス、
   クリス・クリストファーソン、シシー・スペイセク

評価:★★★




 『デッドフォール 極寒地帯』に出てくる兄妹はどうやら、コーエン兄弟の「ファーゴ」(96年)やサム・ライミの「シンプル・プラン」(98年)を観ていないらしい。猛吹雪の山中で犯罪を実行しても、失敗に終わるものなのだ。まあ、彼らの場合、雪山で足止めを食らったのは想定外のことだろうから、それを責めるのは酷かもしれない。彼らに待ち受ける運命が明るいものとは到底思えないものの、ひとまずその行く末を見守る。

 クセモノが揃えられたアンサンブル劇ではあるものの、その犯罪のスケールは小さい。ステファン・ルツォヴィツキーの興味はそれを描くところにはない。素手やナイフを用いた格闘。スノーモービルによるチェイス。血生臭い暴力。ライフルやショットガンによる銃撃。画面にメリハリをつけようとアクション描写も用意されるものの、それよりも白と黒のコントラストが美しい山景色の方が後に残る。

 雪はもちろん、メタファーだ。災害クラスの雪が人々の足をもたつかせる。ゆっくりとしか前に進めない。突然交通事故が起こる。道路が封鎖され、思いがけない宿泊を強いられる。行き着いた先にある家から出ることも難しい。雪を溶かして新しい道へと踏み出すのは誰か。そのドラマこそがサスペンスということだろう。

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ダイバージェント

ダイバージェント “Divergent”

監督:ニール・バーガー

出演:シャイリーン・ウッドリー、テオ・ジェームズ、アシュレイ・ジャド、
   ジェイ・コートニー、レイ・スティーヴンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、
   マイルズ・テラー、トニー・ゴールドウィン、アンセル・エルゴート、
   マギー・Q、メキ・ファイファー、ケイト・ウィンスレット

評価:★★




 その近未来では、社会が五つの共同体に分かれている。「博学」「勇敢」「無欲」「高潔」「平和」がそれだ。人々は16歳になると診断テストを受ける。何だか「ハリー・ポッター」の魔法学校を思わせる制度だけれど、どっこい『ダイバージェント』は“第二の「ハンガー・ゲーム」(12年)”を狙った青春映画だ。平凡に見えた少女が覚醒、人類の運命を握るヒロインとして羽ばたいていく。最近はこの手の内容が多くて食傷気味、なんてことにハリウッドは気づかない。

 荒廃した社会のデタラメさに呆れる。比喩的な意味合いが濃いとは言え、たった五つに人間を分けるというのに眩暈がするし、その上、それぞれのイメージが実に短絡的だ。「無欲」は人々は他人への施しを当然のこととし、「勇敢」はそれゆえに武闘派として警察的な役割を果たす。「平和」はいつも温厚で、オーガニックな生活を愛する。こういう無神経さが死ぬほど嫌いな人間は、この設定が長々説明される前半が拷問のように感じられるだろう。

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テネシー、わが最愛の地

テネシー、わが最愛の地 “That Evening Sun”

監督:スコット・ティームズ

出演:ハル・ホルブルック、レイ・マッキノン、ミア・ワシコウスカ、
   キャシー・プレストン、ウォルトン・ゴギンズ

評価:★★★




 主人公の頑固ジイサンは三か月前に入所した老人ホームから逃げ出し、30キロ離れた自分の農場に帰ってくる。すると家は既に、息子により別の家族に貸し出されていた。己はどうしたら良いのか。家の脇にある小屋で暮らすしかないではないか。てっきり家族との心温まる交流でも始まるかと推測するのだけど…。

 『テネシー、わが最愛の地』はその手の生暖かい気配を拒否する。家族の家長である父親が無職の呑んだくれ、おまけに暴力男という点からしてきな臭いのだけど、それよりも何よりも老いることにまつわる切なさが物語を包み込む。一見まだまだ現役としてイケそうなジイサンでも、着実に身体は弱っている。農場の経営は無理だろう。ひとり暮らしも危険だ。妻に先立たれた哀しみを背負い、まるでジイサンはそれに縋って息をしているみたいだ。

 農場の景色がそのままジイサンの心象と繋がる。緑は豊かだ。けれど、周りには何もない。犬は煩く吠える。家はペンキが剥げ、木が腐ったところも多々。やぶ蚊は多そうだし、庭の手入れもされていない。小屋が寝床というのも寂しい。けれどジイサンはそこに拘る。ここには人の「居場所」というものに関する考察がなされている。他人にとっては意味のない場所でも、当人はそこを本能的に求める。誰にでもある心の居場所。思い出が理由ではない気がする。その場所の記憶が、もはや遺伝子に組み込まれている感覚とでも言えば良いか。

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マレフィセント

マレフィセント “Maleficent”

監督:ロバート・ストロンバーグ

出演:アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、
   シャールト・コプリー、サム・ライリー、イメルダ・スタウントン、
   ジュノー・テンプル、レスリー・マンヴィル、ブレントン・スウェイツ

評価:★★★




 馴染み深いお伽噺・童話の新解釈実写映画化は、すっかりハリウッドのトレンドだ。悪の女王役を人気スターが演じるのが常で、「眠れる森の美女」をベースにした『マレフィセント』ではアンジェリーナ・ジョリーがタイトルロールに扮する。何と言うか、役柄に完璧にハマるところが容易に想像できるジョリーである。

 まず、ジョリーのコスチュームを避けては通れない。おそらく悪魔のそれを意識したのだろうけれど(ヤギを思わせるところもある)、こちらの精神年齢が幼いゆえか、我が日本国が誇るドロンジョ様を連想せずにはいられない。そもそもドロンジョのファッションは何なんだという気もするけれど、とにかく角と黒の組み合わせが恐ろしさよりも可笑しさを強調するのだ。仮装パーティはどこ。

 しかし、それ以外はなるほどジョリーの、時に爬虫類的である美貌にフィットしている。すっきりと美しい鼻筋。赤がぽってりと乗っかった分厚い唇。アイシャドウが映える妖気ある目周り。黒の魔女ドレス(妖精だけど)にも何の違和感もない。最も重要なのは最近のジョリーがこちらが健康を気にしてしまうほどに痩せこけていることで、そのせいで高い頬骨がやたら目立つ。それを利用しない手はないと、化粧も頬骨にポイントを置く。

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パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間

パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間 “Parkland”

監督:ピーター・ランデスマン

出演:ジェームズ・バッジ・デイル、ザック・エフロン、
   ジャッキー・アール・ヘイリー、コリン・ハンクス、
   デヴィッド・ハーバー、マルシア・ゲイ・ハーデン、
   ロン・リヴィングストン、ジェレミー・ストロング、
   ビリー・ボブ・ソーントン、ジャッキー・ウィーヴァー、
   トム・ウェリング、ポール・ジャマッティ、
   マーク・デュプラス、ギル・ベロウズ

評価:★★




 11月22日と言ったらスカーレット・ヨハンソンの誕生日。何てことは今回関係ない。1963年の同日は、アメリカを、いや世界を語る上で避けては通れない日だ。アメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された日なのだ。あまりにも重要な出来事であるため、様々な刑事捜査がなされ、学術研究がなされ、憶測・推測がなされた。関連書籍も多数存在。にも関われず。未だに謎が多く、都市伝説のような逸話も多い。『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』は新たな視点を提示できるだろうか。

 選ばれたのは、事件周辺で生きていた人々の群像劇として描くスタイル。シークレットサーヴィスに事件の撮影者、記者やFBI、医師、暗殺者の家族等が事件によりどう動いたのかを追いかける。力のある俳優は揃ったし、ドキュメンタリー風の撮影や衣装・美術で当時の気分も出している。さあ、どうだ。

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オール・ユー・ニード・イズ・キル

オール・ユー・ニード・イズ・キル “Edge of Tomorrow”

監督:ダグ・リーマン

出演:トム・クルーズ、エミリー・ブラント、ビル・パクストン、
   ブレンダン・グリーソン、ノア・テイラー、キック・ガリー、
   ドラゴミール・ムルジッチ、シャーロット・ライリー、
   ジョナス・アームストロング、フランツ・ドラメー

評価:★★★




 死ぬ度に同じ時間を繰り返すスリラーと言うと、「ミッション:8ミニッツ」(11年)があったばかり。タイムトラヴェル映画の変化球ヴァージョン。突破口はどこにあるのか、それを探る冒険はサスペンスが作りやすい。同じ過ちを繰り返さないことを前提に、徐々に謎が解き明かされていくミステリーになる。「ミッション:8ミニッツ」も『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も基本は同じだ。

 同じだけれどしかし、受ける印象は全く違う。後者は設定こそ暗くても、作品の外観まで陰鬱にはならない。ダグ・リーマンは「ミッション:8ミニッツ」のダンカン・ジョーンズほどに哲学性を持った監督ではなく、よって作品は大抵の場合、ハリウッドの王道を行く。この作品もしかり。哲学性よりもゲーム性を意識したエンタ-テイメントの構築に励んでいる。宇宙からの侵略者にどう立ち向かうか。捻りを加えながらも、王道からは外れない。

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デンジャラス・バディ

デンジャラス・バディ “The Heat”

監督:ポール・フェイグ

出演:サンドラ・ブロック、メリッサ・マッカーシー、デミアン・ビチル、
   マーロン・ウェイアンス、マイケル・ラパポート、ジェーン・カーティン、
   スポークン・リーズンズ、ダン・バッケダール、タラン・キラム、
   マイケル・マクドナルド、ビル・バー、ネイト・コードリー

評価:★★★




 サンドラ・ブロックが刑事に扮したコメディ映画と言えば「デンジャラス・ビューティー」(01年)だ。あれから12年、同じく刑事に扮した(正確にはFBI捜査官)『デンジャラス・バディ』のいちばんの違いは、バディムービーの体裁を採っている点だ。しかもブロックは、相方を立てた演技に徹する。今やオスカー女優のブロック、余裕綽々、そう来なくっちゃ。

 ブロックとコンビを組むのがボストンの地元刑事メリッサ・マッカーシーで、出てくる度に場面に巨大な爆弾を投下。背こそ低いものの、あの巨体だ。利用しない手はない。ブロック相手でも全く引くところなく、ガンガン押す。どう考えてもブロックの方が綺麗なのに(ややお直し色の強い顔に変貌したけれど)、ブロックよりも男の扱いに慣れているというとんでも設定。マッカーシーはそれが当たり前とばかりに得意顔。

 アクション要素の多い作品だけれど、ブロックもマッカーシーも基本はコメディエンヌ。ふたりの掛け合いこそが命で、なるほど漫才のような場面が次から次へ。ボケとツッコミに分かれることなく(どんどん入れ替わる)、意外に毒を含んだ笑いが畳み掛けられる。ブロックは高慢で嫌味、マッカーシーは暴力的で口汚い。近寄り難いふたりが次第に心を通じ合わせていくという、当たり前過ぎて腐り掛けている設定に活を入れ、何とか最後まで見せ切った。

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オールド・ボーイ

オールド・ボーイ “Oldboy”

監督:スパイク・リー

出演:ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、
   サミュエル・L・ジャクソン、シャールト・コプリー、
   マイケル・インペリオリ、ポム・クレメンティフ

評価:★★




 それまでも有名だったパク・チャヌクの名前を映画界に完全に定着させたのはもちろん、韓国版「オールド・ボーイ」(03年)だ。しかし、アメリカではほとんど知られていない。字幕を読むのが嫌いな者が多いアメリカでは、知る人ぞ知る作品でしかない。「オールド・ボーイ」に限ったことではなく、彼らは外国の傑作を知らないままなのだ。それにハリウッドは目をつける。知らないならば、英語でリメイクしてあげようじゃないか。いや、リメイクして一儲けしようじゃないかが正解か。とにかくこの事実が、リメイク映画の駄作の量産に繋がるわけだ。せめてアイデアが悪くない失敗作の改良に取り組めば良いのに…といつも思う。

 アメリカ版『オールド・ボーイ』もやっぱりかの失敗作だ。スパイク・リーが手掛けても、実力派俳優が揃えられても、この有様。アメリカでリメイクが上手く行かない理由、それはきっと風土と関係がある。名作映画の大抵から、その国独特の匂いが感じられるものだ。良くも悪くも匂いに特徴が感じられないアメリカでは、それを再現できない。情念と呼ばれるものはそして、匂いと密着して際立つものなのだ。

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her 世界でひとつの彼女

her 世界でひとつの彼女 “Her”

監督・声の出演:スパイク・ジョーンズ

出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、
   ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、クリス・プラット、
   マット・レッシャー、ポーシャ・ダブルデイ

声の出演:スカーレット・ヨハンソン、クリステン・ウィグ、
   ビル・ヘイダー、ブライアン・コックス

評価:★★★★




 スパイク・ジョーンズはやっぱり変な人だ。もちろん褒めている。技術革新が進んだ世界を取り上げると、人工知能を敵に回したスリラーに仕立てるしか能のないハリウッドでジョーンズは、『her 世界でひとつの彼女』を完成させる。パソコンのOSと人間の紡ぎ上げる恋。一方は実体がなく、上手く行くわけがないと思う。けれど…。

 けれど、上手く行って欲しいと願わせてしまうのが、ジョーンズ・マジック。何と言うか、とにかくOSのサマンサが魅力的なのだ。インストール直後は購入主である主人公セオドアと機械的なやりとりだったのが、、瞬く間に自ら進んで知性を蓄積、人間とのコミュニケーションにおいても目覚ましい発達を遂げ、ついには感情まで芽生えさせる。

 OSの方が生身の人間よりも魅力的に見える。それは確かに現代社会への痛烈な皮肉だ。しかし、サマンサの感情は決して、OSならではのそれではない。「あなたの隣を歩きたい」と願い、「この感情は本物なの?プログラムなの?」と思い悩む。忙し過ぎて自分と向き合うことも難しい人間を横目に、サマンサは人間性を膨らませていく。

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トランセンデンス

トランセンデンス “Transcendence”

監督:ウォーリー・フィスター

出演:ジョニー・デップ、レベッカ・ホール、モーガン・フリーマン、
   ポール・ベタニー、キリアン・マーフィ、ケイト・マーラ、
   コール・ハウザー、クリフトン・コリンズ・ジュニア

評価:★★




 人工知能は映画と関わりが深い。技術革新を甘く見た人間たちの前に、「敵」として立ち塞がるのが常だ。「ターミネーター」(84年)や「マトリックス」(99年)、「イーグル・アイ」(08年)等で、人類の大変な脅威として登場した。ベースはやはり「2001年宇宙への旅」(68年)か。過信は禁物。方向と力量を見誤れば、簡単に人類はとっちめられる。警鐘の意味合いが強くなるのが人工知能映画で、それは結論が見えていることを意味する。クローン映画との類似点も多い。

 『トランセンデンス』もどういう結末になるのかは大方の予想通りだ。ハッピーエンドにしろそうじゃないにしろ、コンピュータ頼みの社会が讃えられることは決してなく、その点で何の意外性もない。作り手もその点は承知していたのか、人工知能が暴走する話を軸に置きながら、それを装飾する脇の物語をふたつ用意している。夫を亡くした妻の愛の物語と自らも関わる最新技術の世界への脅威からテロ組織に傾倒する男の物語だ。そしてどちらかと言うと、そちらの方が面白い。

 とりわけ妻の物語は胸を打つところがあり、これはもう、演じるレベッカ・ホールのおかげだ。死んだ夫の意識をコンピュータにインストールしてモニター上に夫を蘇らせるという、傍から見れば愚かでしかない女の行為をどこかで納得させる。今目の前にいるのは本当の夫ではない。心のどこかで分かっているのに、それでもそれに縋りたくなる、愛の複雑さを決して多角的ではない演出の中で魅せる。愛の危うさは、テクノロジーの危うさに匹敵する。その痛みを魅せる。

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時効前夜 ある女の告白

時効前夜 ある女の告白 “Arrêtez-moi”

監督:ジャン=ポール・リリアンフェルド

出演:ソフィー・マルソー、ミュウ=ミュウ、
   マルク・バルベ、ヤン・エボンジェ

評価:★★




 邦題にある『時効前夜 ある女の告白』とは、10年前、自殺と判断された夫の転落死は、自らの手によるものだったというもの。妻は日常的に暴力を受けていて、その瞬間、これまでの鬱憤が噴き出し、咄嗟に夫を殺してしまった。あぁ、私を罰して下さい。そんなことを言うのなら、担当する女刑事はさっさと逮捕してあげればいいじゃないかと冷たく思うわけだけれど、これは映画、しかも刑事がミュウ=ミュウで、告白するのがソフィー・マルソーだ。そんな簡単に行くわけがない。

 前半はフラッシュバックを利用してマルソーが経験したDVの詳細が紡がれる。言葉の暴力は当たり前。素手で殴られ、フォークで刺され、アパートから締め出され、時にはレイプされることもある。こんな男、殺されても仕方がないじゃないか。でも、殺したところで終わらないのが、DVの恐ろしいところだと語りかけるところがミソだ。女が未だに悩まされるDVの影。女が時効直前に自首してきた理由も含め、それがクライマックスに明らかにされる。

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美しい絵の崩壊

美しい絵の崩壊 “Adore”

監督:アンヌ・フォンテーヌ

出演:ロビン・ライト、ナオミ・ワッツ、ゼイヴィア・サミュエル、
   ジェームズ・フレッシュヴィル、ソフィー・ロウ、
   ジェシカ・トヴェイ、ベン・メンデルソーン

評価:★★★




 バカバカしい話だと言われても仕方ないだろう。子どもの頃から親友同士の中年女ふたりが、互いの息子と恋に落ちるというのだ。昼メロも真っ青のギャグ設定。アンヌ・フォンテーヌ監督はこれを思い切り大真面目に撮る。文芸作品として。エロドラマと割り切って過激な表現に走れば良いのに…という声がどこからともなく聞こえてくる。

 悪趣味な関係はすぐさま全員の知るところとなる。このときの四人の態度が理解し難い。それぞれの関係が崩れないのだ。母親同士も、息子同士も、母息子同士も平穏そのもの。四人で食事して、遊んで、あろうことか自分の母・息子の目の前でいちゃこく。あぶれた人はいないんだから良いじゃないの、みたいな。そんなのあり?

 『美しい絵の崩壊』はしかし、そこを我慢すれば案外感じ入るところも少なくない映画だ。確かに愚かしく信じ難い展開・構図だけれど、次第に妖気が立ち込めてくるではないか。合図は息子のひとりが仕事で家を空けるようになってから。関係が始まったときから分かっていたことだけれど、若い男が年上の女を捨てるときが来たのだ。魔法が解けたと言うべきか、目が覚めたと言うべきか、このときの母親の捨てられ方に奇妙なカタルシスがある。

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ラストミッション

ラストミッション “3 Days to Kill”

監督:マックG

出演:ケヴィン・コスナー、アンバー・ハード、ヘイリー・スタインフェルド、
   コニー・ニールセン、リヒャルト・サメル、トーマス・レマルキス、
   マルク・アンドレオーニ、ブルーノ・リッチ

評価:★★




 もはや誰にも止められない映画界の「96時間」(08年)症候群。娘を持つオヤジの暴走を取り上げた映画は量産されど、「96時間」を超える映画は出てこない。ならば俺が自分で作ってやる。「96時間」の生みの親であるリュック・ベッソンがそう思ったのかどうかは知らないけれど、『ラストミッション』は正真正銘、ベッソンが脚本を始め、多くの点で関わったオヤジ暴走映画だ。主演はケヴィン・コスナー。何だか、らしい。

 コスナーが演じるのはCIAエージェントで、ある日医師から、余命3カ月だと告げられる。一度は仕事を辞めることを決意するものの、寿命を延ばす新薬と引き換えに最後のミッションだと引き受ける。このミッションに入るまでがとにかく長くて、相変わらずベッソン映画の生温さは隠しようがない。ただし、この生温さにコスナーがジャストフィット。

 新薬の副作用が、突然の幻覚症状や眩暈程度に落ち着いているのが勿体ない。それを和らげるためにはウォッカを呑まねばならないというほとんどギャグとしか思えない設定以外のアイデアが見えない。ウォッカで酔っ払う画がないばかりか、有能なはずのコスナーが窮地に陥るパターンが幾度も繰り返されるのは芸がないというもの。他にもコスナー宅に不法侵入していた家族や敵側の運転手との奇妙な交流も、中途半端に済まされる。パリが舞台である必要もない。

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サード・パーソン

サード・パーソン “Third Person”

監督:ポール・ハギス

出演:リーアム・ニーソン、ミラ・クニス、エイドリアン・ブロディ、
   オリヴィア・ワイルド、ジェームズ・フランコ、モラン・アティアス、
   キム・ベイシンガー、デヴィッド・ヘアウッド、マリア・ベロ
   ロアン・シャバノル、オリヴァー・クラウチ

評価:★★




 パリ、ローマ、そしてニューヨークを舞台にした3つの物語が描かれる。一見何の繋がりも見えない彼らだが、しかし…という群像劇で、しかも監督がポール・ハギスと来たら、思い出すのはもちろん「クラッシュ」(04年)だ。「クラッシュ」後、ハギスは監督としても脚本家としても製作者としても何本も作品を手掛けている。けれど、「クラッシュ」以上の作品があったかというと疑わしいところ。そういう状況で何故、「クラッシュ」路線に戻ったか。

 全くもって想像に過ぎないのだけど、生み出したいものを生み出せない苦悩の末、原点回帰したようにしか思えないのだ。原点に縋ったとまで考えるのは言い過ぎか。とにかく自己模倣という言葉が過ぎるのは辛いところだろう。迷いがそのまま物語に紛れ込んでいるし…。

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300<スリーハンドレッド> 帝国の進撃

300<スリーハンドレッド> 帝国の進撃 “300: Rise of an Empire”

監督:ノーム・ムーロ

出演:サリヴァン・ステイプルトン、エヴァ・グリーン、レナ・ヒーディ、
   ハンス・マシソン、ロドリゴ・サントロ、カラン・マルヴェイ、
   デヴィッド・ウェンハム、ジャック・オコンネル、
   アンドリュー・ティアナン、イガル・ノール、ピーター・メンサー

評価:★★




 ハリウッドのマッチョ至上主義を決定づけた「300<スリーハンドレッド>」(07年)の続編『300<スリーハンドレッド> 帝国の進撃』が登場。前作の舞台となったテルモピュライの戦いとほぼ同時期に起こったサラミスの戦いが描かれる。…なんて言っても興奮しないのは、このシリーズが提供するコンピュータだらけの画面に熱というものが一切感じられないからだ。ひょっとしたら人間の身体もコンピュータ仕様なんじゃないかと疑いたくなる破廉恥な技術濫用。いくら流行りと言えど、全てが作り物に見えるのは損だ。

 強力なペルシャ軍と一般市民からなるギリシャ連合軍の戦いの魅せ方は、前作を倣っている。剣と槍、弓矢を使って繰り広げられる肉弾戦は、アクションに入るや否や、必ずスローモーションが入る。そして残酷に斬りつけられた身体から吹き出した血の行方をじっくり撮り上げる。遺体を舐めるように映すのもお約束。生首が出てくることなんて、当たり前だ。これをベースにした意外なほどヴァリエーションの少ないアクションに拍子抜けする。

 物語はいよいよ単純を極める。戦いしかない物語を潔いと見ることも可能だろうけれど、それにしても浮上するメッセージが「仲間のために死ねるのならこれほどの大義はない。家族のため、ギリシャのために!」というのはどうか。決して諦めないという「少年ジャンプ」的世界観が、映像の味気無さとの相乗効果で、見事に臭い。

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エグザイル

エグザイル “Being Flynn”

監督:ポール・ウェイツ

出演:ロバート・デ・ニーロ、ポール・ダノ、ジュリアン・ムーア、
   オリヴィア・サールビー、リリ・テイラー、ウェス・ステューディ、
   エディ・ローズ、スティーヴ・サーバス、ウィリアム・サドラー

評価:★★




 『エグザイル』でロバート・デ・ニーロが演じる男は老い先長くはなさそうな年齢ながら、作家志望だ。彼は自分をマーク・トウェイン、J・D・サリンジャーと並ぶ存在だと豪語する。こういう強気の姿勢は嫌いではない。差別主義、犯罪歴等困ったところは多くても、自分を憐れむことを拒む生き方は羨ましい。この男が主人公ならば、エッジの効いた物語が展開するかもしれない。

 …という予測はあっさり吹き飛ばされる。デ・ニーロは瞬く間に免許も車も仕事も寝床も失い、ホームレスと化してしまうからだ。ポール・ダノはずっと音信不通だったデ・ニーロの息子で、彼との交流がちょいと良い話風にまとめられる。何だか無難な人情ドラマに落ち着いてしまった。

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ジャンル : 映画

ノア 約束の舟

ノア 約束の舟 “Noah”

監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、
   エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンス、ローガン・ラーマン、
   ダグラス・ブース、ケヴィン・デュランド、マートン・ソーカス、
   マディソン・ダヴェンポート、ダコタ・ゴヨ

声の出演:ニック・ノルティ、マーク・マーゴリス

評価:★★




 旧約聖書「創世記」記述の“ノアの箱舟”の映画化はおそらく、米国で聖書絡みの作品が一定層に熱烈に支持されているため実現したはずだ。映像化がいかに難しくても、興行的な見返りがあるのなら、やらない手はない。『ノア 約束の箱舟』はしかし、映画的な魅力には乏しい。哲学的な迷路に迷い込んだに等しいもどかしさに支配される。

 神からのお告げを聞いたノアが箱舟を作る物語は、進むに連れ、異様な気配が立ち込める。ノアが狂人めいてくるためだ。神に選ばれた自分を信じ、使命に縛られ、それをやり遂げるためならばどんな無慈悲な行為も辞さない。他の人物も厳しい運命に晒され、ノアの介入により、より過酷な状況に追い込まれる。その外観はまるで、ウィリアム・シェイクスピアの悲劇のようだ。

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