フッテージ
監督:スコット・デリクソン
出演:イーサン・ホーク、ジュリエット・ライランス、クレア・フォーリー、
マイケル・ホール・ダダリオ、フレッド・ダルトン・トンプソン、
ジェームズ・ランソン、ヴィンセント・ドノフリオ
評価:★★
『フッテージ』で最も面白いヴィジュアルは、かなり早い段階に訪れる。ノンフィクション作家を家長に持つ家族が、以前殺人事件があった家に越してくる。その中でいちばん最初に怪現象に遭遇するのが12歳の長男だ。皆が寝静まった真夜中、廊下にぽつんと置かれた段ボール箱から突如飛び出してくるのだ。しかもエビ反り体勢で!当然顔は上下逆になるから、誰なのか一瞬では判別できない。「エクソシスト ディレクターズカット版」(00年)のスパイダーウォークを思い出す。怖い。だけど笑える。コレだ。
ご丁寧に屋根裏部屋に映写機と共に置かれていた8ミリフィルムに残されている映像が、案外ソフトな描写で拍子抜けだ。大木に吊るされたり、車ごと焼かれたり、水中に引きずり込まれたり…確かに残酷なスナッフフィルムではあるものの、強烈なインパクトと呼ぶほどではない。思わずのけぞってしまうような悪魔的な画が欲しかったところだ。ただし、記録メディアがCD-RやUSBメモリでないのは悪くない。
全然似ていないのに、次第に稲川淳二に見えてくるイーサン・ホークがこのフィルムに着目する。そもそもが家で起こった殺人事件の調査目的でやってきた彼は、映像が何を意味するのか突き止めようとするのだ。それなのに、あぁ、ホークの調査が生温いこと。書斎にこもってフィルムを映写、それをパソコンに落として分析するという地味な作業を、亀の歩みでこなしていく。家から出ることなく、フィルムを小出しに見ていくだけなのがまどろっこしい。ホークよ、足を使っててきぱき調査せんかい。そりゃベストセラーは夢のまた夢だ。