フィッシュ・タンク

フィッシュ・タンク “Fish Tank”

監督:アンドレア・アーノルド

出演:ケイティ・ジャーヴィス、マイケル・ファスベンダー、
   カーストン・ウェアリング、ハリー・トレッダウェイ、
   レベッカ・グリフィス、シドニー・メアリー・ナッシュ

評価:★★★




 ミアという名の15歳の少女は、他人の土地に鎖で繋がれている馬を何度も解き放とうとする。白いその馬は薄汚れている。元気もないようだ。目には淋しさが付きまとう。ミアが馬の中に自分を見ているのは明白で、だから馬が辿る運命には胸が痛む。

 そう、『フィッシュ・タンク』は生易しい青春ドラマなんかではない。15歳という多感な年齢に入った少女をじっくり観察しながら、その過酷な現実を炙り出していく。そこには甘さがない。温かさがない。いや、それを手に入れたと思ったら、すぐさまこっぴどく裏切られる。それが現実だと、頑なに真っ直ぐな姿勢を崩さない。

 ミアがずっとスウェットパンツで通すのにはたまげる。公営住宅で男にだらしがない母と口の悪い妹と暮らすミアは、踊ることで命を感じている。動きやすい格好が第一で、だからスウェットがベストなのだ。オシャレのオの字もない。スウェットがグレイで良かった。黄土色ならラクダの股引に見えるところだ。

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白雪姫と鏡の女王

白雪姫と鏡の女王 “Mirror Mirror”

監督:ターセム・シン

出演:リリー・コリンズ、ジュリア・ロバーツ、アーミー・ハマー、
   ネイサン・レイン、メア・ウィニンガム、マイケル・ラーナー、
   ロバート・エムズ、ショーン・ビーン、ジョーダン・プレンティス、
   マーク・ポヴィネッリ、ジョー・ノッフォ、ダニー・ウッドバーン

評価:★★




 鏡の女王はあまり賢くない。白雪姫の息の根を止めたいのなら、真っ先に狙うべきは眉毛ではないか。白雪姫を演じるリリー・コリンズはとにかく眉毛の主張が強力なオナゴだ。目の上に海苔のように貼りついた眉毛から発せられるパワーがとんでもない。物語上は勇気と行動力が彼女を駆り立てるのだけれど、いやいや、実際に力の源になっているのは眉毛だ。鏡の女王は一本残らず、白雪姫の眉毛を引っこ抜くべきだった。そうすれば女王の座は安泰だったはずだ。

 ターセム・シン監督が『白雪姫と鏡の女王』でコリンズを獲得した功績は大きい。そしてそれと同等に讃えられるべきは、衣装を石岡瑛子にまたもや担当させたことだ。「ザ・セル」(00年)でデビューして以来、シンはずっと石岡を起用し続けている。白雪姫の淡い色のドレスも綺麗だけれど、より魅せるのは鏡の女王のドレスだ。赤や黄色、オレンジといった明るい色を「落下の王国」(06年)にそのまま出てきそうな奇抜なデザインのドレスに落とし込んでいる。大きく広がったスカート部分のゴージャスさもさることながら、トップの建築物的な捻りも見ものだ。明るい色の中に仄かに腐臭を漂わせるのも素晴らしい。

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September 21 - 23 weekend, 2012

September 21 - 23 weekend, 2012

1 The Perks of Being a Wallflower|$57,090(4)$228,359
2 My Uncle Rafael|$7,839(14)$109,748

3 The Master|$5,572(788)$5,446,975
4 End of Watch|$4,818(2730)$13,152,683
5 Arbitrage|$4,812(244)$3,842,700
6 ボディ・ハント|$3,985(3083)$12,287,234
7 人生の特等席|$3,786(3212)$12,162,040
8 Dredd 3D|$2,505(2506)$6,278,491

9 バイオハザードV:リトリビューション|$2,222(3016)$33,469,530
10 Liberal Arts|$1,929(20)$76,367

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 アメリカ人にはセクシーに映るらしいジェイク・ギレンホールさんは、ツルッパゲになって挑んだ新作『End of Watch』のための役作りの最中、殺人事件を目撃したそうです。この作品でロサンゼルス市警の警官を演じているギレンホールさんは、リサーチのために5か月間、週に数回、午後4時から午前4時までロス市警の巡回同行、ほぼ毎日戦闘訓練を受けたとのこと。その際、初めての巡回で殺人事件を目撃、他にも車泥棒やDV等様々な犯罪を目撃したと言います。そう言われてみると、犯罪現場を見たことってないなぁ。ずっと前名古屋駅地下街で、警官と犯人が追いかけっこしているのを見たことがありますが、犯罪行為そのものを見たわけではないしなぁ。平和がいちばんです。

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我らの生活

我らの生活 “La nostra vita”

監督:ダニエレ・ルケッティ

出演:エリオ・ジェルマーノ、イザベラ・ラゴネーゼ、
   ラウル・ボヴァ、ステファニア・モントーシ、
   ルカ・ジンガレッティ、ジョルジョ・コランジェリ

評価:★★




 冒頭の何てことのない家族の風景が目に優しい。父は働き盛り。母は第三子を妊娠中。長男と次男は元気一杯、すくすくと育っている。彼らが醸し出す空気の親密さよ。ベッドで川の字になって寝たり、ショッピングで欲しいものをねだったり、車の中で他愛のない会話をしたり…。淡い色合いの画面の中、何かとても尊いものを目撃したような気分になる。

 この幸せなイタリアの風景が消え去ってしまう。妻が出産時に命を落とすのだ。そこから立ち直るのは容易ではないだろう。何物にも代え難い幸福に包まれていたのだから、なおさらだ。葬儀の際、夫がある歌を絶唱する場面が強烈な印象を残す。哀しみの水が洪水となってスクリーンの外に溢れ出てくる。『我らの生活』は彼らの行く末をじっと見守る。

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トラブルナイト in L.A.

トラブルナイト in L.A. “Girl Walks Into a Bar”

監督:セバスチャン・グティエレス

出演:ジョシュ・ハートネット、ダニー・デヴィート、ザッカリー・クイント、
   カーラ・グギノ、ロザリオ・ドーソン、エマニュエル・シュリーキー、
   アーロン・トヴェイト、ロバート・フォースター、アンバー・ヴァレッタ、
   ギル・ベロウズ、アレクシス・ブレデル、ケヴィン・ゼガース、
   ザンダー・バークレイ、ミシェル・ライアン

評価:★




 歯科医が女の殺し屋に仕事を依頼するところから始まる。サスペンスたっぷりのクライムドラマかと思いきや、意外や群像劇へと転がっていく。それも男と女の間に横たわる小さくて、でも場所によっては深くもある溝に着目した群像劇。狙ったのは大人同士の男女だからこそ匂い立つ、しっとりとした色香だろう。

 ところが、これがむしろ子どもっぽくしか映らないのだ。役者はそれなりに有名どころが揃えられているし、各人物に裏の顔を潜ませることで謎めいた空気を作り出してもいる。それにも関わらず全体の印象が幼くなってしまったいちばんの理由はおそらく、作り手に「スタイル」と呼べるものがないからに違いない。

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ディクテーター 身元不明でニューヨーク

ディクテーター 身元不明でニューヨーク “The Dictator”

監督:ラリー・チャールズ

出演:サシャ・バロン・コーエン、アンナ・ファリス、ベン・キングスレー、
   サイード・バッドレヤ、ジェイソン・マンツォーカス、
   アーシフ・マンドヴィ、ミーガン・フォックス、
   エドワード・ノートン、ジョン・C・ライリー

評価:★★★




 いきなり「キム・ジョンイルを偲んで」の文字が画面に映し出される。もちろんこれは、物語のゴーサインだ。これからサシャ・バロン・コーエンらしい過激で下品な笑いが次々投下されることを予告している。さあ、覚悟するが良い。ブレイクしてからもコーエンは、決して守りに入らない。

 『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』はこれまでとは作り方が異なっている。「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」(06年)「ブルーノ」(09年)はそれぞれカザフスタンのテレビレポーター、オーストリアのファッションレポーターになりきったコーエンが、そのキャラクターのままに一般社会に潜入。人々を翻弄しては、一見品行方正な彼らからどす黒い本音を炙り出していく、ドッキリ要素の強い構造になっていた。フィクションとノンフィクションの境目を曖昧にして、偽善を浮上させたと言い換えることも可能だ。マイケル・ムーア的作法を持ち込んでいた。

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バッドトリップ! 消えたNO.1セールスマンと史上最悪の代理出張

バッドトリップ! 消えたNO.1セールスマンと史上最悪の代理出張 “Cedar Rapids”

監督:ミゲル・アテタ

出演:エド・ヘルムズ、ジョン・C・ライリー、アン・ヘッシュ、
   イザイア・ウィットロック・ジュニア、スティーヴン・ルート、
   カートウッド・スミス、アリア・ショウカット、トーマス・レノン、
   ロブ・コードリー、マイク・オマリー、シガーニー・ウィーヴァー

評価:★★★




 保険会社に務める者たちが集まるコンベンションが舞台になる。なんだか退屈そうな匂いが漂うけれど、コンベンションはプレゼンするだけの場所ではない。宝探しゲームがあり、隠し芸大会があり、表彰式があり…人と人が繋がる人脈作りの場でもある。なるほど物語がドラマティックに動く可能性は高い。

 ここに放り込まれるのがエド・ヘルムズだ。彼は田舎から出たことのない真面目なオッサン。会社のトップセールスマンが自殺したことを受け、急遽代役で都会で開かれるコンベンションに向かう。飛行機にも乗ったことのなかったオッサンが、そこで現実を知る。金が舞い、嘘が飛び交い、マリファナが寄ってくる。オッサンは急激な変化を求められる。オッサンの、遅過ぎる、まさかのカミング・オブ・エイジ ストーリーとして見えてくる。

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ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛

ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛 “The Edge of Love”

監督:ジョン・メイブリー

出演:キーラ・ナイトレイ、シエナ・ミラー、
   キリアン・マーフィ、マシュー・リース

評価:★★




 1940年代のロンドン、ドイツ軍の空襲に見舞われている中で4人の男女が出会う。詩人ディラン・トマスが出てくるものの、彼は主人公ではない。中心に置かれるのは彼の幼馴染であるヴェラという女性だ。ヴェラとディラン、その妻キャトリン、ヴェラに思いを寄せる英国軍人のウィリアムの関係が描かれる。ディラン・トマスの詩人ゆえの立ち振る舞いは見当たらない。ただし、その言葉は詩を詠うかのように耳に入ってくる。

 『ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛』は時代を映し出す撮影が素晴らしい。序盤はライティングが凝っている。ヴェラはクラブ歌手という設定なので、その華やかさを引き出す細心の注意が払われる。くちなしの花を髪飾りにしたオープニングの歌唱場面は、ちょいとハワイっぽくて苦笑してしまうものの、ヴェラの強い眼差しの力も手伝って強く心に残る。影を意図的に作り出したり、褪せた写真の色合いを狙ったり、遊びも多い。後半は舞台がウェールズに移り、今度は自然光が活かされた撮影が多くなる。寂しげな風景の匂いを静かに封じ込めている。断わるまでもなく、衣装や美術も念入りに再現される。とりわけヴェラ役のキーラ・ナイトレイが美しい。

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September 14 - 16 weekend, 2012

September 14 - 16 weekend, 2012

1 The Master|$147,262(5)$736,311
2 Arbitrage|$10,163(197)$2,002,165
3 10 Years|$7,569(3)$22,707
4 バイオハザードV:リトリビューション|$6,989(3012)$21,052,227
5 Liberal Arts|$6,859(4)$27,435

6 Keep the Lights|On $6,396(5)$112,024
7 Sleepwalk with Me|$2,930(118)$1,265,056
8 For a Good Time, Call...|$2,527(107)$815,473
9 The Possession|$2,016(2860)$41,133,490
10 Robot & Frank|$1,809(209)$2,573,006

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 小奇麗な男が多い映画スターの中で、常に汗臭い匂いを漂わせているコリン・ファレルさんは、人生をヨガに救われたと告白しています。ドラッグやアルコール漬けの毎日を送っていたファレルさんですが、ヨガと出合ったことで生活が一変。仕事にがんがん打ち込み、子どもとの時間も大切にできるようになったのだとか。コカインやウイスキーに塗れていた日々とはおさらばということですね。セラピー代要らずで万々歳ではないでしょうか。ヨガかー、身体が死ぬほど堅いワタクシには無理。床に手を着こうとしても、30センチぐらい離れてるもんな。

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Mr.ズーキーパーの婚活動物園

Mr.ズーキーパーの婚活動物園 “Zookeeper”

監督:フランク・コラチ

出演:ケヴィン・ジェームズ、ロザリオ・ドーソン、レスリー・ビッブ、
   ケン・チョン、ドニー・ウォルバーグ、ナット・ファクソン、
   ニック・ベケイ、ジャッキー・サンドラー、トーマス・ゴットチョーク

声の出演:シェール、ニック・ノルティ、アダム・サンドラー、
   シルヴェスター・スタローン、ジャド・アパトウ、ジム・ブリューアー、
   ジョン・ファヴロー、フェイゾン・ラヴ、マヤ・ルドルフ

評価:★★




 おそらく企画は「動物が喋ったら面白いだろう」という発想からスタートしたはずだ。ライオンが、クマが、ゴリラが、サルが、キリンが、ゾウが、トラ…はいないか、とにかく動物園で飼われている動物たちがベラベラ喋る。本来何を考えているのか分からない動物たちの本音の炸裂。実写版「マダガスカル」(05年)の線を狙ったに違いない。彼らが大好きな飼育員の恋を応援する。あぁ、なんて愉快なんだ、みたいな。実に安易だ。

 そして、動物を喋らせるワンアイデアで満足してしまったのが、この『Mr.ズーキーパーの婚活動物園』だ。恋の応援なんて言っても、マーキングの仕方だとか吠え方だとか、人間の参考にはならないものばかり。おまけにアニメーションのようなアクロバティックなアクションは望めないから、不自然な口元部分ばかりがクローズアップされる。豪華スターがヴォイスキャストとして当てられているも、全く意味をなしていない。動物たちが信じ難いほどに可愛くない。

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最強のふたり

最強のふたり “Intouchables”

監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ

出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、
   オドレイ・フルーロ、クロティルド・モレ、
   アルバ=ガイア・クラゲード・ベルージ、トマ・ソリヴェレ、
   シリル・マンディ、ドロテ・ブリエール・メリット

評価:★★★




 障害者を取り上げた映画には警戒する。彼らの中に純真無垢なものを見て心洗われようだとか、その苦しい境遇を体感することで胸打たれようだとか、卑しい作りになりがちだからだ。やたら頭でっかちな教訓話になる危険も秘めている。「障害者との接し方」的マニュアルめいた作法に陥る罠。同情や哀れみがベースに敷かれた感動や説教など、映画では避けて通りたいトラップがてんこ盛りなのが、「障害者」映画だ。

 『最強のふたり』の最大の手柄は、このトラップを足取り軽く切り抜けるところだ。首から下が麻痺した障害者は腫れ物に触るように接する介護人ばかりでうんざりしているし、彼の世話をすることになるアフリカ系青年は貧しい暮らしから抜け出せればそれで良いという現状。ちょっとした諦めの心模様。だからふたりとも遠慮というものがない。ズカズカ物を言い、プライヴェートな領域に踏み込むことを恐れない。同情も哀れみも説教も排除して、個と個がぶつかり合う。

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コロンビアーナ

コロンビアーナ “Colombiana”

監督:オリヴィエ・メガトン

出演:ゾーイ・サルダナ、ジョルディ・モリャ、レニー・ジェームズ、
   アマンドラ・ステンバーグ、マイケル・ヴァルタン、クリフ・カーティス、
   カラム・ブルー、グレアム・マクタヴィッシュ、ジェス・ボレッゴ

評価:★★




 物語は1992年のコロンビアから始まる。父親がマフィアのボスと友好的に別れることに失敗、母親と共に殺害される。まだ幼い少女にも魔の手は伸びる。少女はしかし、父の教えを忠実に守り、襲い繰る敵を撃退する。マフィアの狙いであるディスクとの交換として何が欲しいか聞かれた少女は、不敵に「ドン・ルイスの命よ!」と言い放つ。ドン・ルイスこそボスの名だ。

 少女を演じるアマンドラ・ステンバーグがとても良い。敵を目の前にしても、恐れる表情を見せない。褐色の肌に良く映える両耳ピアスに負けないきらめきを武器に、敵の手の平にナイフを突き刺し、逃走が始まる。小さな身体に「命の炎」が見える。生命力が頼もしい。このときのアクションはコロンビアの傾斜のある土地に建てられた居住区を活かしたもので、少女はどんどん下に向かう。上にを目指すショットはワンカットもない。少女の行く末を暗示するようで切ない。ただし、あからさまなスタントには大いに興醒め。いやまあ、仕方ないんだけど。あんなアクロバティックな逃走劇、子どもには無理。

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デンジャラス・ラン

デンジャラス・ラン “Safe House”

監督:ダニエル・エスピノーサ

出演:デンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ、ヴェラ・ファーミガ、
   ブレンダン・グリーソン、サム・シェパード、ルーベン・ブラデス、
   ノラ・アルネゼデール、ロバート・パトリック

評価:★★★




 南アフリカ、ケープタウンでライアン・レイノルズがデンゼル・ワシントンを保護しながら逃げる。レイノルズは事務系CIAエージェント、ワシントンは各国から指名手配される元CIAの凶悪犯だ。善人が悪人と一緒に逃げ惑うという話は、さほど珍しくない。当然のように連帯感が生まれる。味方の中に裏切り者が潜んでいるというのも、ありふれた設定だ。つまり『デンジャラス・ラン』には新しさを感じさせる要素は見当たらない。

 …それにも関わらず身体をぐいぐい引き寄せられるのは、第一に、逃げる構図が重層的に組み立てられているからだ。ふたりはCIAに追い掛けられる。正体不明の組織にも命を狙われる。そしてレイノルズとワシントンは任務と倫理観、信念と諦観の狭間に容赦なく突き落とされ、場面毎に追い掛ける側追い掛けられる側、命を狙う側狙われる側、相手を守る側守られる側へと振り回される。互いが協力して切り抜ける場面ももちろん出てくる。安定感のない立ち位置がサスペンスを刺激する。

 しかもこの逃避行が、カットの大変素早い切り返しで描かれていく。セリフは重なり合う。ほとんど撮影映像をズタズタにしているだけじゃないかというラインギリギリのところまで持ち込み、大胆な編集術と音楽の力により豪快に畳み掛けていく。しかし、MTVには決してならない。材料として用意された映像のざらざらとした手触りは、ドキュメンタリー的な迫力を生み出す。ワシントンと何度も組んでいるトニー・スコットを思い出す。必然的に描写は過激になる。そこには痛みがある。不快さがある。

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Something Borrowed/幸せのジンクス

Something Borrowed/幸せのジンクス “Something Borrowed”

監督:ルーク・グリーンフィールド

出演:ジニファー・グッドウィン、ケイト・ハドソン、
   コリン・エッグレスフィールド、ジョン・クラシンスキー、
   スティーヴ・ハウイー、アシュレイ・ウィリアムス、
   ジェフ・ピアソン、ジル・アイケンベリー

評価:★




 気の利いた映像作家なら、ジニファー・グッドウィンとケイト・ハドソンの配役を逆にしただろう。ブルネットのグッドウィンは地味で真面目、男日照りが続いている。ブロンドのハドソンはポジティヴで自由奔放、意中の男との結婚が間近だ。つまりグッドウィンもハドソンも、これまでのイメージ、見た目のイメージそのままで登場する。そして、彼女たちが劇中で見せる言動もまた、意外性のあるところはまるでない。ステレオタイプを貫くにしても、もう少し芸があるだろう。

 グッドウィンは気分が落ち込んでいる。大学時代から心を寄せていた男が親友と結婚するからだ。酔っ払って一夜を共にしたことで、男もまた自分に好意を寄せていることを知り、彼女は思い悩む。あの人を愛している。でも親友のことは裏切れない。あぁ、私はどうしたら良いの?一見心苦しい悩み。しかし、本当にそうだろうか。悲劇のヒロインを装っているものの、こういう女こそ、最も恐ろしいタイプ。女が最も恐れる女ではないか。レニー・ゼルウィガー的とも言う。

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September 7 - 9 weekend, 2012

September 7 - 9 weekend, 2012

1 Hello I Must Be Going|$11,952(2)$23,904
2 Keep the Lights On|$11,115(5)$11,115
3 Bachelorette|$3,862(47)$181,494

4 For a Good Time, Call...|$3,857(56)$450,004
5 Sleepwalk with Me|$3,841(73)$816,307
6 The Eye of the Storm|$3,684(7)$25,785
7 The Inbetweeners Movie|$3,600(10)$36,000

8 The Possession|$3,288(2834)$33,166,582
9 Robot & Frank|$2,503(202)$2,014,027
10 Little White Lies|$2,365(14)$137,819

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 The Hollywood Reporter誌によるインタヴューの中で、ブラッドリー・クーパーさんが酒とドラッグをやめた理由を語っています。それによると、あるパーティで自分がタフであることを示すため、コンクリートの床に頭を何度も打ちつけ、一晩病院で過ごすハメになったという経験が大きかったそうな。アイスクリームを舐めながら、流血箇所を縫ってもらっているときに、我に返ったとのこと。あぁ、クーパーさん、昔はほんまもんの年中ハングオーバー男だったのですね。ワタクシは先月、すごく久しぶりに酒で記憶をなくし、それ以来酒断ちしています。自分よ、偉い!

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あの日 あの時 愛の記憶

あの日 あの時 愛の記憶 “Die verlorene Zeit”

監督:アンナ・ジャスティス

出演:アリス・ドワイヤー、マテウス・ダミエッキ、ダグマー・マンツェル、
   レヒ・マツキェヴィッチュ、スザンヌ・ロタール、フロリアン・ルーカス、
   デヴィッド・ラッシュ、アドリアン・トポル、ヨアンナ・クーリグ、
   シャンテル・ヴァンサンテン、アンナ・アントノヴィッチ

評価:★★




 ユダヤ人収容所で男女が愛し合う隙が本当にあるのか…という疑問はさておき、確かに『あの日 あの時 愛の記憶』のカップルの物語にはメロドラマ的要素が満載だ。荒れ狂う1944年ポーランド。男は政治犯。女はドイツから送られてきたユダヤ人。出会いはアウシュビッツ強制収容所。男は秘密任務の真っ只中。女は妊娠を隠している。看守の目を潜り抜けての逢引。命懸けの脱走。決死の逃避行。男の故郷での日陰の暮らし。母の反対。政治的混乱の最中の別離。…どうだ、マイッタか!

 ここまで盛り沢山に盛り上げるならば、正統派のメロドラマとして見せる方が良かったのではないか。実はこの映画、1976年ニューヨークも舞台になっていて、別れてから30数年後、偶然女が男の生存を確認したことから、再びふたりの人生が揺れる様を描いている。これが鬱陶しい。

 戦時下の愛を取り上げた映画は多い。命の危険に晒される中で繰り広げられるドラマだから、これ以上望めない「恋の障害」が土台に敷かれている強み。奥行きを深める演出が頑丈であるならば、勝算は高い。それを踏まえた上で時間の残酷さを示す。戦争が終わって65年以上が経過している今だから、何年経ってもそれに翻弄される者たちを見つめることも必然と言えるのかもしれない。

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ディア・ブラザー

ディア・ブラザー “Conviction”

監督:トニー・ゴールドウィン

出演:ヒラリー・スワンク、サム・ロックウェル、ミニー・ドライヴァー、
   メリッサ・レオ、ピーター・ギャラガー、ジュリエット・ルイス、
   クレア・デュヴァル、ベイリー・マディソン、トビアス・キャンベル

評価:★★★




 『ディア・ブラザー』のヒロイン、ベティ・アン・ウォルターズは実在の人物だという。彼女には驚かされる。愛する兄が殺人罪で終身刑となり、彼を救うべく、弁護士になっちまうんである。次々出てくる兄に不利な証言。有能な弁護士たちは仕事を受けたがらない。しかし、彼女は諦めない。それなら私が弁護士になってやる!私が兄を助けてやるわよ!なんともまあ、前向きな発想力。あのヒラリー・スワンクが演じているから、奇妙に説得力が出る。バカみたいな話だけど、彼女ならやれるかもしれない。

 前半はウォルターズが弁護士になるまでが描かれる。なんと彼女は高校も出ていなかった。「そこからのスタートか!」と誰もが突っ込むものの、気がつけば彼女はロースクールの学生だ。夫には愛想を尽かされ、ふたりの息子のシングルマザーとして、バーで働きながらの学生生活。知識がない分、家庭を守らなければならない分、苦労は人一倍あっただろう。それでも彼女は遂に弁護士になる。物語が始まって50分で弁護士になる。しかし、現実の時間は10年以上が経っている。おめでとうおめでとう。

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なんだかおかしな物語

なんだかおかしな物語 “It's Kind of a Funny Story”

監督:ライアン・フレック、アンナ・ボーデン

出演:キーア・ギルクリスト、エマ・ロバーツ、ザック・ガリフィアナキス、
   ヴィオラ・デイヴィス、ゾーイ・クラヴィッツ、ローレン・グラハム、
   ジム・ガフィガン、ジェレミー・デイヴィス

評価:★★★




 精神病院が舞台になっているのに、全然深刻にならない。いや、もちろん患者たちの症状は厳しいのだけれど、肝心の主人公の16歳の少年のそれはさほど悲観的とは思えない。それもそのはず、うつ病で自殺願望があるらしい少年はある朝突然、「これは拙い」と自ら進んで病院に赴く。なんか俺、落ち込んでるな。ちょっと入院してみようかな。その程度の気持ち。明るく楽しく入院生活。

 単なる甘ったれじゃないかと言いたくなる気持ちが急速に萎んでいくのは、少年が抱えているもやもやが他人事ではないからだ。家族や友達、好きな女の子。将来や社会。生きる意義はどこにあるのか。おそらく誰もが一度は考えたことのある漠然とした不安感は、振り返ってみれば笑い話になっても、そのときはとても重大な問題だったはずだ。少年は5日間の入院生活を通じて、その不安に向かい合う。『なんだかおかしな物語』は病気を描くのではなく、少年の成長を描く。簡単に言うと、とても正直な青春映画に仕立て上げられている。

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THE GREY/凍える太陽

THE GREY/凍える太陽 “The Grey”

監督:ジョー・カーナハン

出演:リーアム・ニーソン、フランク・グリロ、ダーモット・マルロニー、
   ダラス・ロバーツ、ジョー・アンダーソン、ノンソー・アノジー、
   ジェームズ・バッジ・デイル、ベン・ブレイ、アン・オープンショウ

評価:★★★




 アラスカの大雪原に飛行機が墜落する。生き延びた数名は石油掘削現場で働く者たちだ。その中にリーアム・ニーソンの姿を見つける。最近のニーソンは疾風怒濤のアクションの塊となって画面を切り裂いている。きっと今回も、大自然相手に超人的な破壊力を見せてくれるはずだ。ヘイカモーン!…という読みは気持ち良いほどあっさり裏切られる。『THE GREY/凍える太陽』はリアリズムを重視した映画。アクション要素もあるものの、芸術要素の方が色濃く出ている。

 「死」を見つめながら「生」を描くというのは、映画ではよく見られる表現法だ。裏返しの概念が実は密接に結びついている。世の中の真理だ。とは言え、ここまで死の描写にこだわるのも珍しい。死をダイナミックに綴ってインパクトを与えようというのではない。死をひたすら誠実に見つめることで、生にまつわる容赦なく厳しい現実を浮き彫りにする。

 したがって次々に命を落としていく男たちの死に様は、決して美しいもの、神聖なものとは映らない。命が絶え行く瞬間の惨さが生々しく切り取られる。立ちはだかるのは圧倒的な寒さとエサに飢えたオオカミたち。負った傷口からの出血により死ぬ者あり、オオカミに噛み殺される者あり、寒さに耐えられない者あり…。人の数だけ死に様があり、しかもいずれもが強い印象を残す。流れる血のどす黒さが頭から離れない。擦り合わされるのは人のちっぽけな命、雄大な自然、そして神の存在。その枠組がくっきり見えてくる。

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ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して

ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して “The Big Year”

監督:デヴィッド・フランケル

出演:スティーヴ・マーティン、オーウェン・ウィルソン、ジャック・ブラック、
   ブライアン・デネヒー、アンジェリカ・ヒューストン、ラシダ・ジョーンズ、
   ロザムンド・パイク、ダイアン・ウィースト、ジョベス・ウィリアムス、
   アンソニー・アンダーソン、ティム・ブレイク・ネルソン、
   ジム・パーソンズ、ケヴィン・ポラック、コービン・バーンセン

評価:★★★




 探鳥家の間では「ザ・ビッグイヤー」というコンテストが馴染みなのだという。アメリカ探鳥協会主催の記録会のことで、1年間に北米大陸で見つけた野鳥の種類の数が最も多かった者が勝利するらしい。早い話、バードウォッチングがそのまま競争となる。アルフレッド・ヒッチコックの「鳥」(63年)に恐れ戦いている場合ではない。

 地味!何と地味!しかし、その地味な響きとは違い、探鳥家たちが強いられる状況はかなり過酷だ。鳥はいつでもどこでも待っていてくれるとは限らない。場所によって、時間帯によって、季節によって出現ポイントが変わる。人間はそれに合わせねばならない。したがって探鳥家は鳥を目に焼きつけるがために、金も時間もたっぷり投資しなければ、優勝はもちろん、上位に食い込めない。地味!でも、厳しい!

 『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』は野鳥の観察に執着する人々を観察した映画だ。優勝したところで何が貰えるわけでもないというのに、彼らは鳥の飛ぶところ鳴くところに向かって一直線。そのためには仕事も家庭も犠牲がつきものだ。取引先を怒らせる。親に心配をかける。妻に愛想を尽かされる。それでもアイ・ラヴ・バードな人々の滑稽さよ。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

August 31 - 3 weekend, 2012

August 31 - 3 weekend, 2012

1 Sleepwalk with Me|$13,582(29)$483,106
2 The Flying Swords of Dragon Gate|$8,333(15)$125,000
3 For a Good Time, Call...|$8,117(23)$186,689
4 The Possession|$7,485(2816)$21,078,840

5 Robot & Frank|$6,375(144)$1,366,211
6 Little White Lies|$4,694(12)$93,637
7 Lawless|$4,457(2888)$15,014,995
8 Compliance|$3,701(19)$181,784
9 ダークナイト ライジング|$3,657(2187)$433,311,261
10 エクスペンダブルズ2|$3,436(3334)$68,814,085

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 英国サッカー界の大物(?)デヴィッド・ベッカムさんが、とあるパーティにバスタオルを腰に巻いただけの姿で登場しました。ヴァンクーヴァーでの試合後にホテルの一室で行われたパーティにやってきたベッカムさんは、チームメイトを初めたくさんの人(もちろん女性も)が集まる中に、バスタオル一丁で現れて普通に過ごしていたとのこと。脱ぎたがりであることは間違いありません。ロンドンオリンピックの開会式では、テムズ川をボートで渡って聖火を届けるという生温い仕事をしていたベッカムさん。どうせならこのときバスタオル一丁だったら良かったのに…。

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アベンジャーズ

アベンジャーズ “Marvel's The Avengers”

監督:ジョス・ウェドン

出演:ロバート・ダウニー・ジュニア、クリス・エヴァンス、マーク・ラファロ、
   クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、
   サミュエル・L・ジャクソン、トム・ヒドルストン、
   クラーク・グレッグ、コビー・スマルダーズ、
   ステラン・スカルスガルド、グウィネス・パルトロウ

声の出演:ポール・ベタニー

評価:★★★




 人気スターを集めるだけでは愉快なエンターテイメントにはならない。実力ある俳優を集めるだけでも高級なドラマは生まれない。そしてもちろん、コミックファン、映画ファンに熱烈に愛されているヒーローを集合させても、それだけでは胸躍る興奮に繋がらない。むしろ大味で、中弛み多い、気の抜けた仕上がりになる確率が高い。しかし、『アベンジャーズ』はその危険を容易く乗り切る。

 アイアンマン、ソー、キャプテン・アメリカ、ハルク、ホークアイ、ブラック・ウィドウが集まり、地球の危機を救うべく共闘する。彼ら全員に見せ場を作らなければならない。でもそれをちんたらやっていては、10時間あっても終わることはないだろう。ジョス・ウェドンが賢明だったのは、この悩ましいポイントを巧みに操るところにある。省略がとにかく上手い。

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ランパート 汚れた刑事

ランパート 汚れた刑事 “Rampart”

監督:オーレン・ムーヴァーマン

出演:ウッディ・ハレルソン、ベン・フォスター、ネッド・ビーティ、
   アン・ヘッシュ、アイス・キューブ、シンシア・ニクソン、
   シガーニー・ウィーヴァー、ロバート・ウィズダム、
   ロビン・ライト、スティーヴ・ブシェーミ、ジョン・フォスター

評価:★★★




 ウッディ・ハレルソンはいかにも悪人面だ。少し寄り気味の鋭い目。般若を思わせる口元と顎。ダイナミックに禿げ上がった頭。デンジャラスな匂いが至る所から滲み出ている。そんな彼が悪徳警官を演じると言っても、全然衝撃的ではない。むしろ「タイプキャスト」という言葉が浮かび上がる。それなのに。

 それなのに『ランパート 汚れた刑事』のハレルソンは、結局衝撃的だ。1999年ロサンゼルス、暴力的で人種差別的。エゴイスティックな部分を隠そうともせず、同僚にも辛く当たる。ニックネームは「デイヴ・レイプ」。映画はこの腐敗の色を強く押し出す警官の物語を紡ぐのではなく、その日常を観察する。自然光を活かし、空気のようになったカメラが、男の背後に密着する。ドキュメンタリーのような、リアリティTVのような生々しさが、ドラマティックな物語よりもよっぽど迫力を醸し出す。

 非人間的な言動の男が市民を守る側である警察にいて、しかもそれでも巧いバランスを保って生存しているのが面白い。必要悪と呼ぶには小粒な存在なのにも関わらず、彼は不思議と奔放なままだ。家庭では別れた二人の妻と暮らし、その子どもも一緒。愛人との情事にも積極的だ。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

それでも、愛してる

それでも、愛してる “The Beaver”

監督・出演:ジョディ・フォスター

出演:メル・ギブソン、アントン・イェルチン、ジェニファー・ローレンス、
   ライリー・トーマス・スチュワート、チェリー・ジョーンズ、
   ザッカリー・ブース、ジェフ・コーベット、ベイレン・トーマス

評価:★★




 監督ジョディ・フォスターは「リトルマン・テイト」(91年)「ホーム・フォー・ザ・ホリデイ」(95年)と「家族」を切り取ってきた。そこには「普通」とは少しだけ距離を置いたその肖像が刻まれていた。『それでも、愛してる』に出てくる家族も「普通」とは言い難い。心がバラバラになっている。原因は父親がうつ病にかかってしまったからだ。

 父親の状況は深刻だ。自殺を試みるところにまで追い詰められている。啓発本も薬も効かない。家からも追い出される。ところが、彼は意外な方法で事態を好転させる。捨てられていたビーヴァー人形を左手に装着し、ビーヴァーに人格を持たせ、本音をズバズバ言わせることで心の平穏を掴み取る。オッサンが人形と会話する画が奇妙な空気を創り出す。フォスターがこの物語の中で唯一見せるユーモアはここだ。

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8月までに公開された作品の中でオスカーの可能性があるのは…? 2012

※この文章は、アカデミー賞専門サイトOSCAR PLANETのために書いたものの転載になります。




 10年前は3月下旬に開催されていたアカデミー賞授賞式ですが、最近では2月下旬に開かれています。賞シーズンを短くしたいというのがハリウッドの意向のようで、今後ますます開催時期が早まるのではないかとも言われています。それに合わせてノミネーションの発表も早まっています。次回第85回アカデミー賞は、通常よりも一週間早い1月15日にノミネーション発表される予定です。

 賞シーズンの前倒しは、少なからず各映画会社の作品の封切日に影響を与えているように見えます。12月末日ぎりぎりに公開しても、有権者に作品を観てもらう時間がなく、作品評価そのものではなく、時間がなくて切られてしまうという事態が起こり得ます。それを防ぐためには公開日を若干早め、作品が会員全員に行き渡るまで十分な時間を確保しなければなりません。もちろん秋以降の封切作品にこそオスカームービーが揃っているのは間違いありませんが、夏までの公開作はキャンペーン時間がたっぷり作れることもあり、秋冬作品よりも会員に行き渡らせることが容易です。うまく宣伝できれば、秋冬作品を超えて化けることも考えられます。最近は8月以前の公開作から候補が生まれることが本当に多くなってきました。昨年だと『ヘルプ 心がつなぐストーリー』『ミッドナイト・イン・パリ』『ツリー・オブ・ライフ』『明日を継ぐために』『人生はビギナーズ』『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』が主要部門に候補を送り込みました。

 では、今年はここまでどんな作品が支持されたのでしょうか。今回は第85回アカデミー賞(主要6部門)が9月上旬に開かれたとしたらどうなるか考えてみました。対象は今年の1月から8月までに公開された作品となります。もちろん違う意見の方も多いでしょうが、それほど大差ないはずです。




◆作品賞
Beasts of the Southern Wild(ベン・ザイトリン監督)*
The Best Exotic Marigold Hotel(ジョン・マッデン監督)
ダークナイト ライジング(クリストファー・ノーラン監督)
アベンジャーズ(ジョス・ウェドン監督)
ムーンライズ・キングダム(ウェス・アンダーソン監督)*

◆監督賞
ウェス・アンダーソン(ムーンライズ・キングダム)
ジョン・マッデン(The Best Exotic Marigold Hotel)
スティーヴン・ソダーバーグ(Magic Mike)
ジョス・ウェドン(アベンジャーズ)
ベン・ザイトリン(Beasts of the Southern Wild)*

◆主演男優賞
ジャック・ブラック(Bernie)
トミー・リー・ジョーンズ(Hope Springs)
フランク・ランジェラ(Robot & Frank)
マシュー・マコノヒー(Killer Joe)
チャニング・テイタム(Magic Mike)

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