セント・トリニアンズ女学院2

セント・トリニアンズ女学院2 “St Trinian's 2: The Legend of Fritton's Gold”

監督:オリヴァー・パーカー、バーナビー・トンプソン

出演:ルパート・エヴェレット、コリン・ファース、デヴィッド・テナント、
    タルラ・ライリー、ジェマ・アータートン、キャスリン・ドライスデイル、
    ジュノー・テンプル、トビー・ジョーンズ

評価:★




 どうやら作り手は、シリーズの見所を「アナザー・カントリー」(83年)コンビであるルパート・エヴェレットとコリン・ファースの共演に置きたいようで、第二作となる『セント・トリニアンズ女学院2』でもふたりの共演場面をたっぷり用意している。

 落ちぶれたファースがホームレスのような風貌になっているときの再会場面も目に焼きつくけれど、それよりもふたりが「ロミオとジュリエット」を演じる場面こそがクライマックスだ。このシリーズのエヴェレットは女役だから、物語上も何の問題もない。エヴェレット=ジュリエットとファース=ロミオが愛を語るのだ。キスをするのだ。愛し合いながら死ぬのだ。ロマンティック!…ではもちろんない。

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セント・トリニアンズ女学院

セント・トリニアンズ女学院 “St. Trinian's”

監督:オリヴァー・パーカー、バーナビー・トンプソン

出演:ルパート・エヴェレット、コリン・ファース、ラッセル・ブランド、
    タルラ・ライリー、ジェマ・アータートン、レナ・ヒーディ、
    ジョディ・ウィテカー、キャスリン・ドライスデイル、リリー・コール、
    ジュノー・テンプル、ミーシャ・バートン、ルーシー・パンチ、
    トビー・ジョーンズ、スティーヴン・フライ

評価:★




 「イカれた魔法学校みたいなのよ」。転校してきたばかりの少女が、その惨状に耐えかねて父親に電話をかける。そのときに言うセリフだ。何と言うか、大袈裟じゃなく、同じようなことを思う。ありとあらゆるタイプの女生徒が闇鍋のように放り込まれた無法地帯。少女がこの中で鍛えられていくという一応のストーリーは用意されているものの、それよりも何よりも思うのは、「ハリー・ポッター」のパロディにしか見えないということだ。

 前述のようなセリフが出てくるあたり、ひょっとして作り手も意識して作っているのだろうか。原作は英国のイラストレーター、ロナルド・サールの漫画とのことだけれど、描写の多くが、本当に「ハリー・ポッター」を連想させるものになっている。ある意味マジカルな生徒たち。それに負けない教師たち。ライヴァル校が存在するし、ホッケーはクィディッチみたい。学校が存続の危機に陥るというのも共通している。

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March 23 - 25 weekend, 2012

March 23 - 25 weekend, 2012

1 ハンガー・ゲーム|$36,871(4147)$152,535,747
2 The Raid: Redemption|$15,270(14)$213,785

3 Footnote|$6,765(23)$319,686
4 21 Jump Street|$6,559(3121)$70,222,515
5 Salmon Fishing in the Yemen|$5,666(124)$1,628,803
6 少年と自転車|$4,357(24)$169,719
7 October Baby|$4,352(390)$1,697,130
8 The Deep Blue Sea|$3,995(31)$123,841

9 Dr. Seuss' The Lorax|$3,585(3677)$177,412,055
10 Casa de mi Padre|$2,488(475)$4,030,195

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 ケイティ・ペリーさんは一日に6回は歯磨きをするのだそうです。子どもの頃13箇所も穴が開くほどの虫歯ができて以来、歯磨きに敏感になったとのこと。常に20ものブランド歯ブラシを携帯しているそうで、なるほどペリーさん、歯磨き女王にでもなるつもりのようです。ちなみにペリーさんは「口臭のある男はお断り」なんだとか。ということは、先日お別れしたラッセル・ブランドさんは口臭はないということですね。意外だ…。ちなみに…ワタクシは母と一緒に歯磨きをしなくなった小学一年生のときに虫歯が大量にできて以来、一度も歯医者にはお世話になっていません。ひゃっほう。

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おとなのけんか

おとなのけんか “Carnage”

監督:ロマン・ポランスキー

出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、
   ジョン・C・ライリー、クリストフ・ヴァルツ

評価:★★★




 コメディ仕立てで良かった。実力派だと誰もが認め、アカデミー賞授賞式の常連と言って良い4人が激突するのだ。重たい人間ドラマなんかだったら、観る前からゲンナリしてしまうことだろう。ロマン・ポランスキー監督も承知なのだろう、いきなり4人を同じ画面に放り込み、その可笑しさを追求することに専念する。

 『おとなのけんか』の発端は子どもたちの喧嘩だ。和解の場を持った二組の夫婦が、小さなボタンのかけ違いから思わぬ対立構造を深めていく。対立は家族間に留まらない。婚姻関係なんてものは、何の力にもならない。それぞれが己のエゴを剥き出しにしたとき、頼れるのは自分だけだ。価値観は十人十色。全く同じそれなど、存在しない。それを頭に入れた上でやり過ごせなければ、人生なんてやってられない。

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天才画家ダリ 愛と激情の青春

天才画家ダリ 愛と激情の青春 “Little Ashes”

監督:ポール・モリソン

出演:ハヴィエル・ベルトラン、ロバート・パティンソン、
   マシュー・マクナルティ、マリーナ・ガテル、ブルーノ・オロ、
   エスター・ヌビオラ、アーリー・ジョヴァー

評価:★★




 エンドクレジット直前の説明によると、サルヴァドール・ダリが死の直前に告白した内容に着想を得ているという。舞台は1922年のスペイン、マドリードから始まる。ここには後に芸術の分野で名を馳せる若き才能が集まる。画家のダリ、詩人・劇作家のフェデリコ・ガルシーア・ロルカ、映画監督のルイス・ブニュエルだ。まだ、成熟していない才能が衝突したとき、何が起こるのか。才能と言っても、人よりちょっと優れているというのではないのだ。ダリが、ロルカが、ブニュエルが、その出会いにより得たものを、創作活動にどう反映させていくのか。

 ところが、作り手はそのあたりにはちっとも興味がなかったらしい。彼らは最初から、それぞれに才能のある若者として登場し、互いのエゴを主張し、傷だらけの青春を送る。当然のことながら、恋もする。ただ、それが同性愛となると過剰に人の目を引くものらしい。作り手もそのあたりを大々的に取り上げる。と言うか、ほとんどそれしか取り上げない。それが問題だ。

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戦火の馬

戦火の馬 “War Horse”

監督:スティーヴン・スピルバーグ

出演:ジェレミー・アーヴァイン、エミリー・ワトソン、デヴィッド・シューリス、
   ピーター・ミュラン、ニエル・アレストリュプ、トム・ヒドルストン、
   パトリック・ケネディ、デヴィッド・クロス、ベネディクト・カンバーバッチ、
   セリーヌ・バッケンズ、トビー・ケベル、エディ・マーサン

評価:★★★




 映画に最も愛されている動物は馬だ。犬ではない。『戦火の馬』を観て確信した。馬が大地を駆けていく様、それを眺めるだけで胸を掴まれるのだ。熱くなるのだ。高揚するのだ。スティーヴン・スピルバーグも馬が駆ける姿に魅せられたようだ。何度もそれを捉えたショットを挿入、そのダイナミズムにより感情を激しく刺激していく。泣かせるポイントはここにある。戦場の悲惨さではないのが好もしい。

 実を言うと、やや腰が引けるところがあった。だってスピルバーグが生き物を中心に置いた物語を撮るのだ。しかもそこに無垢なる少年を絡ませる。加えて音楽はジョン・ウィリアムス、撮影はヤヌス・カミンスキー、美術はリック・カーターというのだもの。どんな映画になるかは自ずと予想がつく。あまりにも王道、あまりにも定番、あまりにもありふれているのではないか。案の定、涙と笑いが塗された物語に驚きはない。

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グッド・ドクター 禁断のカルテ

グッド・ドクター 禁断のカルテ “The Good Doctor”

監督:ランス・デイリー

出演:オーランド・ブルーム、ライリー・キーオ、J・K・シモンズ、
   タラジ・P・ヘンソン、マイケル・ペーニャ、ロブ・モロー、
   トロイ・ガリティ、モリー・プライス、ウェイド・ウィリアムス

評価:★




 困った。オーランド・ブルームのキャリアの底が見えてこない。「ロード・オブ・ザ・リング」(01年)で美しいエルフとして颯爽と登場したブルームにかけられた魔法は、「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」(02年)をピークに急速に解けていく。いや、解けるのは構わない。どんな魔法もいつかは解けるものだ。しかし、解けた後こそ「俳優」の力の見せ所、新しい表情を身につけていくものだろうに、ブルームはエルフの美貌に寄りかかることしかしなかった。ブルームがブルームのまま輝けたのは「エリザベスタウン」(05年)までだったと思う。そうして彼は特定のイメージに囚われていく。

 器の小さな男。これこそが今現在のブルームにこびりついたイメージだ。「シンパシー・オブ・デリシャス」(10年)のロックシンガーも「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」(11年)の小悪党もそうだった。そして『グッド・ドクター 禁断のカルテ』の技量の伴わない研修医は、その集大成的役柄と言って良い。

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ヒューゴの不思議な発明

ヒューゴの不思議な発明 “Hugo”

監督:マーティン・スコセッシ

出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、
   ベン・キングスレー、サシャ・バロン・コーエン、レイ・ウィンストン、
   エミリー・モーティマー、ヘレン・マックローリー、
   クリストファー・リー、マイケル・スタルバーグ、
   フランシス・デ・ラ・トゥーア、リチャード・グリフィス、ジュード・ロウ

評価:★★★★




 まず、何と言っても、1930年代フランス、パリの描写が素晴らしい。人と人が行き交う雑踏。光に満たされた夜。情緒溢れる佇まいの建築の数々。とりわけ物語の大半を占める、駅構内が魅力的だ。ダイナミズム溢れる美術を背景に、当時のエネルギーが濃厚に漂っている。郷愁を誘い、しかし当時にしてみたらモダンだったに違いない装置が、画面の奥行きを深くしていく。

 マーティン・スコセッシ監督はパリに映画の魔法を振り掛ける。決して華やかではないのに温か味ある衣装。物語を壊さないよう控え目に奏でられる音楽。スコセッシにしては賑やかな照明。スピード感たっぷりに突き進んでいく撮影。リズミカルに畳み掛けられる編集。視覚効果さえもマジカルに輝く。巨匠にしてみたら当然のようにも思えるものの、それらが素晴らしいバランスを保っているのはやはり神業的と言える。神業は空間の気持ち良さを創り上げる。縦の方向に開放感がある。天にまで届くのではないかと感じられるほどに、世界が広がりを見せていく。

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トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1

トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1 “The Twilight Saga: Breaking Dawn - Part 1”

監督:ビル・コンドン

出演:クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、
   テイラー・ロートナー、ビリー・バーク、ピーター・ファシネリ、
   エリザベス・リーサー、ケラン・ラッツ、ニッキー・リード、
   アシュリー・グリーン、ジャクソン・ラスボーン、マイケル・シーン、
   ジェイミー・キャンベル・ムーア、チャスク・スペンサー、
   ブーブー・スチュワート、ジュリア・ジョーンズ、
   マッケンジー・フォイ、アンナ・ケンドリック、サラ・クラーク

評価:★★




 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1は』いきなり、ヴェラとエドワードの結婚から始まる。人間とヴァンパイアが結婚できるのかという非常に現実的な問題を後回しにして突っ走るふたり。ヴェラは無神経にもジェイコブに結婚式の招待状を送る。それを受け取ったときのジェイコブの反応がイイ。あまりの怒りに家を飛び出していく。Tシャツを脱ぎ捨て鍛え上げられた肉体をアピール、オオカミと化して全速力で駆け抜けていくのだ。てっきりエドワードを殴りにでもいくのかと思ったら、その後しばらく彼は出てこない。どうやら怒りを発散するために飛び出していったようだ。うんうん、ストレスもアレも溜めてはいけない。

 これまでにも数々の笑いを提供してくれた「トワイライト」シリーズだけれど、シリーズも山場に差し掛かり、いよいよそれに磨きをかけている。日本のティーン小説ではありえないような展開が次から次へと訪れ、その度に大笑いを誘ってくれる。欧米の少女たちはこういうのにときめいちゃうわけだ。冷静に考えると、ヴェラはとても嫌な女だし、エドワードは頼りないし、ジェイコブはあんぽんたんなだけだというのに。あぁ、十代のエネルギーって侮れない。

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March 16 - 18 weekend, 2012

March 16 - 18 weekend, 2012

1 少年と自転車|$15,311(3)$45,933
2 21 Jump Street|$11,632(3121)$36,302,612

3 Footnote|$11,181(6)$138,824
4 Salmon Fishing in the Yemen|$7,428(62)$768,936
5 Dr. Seuss' The Lorax|$6,040(3769)$158,387,775
6 Casa de mi Padre|$5,988(382)$2,287,239
7 ジョン・カーター|$3,620(3749)$53,227,248
8 Jeff, Who Lives at Home|$3,369(254)$855,709
9 Friends with Kids|$2,273(640)$4,184,735
10 A Thousand Words|$1,917(1895)$11,985,753

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 ジョージ・クルーニーさんが逮捕されました。スーダンへの緊急の人道支援を求めて大使館前でデモ活動を行っていたクルーニーさんですが、立ち入り禁止区域からの立ち退きを警告されても従わなかったため、父のニックさんと共に逮捕されたとのこと。もちろん逮捕は狙い通りでしょう。どこまでもスマートな兄貴でございます。保釈金が100ドルというのより可笑しいのは、パパクルーニーが息子とそっくり過ぎることでしょうか。いや、息子の方が父に似ていると言うべきでしょうか。どっちでも良いでしょうか。どっちでも良くないのはスーダンの現実。ワタクシ、クルーニーさんをきっかけにスーダンについて色々調べましたわさ。

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ヤング≒アダルト

ヤング≒アダルト “Young Adult”

監督:ジェイソン・ライトマン

出演:シャーリズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、
   エリザベス・リーサー、J・K・シモンズ、コレット・ウォルフ、
   ジル・アイケンベリー、リチャード・ベキンス、メアリー・ベス・ハート

評価:★★★★




 大抵の映画の主人公は「成長」というものを見せる。苦難に直面し、挫折を味わい、自暴自棄になり、しかしそこから這い上がり、気がつけばほら、私は生まれ変わっているじゃないの。観ている方は、それを「良い話」だと感心する。ともすれば「私もやってやる」「俺も頑張ろう」なんて気合いを入れたりもする。『ヤング≒アダルト』はそんなのが幻想であると言い放つ。そうなのだ。この映画のヒロインであるメイビスは、一切成長しない!

 もう若いとは言えなくなってきたヒロインはティーン小説のゴーストライター。離婚歴あり。彼女は自分が完璧と信じているフシがある。直すところなんてどこにもないと思っている。いや、現実を直視しない技に長けていると言うべきか。どん詰まりのような人生でも、別に自分を呪うこともない。それどころか「ビッチ」を極める。身勝手な行動で周りを振り回し、自分の欲望の趣くままに突き進む。大人になれない大人。ジェイソン・ライトマンはビッチをビッチのままに描き出す。なのになぜだろう。彼女が愛しい。ビッチなままに愛しい。そしてもちろん、無茶苦茶可笑しい。

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パーフェクト・センス

パーフェクト・センス “Perfect Sense”

監督:デヴィッド・マッケンジー

出演:ユアン・マクレガー、エヴァ・グリーン、ユエン・ブレンナー、
    スティーヴン・ディレーン、デニス・ローソン、コニー・ニールセン

評価:★★★




 愚かなことに人という生き物は、平凡な毎日こそ幸せであること、何物にも変え難いものであることを、すぐに忘れてしまう。危機的状況に陥ったときにそれを思い出し、しかしいつしかまた忘れていく。『パーフェクト・センス』に出てくる人々も、きっとそれを噛み締めたに違いない。彼らは謎の感染症により、五感を順番に奪われていくのだ。フェルナンド・メイレレス監督の「ブラインドネス」(08年)の人々は視覚を奪われていたけれど、それよりも過酷な状況だ。終末的世界が果てしなく広がっていく。

 こういう設定にすると、大抵はスリラーになるだろう。一つまた一つと感覚を奪われていくことで、世界はパニック状態になる。その狂乱を描き出すのが普通だ。実際、ここでもそういう描写が出てくる。ところが、画面は静寂の印象の方が圧倒的に強い。デヴィッド・マッケンジー監督は、あくまで男と女のラヴストーリーとして見つめる勇気を見せる。変に恐怖を煽るのではなく、それゆえに生じる心の揺れを掬い取る。スコットランド、グラスゴーで生きるユアン・マクレガーとエヴァ・グリーンが心を通わせる過程こそ、マッケンジーが描きたかったものだ。

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顔のないスパイ

顔のないスパイ “The Double”

監督:マイケル・ブラント

出演:リチャード・ギア、トファー・グレイス、スティーヴン・モイヤー、
   オデット・ユーストマン、スタナ・カティック、クリス・マークェット、
   テイマー・ハッサン、マーティン・シーン

評価:★★★




 冷戦が終わり、一旦消えかかったに見えたスパイ映画だけれど、どっこいしぶとく生き残っている。「ジェイソン・ボーン」シリーズ(02年~)の成功が大きいような気がする。ミッションを変えて、アプローチを変えて、スターを変えて、次から次へ。『顔のないスパイ』もその流れにしっかり乗っている。

 意表を突くのが、CIAが追っている超一流スパイ、カシウスが早々に正体を現すところだ。ソビエト連邦の伝説の殺し屋だというのに、あっさり姿・形を露にする。それも主人公として、だ。そう、リチャード・ギアが追う側にして、追われる側となる。

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ギャラリー

ギャラリー “Boogie Woogie”

監督:ダンカン・ウォード

出演:ジリアン・アンダーソン、アラン・カミング、ヘザー・グラハム、
   ダニー・ヒューストン、ジャック・ヒューストン、クリストファー・リー、
   ジョアンナ・ラムレイ、サイモン・マクバーニー、アマンダ・セイフライド、
   シャーロット・ランプリング、ステラン・スカルスガルド

評価:★★




 ロンドンの芸術界周辺に生きる人々を取り上げている。群像劇というスタイルが採られているので、どうしてもロバート・アルトマン監督の「プレタポルテ」(94年)を連想してしまうのだけど、着眼点は大分異なると考えて良い。「プレタポルテ」はファッション、『ギャラリー』は絵画やビデオアート…という違いはもちろんある。しかし、最も大きな違いは芸術への視線だろう。ある人気アーティストが陶酔に耽りながら、こんなことを言う。「何が見えて、何が見えないか。境界を曖昧にしたいんだ」。何が何だかさっぱり意味が分からぬ。そういうことだ。

 原題にもなっているピエト・モンドリアンの絵画がモチーフとして出てくるものの、芸術そのものに対する考察には目もくれない。代わりに滑り込まされるのは、俗っぽい人間の欲望だ。登場人物の大半は芸術なんて、語らない。理解もしていないだろう。その分、欲望を剥き出しにする。金。セックス。ドラッグ。仕事。権力。野心。美術商、芸術家、コレクター、遊びでアートに足を突っ込んでいる人々等…彼らの自分本位な姿に、人間の本性を見る。そしてそれを、笑い飛ばしている。

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アンダーワールド 覚醒

アンダーワールド 覚醒 “Underworld: Awakening”

監督:モンス・モーリンド

出演:ケイト・ベッキンセール、スティーヴン・レイ、マイケル・イーリー、
   テオ・ジェームス、インディア・アイズリー、チャールズ・ダンス、
   クリステン・ホールデン=リード、ジェイコブ・ブレア、ウェス・ベントレー

評価:★★




 ヴァンパイアとライカンの抗争を描くホラーシリーズの四作目『アンダーワールド 覚醒』で、つくづく思ったのだ。アクションというものは、それが似合う人とそうでない人がいる。そしてこのシリーズのヒロイン、セイリーン役を務めるケイト・ベッキンセールは、明らかに後者だ。美醜はどうかと聞かれたならば間違いなく綺麗なのだけど、アクション映えしない容姿だ。

 ラインがくっきり見えるタイトなレザースーツを着用しているのであからさまに分かる。ベッキンセールは身体に迫力がない。身体の内側から盛り上がってくるパワーがない。センが細過ぎて、いくらポーズをキメてもカッコ良く映らない。女の子が気まぐれに遊んでいるようにしか見えない。歳を重ねてヴィクトリア・ベッカム化してきたのも気掛かりだ。「バイオハザード」(02年~)シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチと比べると、その差は顕著だ。ジョヴォヴィッチは漫画的な造形もあり、アクションにぴたりハマる。ベッキンセール、ジョヴォヴィッチに完敗だ。対決してないけど。

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アナザー プラネット

アナザー プラネット “Another Earth”

監督:マイク・ケイヒル

出演:ブリット・マーリング、ウィリアム・メイポーザー、
   ロビン・ロイド・テイラー、マシュー=リー・アルルバフ

評価:★★★




 交通事故の加害者と被害者を描くというと、最近だとテリー・ジョージ監督の「帰らない日々」(07年)というのがあった。これはそれぞれの心理状態を重苦しく描き出した作品だったけれど、似たシチュエーションに置かれる『アナザー プラネット』はしかし、それとは大分趣が違う。突如空に「もうひとつの地球」が現れ、そこから発せられる見えない力に踊らされるようにスピリチュアルな匂いを濃くしていくのだ。SF要素も盛り込まれていく。

 実のところ、加害者も被害者も、描かれる心象に新味はない。わき見運転で母と子を殺してしまった女は、自分が犯した罪の重さに苦しむ。妻子を亡くしてしまった男は、絶望的な喪失感から立ち直れない。加害者がさっさと罪から逃れてしまってはバカバカしいし、被害者があっさり妻子を忘れてしまっては軽過ぎる。被害者と加害者が辿る当然の心の道筋を追っているに過ぎない。

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March 9 - 11 weekend, 2012

March 9 - 11 weekend, 2012

1 Footnote|$23,764(2)$47,528
2 Salmon Fishing in the Yemen|$12,550(18)$225,894

3 Dr. Seuss' The Lorax|$10,370(3746)$121,724,850
4 ジョン・カーター|$8,050(3749)$30,180,188
5 Friends with Kids|$5,467(369)$2,017,466

6 Being Flynn|$3,714(12)$102,986
7 Project X|$3,647(3055)$39,717,098
8 A Thousand Words|$3,268(1890)$6,176,280
9 Silent House|$3,136(2124)$6,661,234

10 英雄の証明|$2,622(19)$474,790

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 アーノルド・シュワルツェネッガーさんの隠し子ではない息子であるパトリック・シュワルツェネッガーさんが、スキーで事故に遭いました。背中と尻を何針も縫う怪我を負ったそうで、ワーオ、お大事になさって下さい。ところでパトリックさんは結構なハンサムなのです。モデルをやっちゃうくらいなのです。ぜひともあんまり筋肉バカ系方面には走らないで欲しいところです。はっ、でもまさか、もう少し歳を重ねると父ちゃんみたいな顔になっちゃうのでしょうか。母ちゃんの遺伝子、頑張って!いや、母ちゃんもごつい顔してますけどね。

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パッション・プレイ

パッション・プレイ “Passion Play”

監督:ミッチ・グレイザー

出演:ミッキー・ローク、ミーガン・フォックス、ビル・マーレイ、
   リス・エヴァンス、ケリー・リンチ、クリス・ブラウニング、
   マーク・シヴァートセン、ロリー・コクレイン

評価:★




 一見ダーレン・アロノフスキー監督の「レスラー」(08年)の姉妹編のように思える。ミッキー・ロークが人生の敗北者的男を演じているからだ。ロークの直しの入り過ぎたぼこぼこ顔は、確かに今、こういう役柄に似合うのかもしれない。しかし、結局のところ、「レスラー」と『パッション・プレイ』は全くの別物だ。演じる役柄に通じるものがあっても、その魅せ方にあまりに落差がある。

 「レスラー」が男の覚悟を魅力的に描いていたのに対し、『パッション・プレイ』はひたすら自己陶酔の世界に入っている。散りばめられたアイテムはロマンティックなものばかりだ。トランペット奏者。妖しいサーカス。翼の生えた美女。非情なギャング。オペラハウス。手を差し伸べる熟女。ロマンティックでも、安っぽいのが特徴だ。安っぽいままに陶酔の世界を飾り立てる。

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人生はビギナーズ

人生はビギナーズ “Beginners”

監督:マイク・ミルズ

出演:ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン、
    ゴラン・ヴィシュニック、メアリー・ペイジ・ケラー、
    キーガン・ブース、カイ・レノックス、チャイナ・シェイバーズ

評価:★★★




 いきなり主人公の父親の死が報告される。ひょっとして安っぽいお涙頂戴に走るのではないかと危惧するのだけれど、有難いことに綺麗に裏切られる。『人生はビギナーズ』は全編にもの寂しさが漂っている。しかし同時に、軽妙で、カラフルな味もたっぷり振りかけられている。

 画面を沈ませない原動力になっているのが、父親を演じるクリストファー・プラマーであることは間違いない。プラマーは妻を亡くして4年、75歳にしてカミングアウトするゲイだ。彼は自分を偽ることをやめる。人生を目一杯楽しむことを選ぶ。その後、ガンで余命僅かであることを宣告されても、死に向かいながら生を実感することを恐れない。プラマーが、この自分本位に見えなくもない役柄に、温かな息を吹き込む。

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メランコリア

メランコリア “Melancholia”

監督:ラース・フォン・トリアー

出演:キルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、
    アレクサンダー・スカルスガルド、ブラディ・コーベット、
    キャメロン・スパー、シャーロット・ランプリング、
    イェスパー・クリステンセン、ジョン・ハート、ウド・キアー、
    ステラン・スカルスガルド、キーファー・サザーランド

評価:★★★




 今思い返すと、「アンチクライスト」(09年)を撮ったとき、ラース・フォン・トリアー監督は、一種のうつ病状態にあったのかもしれない。サディスティックに身体を痛めつける描写を畳み掛け、自らを傷つけていたように思える。『メランコリア』を観る限り、どうやらそのどん底状態からは脱出したようだ。

 そういう意味で、『メランコリア』は「アンチクライスト」の続編と言って良いのかもしれない。うつ病と名づけられた惑星メランコリアが地球にぶつかろうとしている瞬間が背景にある。とある姉妹の時間を切り取ったSFドラマとして見ることももちろん可能だ。しかし、それだけに終わらせるには随分パーソナルな部分に踏み込んでいる。妹のキルスティン・ダンストは完全にうつ状態にある。トリアーとしてはこの映画を作ることが、自己セラピーの完結になったのではないか。

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The 18th Planet Movie Awards/第18回プラネット映画賞 最終投票データ完全公開

The 18th Planet Movie Awards/第18回プラネット映画賞の
最終投票データを完全公開しました。

各部門の1位~5位は以下の通りです。

詳細はOSCAR PLANETをご覧下さい。


◆作品賞
 1. 50/50 フィフティ・フィフティ(ジョナサン・レヴィン監督)
 2. ゴーストライター(ロマン・ポランスキー監督)
 3. マネーボール(ベネット・ミラー監督)
 4. ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(デヴィッド・イェーツ監督)
 5. ミッション:8ミニッツ(ダンカン・ジョーンズ監督)

◆監督賞
 1. ブラッド・バード(ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル)
 2. テレンス・マリック(ツリー・オブ・ライフ)
 3. ロマン・ポランスキー(ゴーストライター)
 4. ベネット・ミラー(マネーボール)
 5. ダンカン・ジョーンズ(ミッション:8ミニッツ)

◆主演男優賞
 1. ジョセフ・ゴードン=レヴィット(50/50 フィフティ・フィフティ)
 2. ブラッド・ピット(マネーボール)
 3. トム・クルーズ(ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル)
 4. ユアン・マクレガー(ゴーストライター)
 5. ジェームズ・フランコ(猿の惑星:創世記(ジェネシス))

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TIME タイム

TIME タイム “In Time”

監督:アンドリュー・ニコル

出演:ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド、
   アレックス・ペティファー、キリアン・マーフィ、
   ヴィンセント・カーシーザー、マット・ボマー、オリヴィア・ワイルド、
   ジョニー・ガレッキ、コリンズ・ペニー、ベラ・ヒースコート

評価:★★




 大胆不敵なアイデアが投入される。人間の外見が25歳で止まってしまう近未来が舞台。そこでは「時間」が「貨幣」の代わりとなる。25年以上を生きるには働くことで時間を手に入れなければならない。これだけの大風呂敷だ。その細部を緻密に描き出す更なるアイデアが必要になる。

 どうやらアンドリュー・ニコル監督は、この舞台を描き出すことで精一杯だったようだ。裕福層と貧困層が住む地区を分けて究極の格差社会を浮かび上がらせる。そこまでは何とかできたものの、『TIME タイム』はSFとしてもスリラーとしても物語がまるで弾まない。貧困地区に住む主人公が裕福地区に乗り込むものの、何しに行ったのかがさっぱり理解できないところが作品を象徴している。行き先が見えない。気がつけば追われる身となっていた主人公はしかし、逃げる以外にすることがなく、したがってタイムリミットのある追いかけっこをしているだけに過ぎなくなる。

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スリーピング ビューティー/禁断の悦び

スリーピング ビューティー/禁断の悦び “Sleeping Beauty”

監督:ジュリア・リー

出演:エミリー・ブラウニング、レイチェル・ブレイク、ユエン・レスリー、
   ピーター・キャロル、クリス・ヘイウッド、ヒュー・キース・バーン

評価:★★




 今ではトンと聞かなくなった苦学生が主人公だ。ありとあらゆる仕事を手掛けているものの、金は全然貯まらない。そんなある日彼女は、自給250ドルという高額アルバイトを見つける。それは高級シルヴァーサーヴィスで、ただ裸のまま睡眠薬を飲んで眠るというもの。なんだかやけに昭和の匂いのする展開だけれど、それもそのはず、『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』は川端康成の「眠れる美女」をベースにしているのだった。

 製作にジェーン・カンピオンが関わっていることからも察せられるけれど、目指したのは官能というやつだろう。大人への変身を間もなく完成させようときの若い女の身体から発せられる官能を切り取る。原作は老人目線の話だったけれど、ここでは女目線の話。その無邪気さにも似た好奇心を味つけに、無防備な肉体の放つエロスを炙り出す。

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March 2 - 4 weekend, 2012

March 2 - 4 weekend, 2012

1 Dr. Seuss' The Lorax|$18,830(3729)$70,217,070
2 Being Flynn|$11,400(4)$45,600
3 Project X|$6,891(3055)$21,051,363

4 Act of Valor|$4,446(3053)$45,111,924
5 別離|$3,918(243)$3,677,464
6 Tim & Eric's Billion Dollar Movie|$3,645(24)$87,475
7 少年は残酷な弓を射る|$3,315(40)$818,315
8 Tyler Perry's Good Deeds|$3,305(2132)$25,791,693
9 ソハの地下水道|$3,238(33)$421,056
10 ヒューゴの不思議な発明|$3,038(406)$71,300,195

【タイトル|一館あたりの興収(公開館数)累計興収】赤字:初登場作品 青字:上昇作品

 レディー・ガガさんが父親が経営するニューヨークのイタリアン・レストランに出没、お客と交流を楽しんだようです。2月にオープンしたばかりのレストランに姿を見せたガガさんは、ボディガードふたりと共に登場、ディナーを楽しんだとのこと。さらには仕事の手伝いもしていたようで、ひょっとしてウエイトレスもやっちゃったんでしょうか。テーブルに料理を運んでくるのがガガさんだった場合、それはそれは相当にシュールな絵でありましょう。その際はぜひとも、イタリア料理風のファッション(どんな?スパゲッティを身体に巻きつけるとか?)でお願いします。

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ドラゴン・タトゥーの女

ドラゴン・タトゥーの女 “The Girl with the Dragon Tattoo”

監督:デヴィッド・フィンチャー

出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、
   スティーヴン・バーコフ、ステラン・スカルスガルド、
   ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、ベンクトゥ・カールソン、
   ロビン・ライト、ゴラン・ヴィシュニック、ジェラルディン・ジェームズ、
   ジョエリー・リチャードソン、エンベス・デヴィッツ

評価:★★★




 オリジナルであるスウェーデン映画(09年)が封切られてから、まだ2年しか経っていない。それなのにもう、ハリウッドリメイクが登場する。オリジナルの記憶がまだ鮮明に残っているというのに、いくらなんでも早過ぎるだろう。成功するとは思えない。ハリウッドのネタ切れは、本当に深刻だ。…と嘆いていたら、あらしかし、『ドラゴン・タトゥーの女』はさすがはデヴィッド・フィンチャーと言うべきか、相当良くできたスリラーだ。そう言えば、オリジナルは良くも悪くも主演のノオミ・ラパス頼みの映画だった。ハリウッド版は映画の骨格自体が頑丈になっている。

 物語自体は何ら変わりがない。間違い探しができるほどに似通っている。これはもう、原作本に忠実に作ってあるということなのだろう。では、わざわざ再構築する理由はどこに見つけるべきなのか。もちろん配役ということになる。ミカエル・ニクヴィストが演じたジャーナリスト、ミカエルをダニエル・クレイグが演じる。グッとシャープさが増した印象だ。だが、急所となるのはリスベット役の方だ。ラパスに代わる新ヒロインを演じるのは、ルーニー・マーラだ。

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小悪魔はなぜモテる?!

小悪魔はなぜモテる?! “Easy A”

監督:ウィル・グラック

出演:エマ・ストーン、ベン・バッジリー、アマンダ・バインズ、
   トーマス・ヘイデン・チャーチ、パトリシア・クラークソン、
   スタンリー・トゥッチ、キャム・ギガンデット、リサ・クドロー、
   マルコム・マクドウェル、アリー・ミシェルカ

評価:★★★★




 ナサニエル・ホーソーンの代表作「緋文字」を取り上げた授業場面が出てくる。愚かしい邦題からは想像もつかないものの、『小悪魔はなぜモテる?!』は「緋文字」をモチーフに作られた映画だ。それも純文学ではなく学園コメディになっている。「緋文字」のヘスター・プリンのように深刻な顔を通すヒロインはいない。オリーヴ・ペンダーガストという名のその少女は、苦々しい状況下を逞しく切り抜けていく。少女の武器はズバリ、ユーモアだ。

 自分を「健全な精神と平均以下のバストの持ち主」だと形容するオリーヴは、友人についた嘘を発端に異性経験豊富なイメージがついてしまう。普通ならばそれに落ち込むことだろう。ところが彼女は、これを逆手にとってイメージチェンジを図る。洋服はこれまでよりも大胆に、メイクはセクシーに、立ち振る舞いは自信満々に…何度転んでもただでは起きないヴァイタリティ。自分を客観的に見る能力により、彼女は苦難を笑い飛ばしていく。「緋文字」の授業中に淫乱扱いされたときは、「あんたなんか、性器みたいな顔してるくせに!」と切り返す度胸も持っている。観客は彼女に恋をする。

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ベイビー in the CITY

ベイビー in the CITY “Baby on Board”

監督:ブライアン・ハーズリンガー

出演:ヘザー・グラハム、ジェリー・オコネル、ジョン・コーベット、
   ケイティ・フィナーラン、アンソニー・スターク、ララ・フリン・ボイル

評価:★




 可愛い可愛いと思っていたヘザー・グラハムも、気がつけば40代を迎えている。時が流れるのは早い。ただしグラハムの場合、そこいらの40代と較べたら断然若々しい。額のシワに若干の年齢を感じるけれど、ほとんど奇跡に近いキープ力。ベビーフェイスがくるくる表情を変えて、今でもまだ十分に魅力的だ。しかし、若く見えるからと言って、馬鹿が許される年齢に見えるからと言って、こんなに安っぽい笑いに包まれてい良いものだろうか。

 グラハムはかなり思い切っている。妊娠中だからだろうか、やたら屁をこき、ところ構わず吐きまくり、夢で起こった出来事に対して執拗に怒り、「あなたのあそこは男が喜ぶ名器よ」なんてセリフを躊躇いなく口にする。これがどうやら「面白い」らしい。現実にもこういう女はいるのかもしれないけれど、何も笑いとして差し出さなくても良いではないか。しかもどうやらこの手の笑いこそが、呼び物のようなのだ。

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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い “Extremely Loud & Incredibly Close”

監督:スティーヴン・ダルドリー

出演:トーマス・ホーン、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、
   マックス・フォン・シドー、ヴィオラ・デイヴィス、ジョン・グッドマン、
   ジェフリー・ライト、ジェームズ・ガンドルフィーニ

評価:★★★




 とても刺々しく感じられる。ひりひりと痛い肌触りがずっと続く。人々の思いが溶け合わないのが心苦しい。無理もない。2001年9月11日に起こったあの出来事は、そう簡単に消化できるものではない。『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』はそれをありのままに描写する。心地良い空間は決して広がらない。スティーヴン・ダルドリー監督は想像以上に厳しく、真摯に、この題材へ向き合っている。ただ、これがずっと続くのは辛いかもしれない。

 そう思っていたところに新たなる展開が訪れる。沈黙の老人が姿を見せるあたりから、作品が別の表情を見せ始める。無関心や拒絶の毎日が、熱を帯び始める。荒れ果てた画面に色が付き始める。少年の目に、光が灯り始める。もちろん無意識の流れに身を任せている。

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マージン・コール

マージン・コール “Margin Call”

監督:J・C・チャンダー

出演:ザッカリー・クイント、ケヴィン・スペイシー、ポール・ベタニー、
   ジェレミー・アイアンズ、ペン・バッジリー、サイモン・ベイカー、
   デミ・ムーア、スタンリー・トゥッチ、メアリー・マクドネル

評価:★★★★




 2008年秋に起こった金融危機は未だ記憶から薄れていない。『マージン・コール』はその前夜の物語だ。ある投資会社が倒産を招きかねない危機を察知。上層部がそれを切り抜けようとそれぞれの考えを巡らせる。何と言うか、近づきたくはない題材だ。マネーゲームなんてものとは縁遠い生活を送っている者にとっては、パソコンのディスプレイと睨めっこしながら計算を繰り返す作業など、頭が痛くなるだけだ。ところが、それでもこの映画は面白い。

 第一の手柄は、金融危機で何が起こったのかを極めて分かりやすく説明するところだ。金融用語が次々飛び交い、しかし、その全てを理解はできない。それでも話は分かる。状況は頭に入る。構造が絵となって見えてくる。ハイスピードで交換されるセリフの隅々に種を撒き、そこから芽が出て、蔓が伸び、葉が茂り、いつしか金融業界の地図が出来上がっていく脚本の妙。社の重役たちは揃いも揃って「完結に」「内容をまとめて」と指示を出すのが可笑しい。過程ではなく結果。そして演出でも、咀嚼された結果を提示しているので、混乱が避けられる。遠回しにすることのない明け透けなセリフが画面の速度をぐいぐい上げる。

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アニマル・キングダム

アニマル・キングダム “Animal Kingdom”

監督:デヴィッド・ミショッド

出演:ジェームズ・フレッシュヴィル、ベン・メンデルソーン、
   ジョエル・エドガートン、ガイ・ピアース、ルーク・フォード、
   ジャッキー・ウィーヴァー、サリヴァン・ステイプルトン

評価:★★★★




 その王国は決して大きくはない。しかし、それを形成する危険分子には注意が必要だ。外観は鋭利だ。邪悪な空気が白い顔のまま濃厚に立ち込めている。デヴィッド・ミショッド監督は、その細部を念入りに観察する。するとどうだ。物語が異様な緊張に支配されていくではないか。

 『アニマル・キングダム』の舞台となるのはメルボルンの犯罪ファミリーだ。老いた母と三人の兄弟。そこに家族ぐるみの付き合いをしている仲間の一人が入り浸っている。母親をヘロイン中毒で亡くしたばかりの少年は、そこに放り込まれる。一見愛し合っている普通の家族。しかしその実態はと言うと、強盗や麻薬の密売等の凶悪犯罪により生計を立てている。日常の異常が、シラッと当たり前のこととして描き出されていくのが面白い。

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